忍び寄る悪意
ギリギリ投稿
~万屋 狐月堂~
「暇だねえ」
店内で春花はお茶を飲みながらそう呟く。
すると…
「すみませーん」
扉が開く音と共に、客が入ってくる。
入ってきたのは十代後半位の見慣れない青年だった。
「?あ、いらっしゃいませー。どういったご依頼ですか?」
見慣れない姿に多少の疑問を覚えながらも、春花はいつも通りの対応をする。
「実は……江戸に行ってもらいたいんです」
しかし、青年の依頼は少し特殊だった。
「えっと、詳しく説明していただいてもよろしいでしょうか?」
「江戸に知り合いが居るんですが、そいつが最近悩み事があるみたいで、春花さんにはその知り合いの相談役になってもらいたいんです」
「相談役、ですか?」
「はい。場所は、江戸にある白玉楼と言う場所です。あと、自分に頼まれたという事は何があっても言わないでください」
「うーん……」
青年からの特殊すぎる依頼に、すぐには答えを返せない春花。
「料金は、前払いでこのくらい」
青年が机に置いたのは、ここから江戸までの旅の費用としても、かなり破格の金額だった。
「依頼を達成したら、さらにこれの二倍の金額を報酬としてだします」
さらに青年の交渉は続く。
「……そんなにお金を払ってまでそのご友人を助けたいということですか?」
「そうです」
春花の質問に迷いなく答える青年。
「………わかりました。その依頼、この鈴風春花が責任もってお受けしましょう」
その姿に、春花も依頼を受けることを決める。
「お願いします。ちなみに、出発は何時でしょうか?」
青年の質問に、春花は机の下から道具を出しながら答える。
「神社に連絡したらすぐ出ます」
「ずいぶん早いですね」
「依頼の迅速な解決が狐月堂の目標ですから」
「そうですか、なら、お願いします」
「それでは」
必要な物を袋に詰めた春花は、最後に袋を空間に放り込んだ後、神社に飛ぶ。
「……よし、行ったか」
春花が居なくなると、青年が周りを見回す。
「さて、アレは……、あそこか」
青年が目を付けたのは最奥の棚。
青年が迷わず扉を開けると、そこには一枚のカードがある。
「予想通り、封印も弱まってきてるな。あとはこれを……、ぐはっ!?」
その札を手に取った瞬間、青年が頭を抱え苦しみだす。
「う…あ……こ、こいつ、俺の精神に干渉してきやがった……」
青年は数分の間もがき苦しんでいたが、その動きが急に止まる。
「…は、はは」
そして、急に青年が笑い出す。
「はハハはハ覇派破葉!!」
狂気に呑み込まれたかの様に、いや、実際に狂気に呑み込まれた青年は、ゆっくりと立ち上がった。
「素晴らしい!素晴らしいぞ!ようやく牢獄から抜け出したと思えば、こんなに素晴らしい体が手にはいるとは!」
その姿には、先程までの青年の姿はすでに無く、数百年前に消えたはずの人物がそこにいた。
「………待ってろよ……鈴風春花……俺が、必ず……お前を殺す」
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