代役
ギリギリできた……。
「春花~」
「水花、どうしたの?」
「外に出たい!」
「は?」
「最近、春花ばかり旅に出て、あたし達はいつも留守番じゃないか?だから、あたし達も外に出たいんだよ」
「澪も?」
「私も村の外には興味があります。是非記録しておきたいです」
「空…。そうだね~。でも、そもそもみんな妖力を隠せるの?」
「そこら辺は大丈夫だよ。この前春花が作ってた札を参考に、周りに妖力を感知させなくする札を作ったから」
「さすが水花!」
「春花さん、これで大丈夫ですね」
「でも、誰かが村に残らなくちゃいざという時に困るよね」
「そこら辺はあたしに任せときな!ちょうど良いのがいるから」
そう言うと、澪は神社を出てどこかへと向かう。
移動中…
「邪魔するよ」
澪が向かったのは毎晩通っている酒屋。
「お、澪さんじゃないですか。今日は速いですね」
「バカ、流石にこんな早くからは飲まないよ。あたしにだってそのくらいの常識はある。まあ、とは言っても、そこの二人には無いみたいだけど」
「ハハハ、確かに」
すっかり顔なじみになった店主と話しながら、澪は目当ての妖怪を見つける。
「あんたら……こんな朝っぱらから飲んでんじゃないよ」
「私が悪いんじゃない!この酒屋においてある酒がうますぎるのが悪いんだ!そうだろ?勇儀」
「そうだよ、大将。萃香の言うとおりだ」
澪が話しかけたのは二人の鬼。
萃香と呼ばれた方は幼い体つきで、頭の左右には角がある。
もう一人の勇儀と呼ばれた方はそれなりに背は高く、体つきも大人らしい。
そして額には一本の角がある。
「そうは言ってもねぇ。……おい、萃香?あんたが今飲んでる酒。それってあたしのじゃないかい?」
「あ、え、えっと、これは………。そう!勇儀、勇儀が持ってきたんだよ!」
「萃香!あたしの所為にしようとするんじゃないよ!あんたが店主に無理言って飲み始めたんだろうが!」
目の前で責任のなすり付け合いが始まる。
「店主、本当は?」
「二人でもらいにきましたよ。たしか、「大将に頼まれたんだ!」とか言ってましたね」
「ほう……。あんたら、いい度胸してるじゃないか……」
「……勇儀」
「どうした?萃香」
「頼んだ!」
そう言い残し、霧状になる萃香。
「あ!」
「逃がさないよ!」
しかし、霧状になった萃香をそのまま双龍で殴り飛ばす澪。
「グハッ!!」
そして、霧状が解かれ吹き飛ぶ萃香。
「そ~っと、そ~っと」
「…勇儀~。あんた、まさか逃げられるなんて思ってないだろうね………」
「そ、そんなはずは無いじゃないか。だから大将、殴るのは勘弁」
「まあ、逃げても逃げなくても一発殴るけどね」
「そ、そんな~」
ガツン!
「痛っ~」
「次はこれじゃすまないよ」
「分かったよ。分かったからこれ以上殴るのは無しで」
「わかったならいいさ。ところで、あんたら二人に頼みがあるんだ。ちょっと神社まで来てくれないか?」
「大将が頼みごとなんて珍しいね」
「ほら、萃香を担いでさっさと行くよ」
「了解」
移動中
「こいつらが、あたしの古くからの友人の、」
「星熊勇儀だよ。よろしく」
「伊吹萃香だよ」
「へえ、澪の友人。私は鈴風春花だよ。こちらこそよろしく」
「あんたが噂の神様かい」
「何の噂か知らないけど、多分そうだよ」
「いつか手合わせしてみたいものだね」
「萃香、やめときな。あんたじゃ絶対に適わないよ」
「そんなに強いのかい?」
「ああ、恐らくあたし達三人で挑んでも勝てないだろうね」
「大将より強いのか……」
「で、あたし達が旅に出てる間、留守をこの二人に任せれば大丈夫だろう」
「澪がそう言うのなら、信用できるね」
「というわけで、あたし達はもうすぐ旅に出る。その間、村を頼めるかい?」
「任せときな!」
「村のことはあたし達二人に任せて、大将は思いっきり楽しんでくればいいよ。あ、お土産は酒で」
「じゃあ、頼んだよ」
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