けーね
執筆完了
「まだ目を覚まさないね」
あれから数日がたったが、あのときの妖怪はいまだに目を覚まさない。
「あれ?」
そういえば、あの夜はあった角がなくなっている。
あのときは確かにあったのに………。
「……うぅ……」
「っ!大丈夫?」
「ここは………」
「目が覚めたんだね。気分はどう?」
「頭が少しぼうっとする」
「ちょっと待ってて、今空を呼んでくるから」
「あ、ちょっと、」
「空~!あの子、目が覚めたよ~!」
「そららら!?今すぐ行きます!」
よし、これで「来ましたよ!」早っ!?
「空、また最高速度上がった?」
「はい!」
………もう空に速さで勝てる奴は存在しないんじゃないかな?
「ところで、あなた、目が覚めたようですが、大丈夫ですか?」
空を見た途端、彼女の顔が引きつる。
「ひっ!?よ、妖怪!?」
「安心してください。別に私はあなたを食べるつもりはありません」
「へ?」
「そもそも私は人間を食べませんよ?」
「………いや、すまない。ついとり乱してしまった」
私ももう(・・)人間じゃないのにな、と少女は寂しそうに笑った。
「……もう?」
私がそう聞き返すと、安心したからか、少女はこれまでの経緯を語った。
「まず私の名前は、上白沢慧音だ」
「私は鈴風春花そしてこっちは、」
「そららら、私は射命丸空です」
「二人とも、今回は本当にありがとう」
「お礼なんていいよ。それより話の続きをお願い」
「そうか……そうだな。私は、もとは人間だったんだ。能力持ちのな」
慧音の能力は「歴史を食べる程度の能力」というらしい。
「今まで私は村で教師をしていたんだが、ある時、村を妖怪が襲ってきた」
その妖怪は、村人を片っ端から殺していったらしい。
「私は、村を守りたい一心で能力を使った。具体的には、自分が人間だという歴史を『食べた』んだ」
その時、慧音は人間を半分捨てたらしい。
「そして私は半分ハクタクの半人半獣になった」
そうして村を襲った妖怪を倒したらしい。
「だが、その後村人達に化け物と罵られ、村から追い出された」
「そんな……慧音は村を守るためにやったのに」
「妖怪に襲われた恐怖が抜けきっていない村人にとっては、私も妖怪も一緒だったんだ」
「酷い………」
「いや、いいんだ。別に私は村人を恨んではいない」
「慧音……」
「それに、私は自分の意志でこうなったんだ。今さら後悔はしていない」
「……ねぇ、慧音」
「どうした?」
「もしよかったら、この村に住まない?」
「………いいのか?」
「その代わり、一つお願いがある」
「なんだ?」
「この村で寺子屋を開いて、子供たちに勉強を教えてほしい」
「私が……か?」
「うん。そろそろ村の子供たちに勉強させてあげたいんだ」
「春花……お前は不思議な奴だな」
慧音は笑いながらそう言った。
「そうかな?」
「そこまで人のことを考えているのは人間の中でも珍しいよ。ましてや妖怪となればさらに珍しい」
「人のためを思うのは当たり前のことだよ」
「そうだな」
「で、住んでくれるの?」
「そういうことなら、喜んで。春花、これからよろしくな」
「こちらこそ、よろしく。慧音♪」
こうして、私達の村に今度は寺子屋が建つことになった。
あれ?
展開になんかデジャヴ………。




