森での始まり
とある森の中、ひとりの少女が目を覚ました。
「ここは…?」
少女は横になっていた体を起こすと、周りを見渡す。
「(あれ?私はさっきまでなにをしていたんだっけ?ていうか、ここはどこで私は誰?)」
少女は首を傾げた。
「……どうしよう」
少女は、己の記憶がないという事態に戸惑いながらも、行動を開始する。
「まずは…………状況確認?」
そう呟きながら周りを見渡すが、周りにはただただ森林が広がるだけであった。
彼女がいるのは森の中に通された一本道のようで、道には草があまり生えていないことから、それなりに人が通っていることがわかった。。
「えーと………次は、自分の確認、かな?」
とりあえず困った時は持ち物を確認してなにができるか判断、そんな考えをもとに彼女は自分の体を見下ろす。
「…………あれ?なんでそんなことはわかるのかな?」
自分が着ている着物を弄っていた彼女は、ふとそんなことに考えが行き着いた。
「うーん………」
しかし、いくら考えても答えは出ないので、彼女は、考えるのをやめた。
「(うーん、なんだか良く分からないけど、まあ、いっか)」
とりあえず、そんな結論にいたった彼女は、再び自分の着物を弄り始めた。
今着ているのは、白を基調とし所々に桜の花弁の模様が入った着物。
ほかには一切の持ち物は所持しておらず、自分の身元の確認は不可能であった。
「…うん。詰んだ」
彼女が最後に考え始めたのは、自分は何者かということだった。
まずは
「(私は一体誰?)」
その時、
「っ!?」
急に頭の中に記憶が溢れてきた。
「…………鈴風……春花」
どうやら、それが私の名前らしい、そんなことを考えながら、さらに意識を奥深くへ沈める。
「…………種族は………妖狐?…… 」
知りたいことを深く考えると、自然と答えが口をついて出てくる。
しかし、彼女の頭の中には一つ引っかかることがあった。
「(種族が妖狐って…………。つまり、私は妖怪ってことなの?)」
妖狐とは、言わずと知れた狐の妖怪であり、主に人間を化かしたりもするが、一方では神の使いとして崇められることもある存在である。
「……むぅー、また身に覚えのない知識………」
また自分の中に知らない知識があることに驚く。
とりあえず、この現象についてはまたいつか調べようと決心し、さらに追求をする。
「あらゆるものから逃げる程度の能力、ありとあ………って、能…力…?」
どうやら私には不思議な能力があるらしい、その事実を認識した途端、春花は、
「って。能力!?何でそんなものが存在しているの!?そもそも私が妖怪とか。そんなことって………」
テンパり始めた。
もとから特に記憶のない彼女の中に存在する数少ない知識の中では、能力や妖怪といった存在はありえないものとして扱われていた。
その現実に春花はひたすら困惑し、彼女の頭の上ではびっくりマークとはてなマークが乱立していた。
そんな春花の目に映ったのは、今にも沈もうとしている夕日だった。
感想、待ってます。