日が昇る
「加藤さん、凄いね」
聞き飽きたその言葉を有り難そうにうんうん頷く。
その様子はまるで赤べこのようだ。
新人社員の頃から言われ続けたら、そりゃ怒られなれるし褒められなれる。
教えていた部下が辞めてはまた新しいのが入ってきて、辞めてはまた新しいのが入ってきての繰り返しだ。俺はタイムリープでもしているのか?いいや、歳はとっている。
正直なんのために生きているのか分からなくなってきている。
そんな思春期と子供みたいなこと言っているのは痛々しいが、事実なのだから仕方がない。
妻も子もいなければこれといった趣味もない。酒は飲めないし、挙句の果てにはタバコにも手を出したが、たった一度で箱ごとゴミ箱に捨てた。
同僚から本を貰った。面白かった。しかしそれ以上の感情が思いつかなかった。
その同僚はもういない。
今眠りに落ちればまた決まったルーティンを過ごすだけ。
朝起きてパンとインスタントコーヒーを飲み、スーツに着替えて満員電車に乗り込む。会社に着いたら部長に頭をヘコヘコ下げて、ゴマすりをし、部下にもいい顔をし、怒られて褒められて罵られて賞賛されて。
その繰り返しだ。
つまらない、と言ったら贅沢だ。
毎日することがあるだけマシだ。もし俺がホームレスだったら?ニートだったら?
こんな悩まされることはないだろうがまた、新たな悩みが現れるだろう。
まぁ、いい。明日のことはまた明日考えよう。
おやすみなさい、世界。




