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第二話 言葉遊び

ご高覧頂きありがとうございます。ARINKOです。「あの壁の向こうへ」の第二話です。皆様のおかげで第一話が何度かランキング入りいたしました。また、投稿してすぐに感想をくれた方、ありがとうございます。おかげさまで第二話を制作するモチベーションが継続いたしました。長話はいけませんね。どうぞ初心者ながら頑張って制作した第二話「言葉遊び」です。

 目を覚ますと食器などが片づけられていた。食事が終わって、光が消えたら大抵の場合は食器が片づけられている。いわゆる日常というものだ。

「ねぇ、あなたいつもこんな感じの?急に電気が消えたと思ったら眠くなって、目が覚めたら何かが変わっている。•••寝ている間に何かされている感じがして慣れないわ」




 僕は彼女を真っ直ぐ見た。何かをされているとはなんだ?寝て起きる。これで終わりじゃないかと僕が思った。

「大丈夫だよ。これで僕は危害を加えられたことはない」

彼女は不安そうな顔をした。

「信じられないわ。あなたが気づいていないだけで本当は何かされているんじゃない?」

 



僕は彼女の言っている意味がわからない。寝ているだけで危害が加わるわけがない。

「そんなわけないよ。寝ているだけで何が問題なのさ」

僕は彼女の言うことを嘲笑した。しかし次の彼女の一言ですぐに一蹴された。

「呆れた。その寝ているだけなのが問題なのよ。寝ていたら何をされても抵抗できないし、気づかないじゃない」

 



 僕はやっと理解ができた。言われてみればそうだ。寝ていて抵抗はおろか、気づくことすらできない生き物なんて格好のカモだ。また沈黙が続いた。彼女が来てから沈黙が多いように感じる。いや、彼女が来るまでずっと黙っていたのだから、以前よりは少ないが、それが逆に違和感を覚えた。




 あまりに暇だったので勉強をする事にした。僕が数学に手こずっていると、彼女が近づき、問題文を読む。そして彼女は顔をあげ、壁の一点を見る。どうやら考えているようだった。すると淡々と説明を始めた。

「あなたこれ違う。この定義はこっちで使う。そのかわりにここはこの定理を使う」




僕が今までわからなかったところや、気づきもしなかったところなどを教えてもらった。僕がどのように答えるか迷っていると、彼女はペンを僕の指から抜き取り、一部だけを書いたり、穴埋め問題にする。そのたびに彼女がペンを走らせる音が聴こえる。




 彼女は賢く、教えるのが上手だった。僕が回答し終わるたびにペラと、ページをめくる音が聴こえる。真っ白な壁に囲まれた部屋にはペンで書く音と、ページをめくる音、そして僕ら二人の声が聞こえた。僕は彼女が居れば勉強がもっと充実すると考えた。




そしてしばらく時が経った。

「大体こんなものよ。どう?証明は。わかった?」

僕はノートを書きながら答えた。

「うん、大体わかった。でもまだ1人では最後まで書けないと思う」

「最初はみんなそんなものよ。むしろ初めてでここまでできるなら上出来よ。」




 彼女の声は今まで聞いたことがないぐらいに柔らかかった。おそらく僕に色々教えて上機嫌なのだろう。しかし少しつまらなさそうに聞いてきた。

「他に何かできないわけ?」

「できない」

僕がそう答えると彼女は大きくため息をついた。



 僕はノートを見返した。文字だらけでとにかくぎちぎちに詰まっている。しかし同じ文字でも僕と彼女ではまるで違う。僕の文字は教科書に似ていたが、彼女の文字の形は見たことがない。でも僕はその見慣れない文字をずっと見ていた。すると彼女が口を開いた。




「ねぇ、しりとりしない?」

僕は固まってしまった。初耳だ。

「何それ」

「しりとりも知らないわけ?どこまで無知なのよあなたは」

どうやら外の世界ではしりとりとやらは知っていて当然のようだ。




「いい?ルールは簡単。前の人が言った単語の、最後の文字から始まる単語を言う遊びよ。例えば”りんご”と言われたら、”り”から始まる単語言う。これの繰り返しよ。あっ、でも最後に”ん”がついたら負けだからね」

「わかった」

僕はそう言うと彼女は満足げに始めた。

「じゃあ最初は私ね。りんご」

「五」

「誤差」

 僕と彼女は単語のみの会話が始まり、何度も続いた。途中、同じ単語は使ってはいけない事もわかった。そして互いに疲れが見えた頃。




「単位」

僕がそう答えたときだった。彼女は下を向いて考え込んだ。

「インペラ・・・」

彼女は全て言い終わる前に、言うのをやめてしまった。彼女は僕とは真反対の壁を向いて、少し考え込んだ。

「どうしたの?最後まで言えば?」

すると彼女の顔は曇り、静かに答えた。




「やめて。それ以上、口を開かないで」

彼女は壁をずっと見て考え込んだ。そしてバツが悪そうに続けた。

「”い”だっけ?イオン結合」




 僕は困ってしまった。何も良い単語が思いつかない。どれだけ考えてもわからない。とうとう僕は言ってしまう。

「ギブアップ」

すると僕と彼女は全身の力を抜いて倒れ込んだ。さらに大きくため息をついた。

「もー!長すぎ!どんだけ耐えるのよあなた!人生でこれだけ長いしりとりは初めてよ!」

彼女はずっと耐えていたようで、ずっと「耐えすぎ!耐えすぎ!」と言っている。

「もうどれだけやったのよ!ざっと••••••1,2時間かしら?」




 すると突然目の前が暗くなり、彼女の顔が見えなくなった。

「今!?遅すぎ!もっと早く来なさいよ!」

しかし彼女は荒くなった呼吸をすぐに整えた。

「でも疲れたから寝られると考えればいいか」




 僕は答えようとした。一足遅かったので何もしようとしなかった。壁が見えなくなったら何もできないのだから。こうして僕たちは眠りについた。




それからは同じような生活が続いた。その中で僕は”言葉遊び”というものを学んでいった。僕たちは毎日勉強か言葉遊びをした。彼女がとあることを言うまでは。

どうでしょうか?今回ははりきって第一話よりは少し時間をかけてこだわってみました。主人公と彼女の生活は日常化し、主人公のルーティンが大きく変わりましたね。制作中に第一話が下がりながらではあるものの、ランキング入りしていてとても喜んでいます。予定としましては一応完結まで頑張る予定です。よろしければ感想記入や、リアクション、お気に入り登録等をしていただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
2話は、主人公と少女が一緒に過ごす時間が増えて、関係性がはっきり動き出した回ですね 危険に対する考え方の違いや、勉強・しりとりでのやり取りから、主人公がどれだけ外の常識を知らないんでしょうか? 会話中…
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