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『アポリアの群青 ―迷える子羊の島―』


挿絵(By みてみん)


第一話:再会の記憶は、まだ痛む


君に会うたび、僕のなかの「絶望」は、美しい傷になる。

それでも、もう一度、君を選ぶ。

________________________________________

空は、海のように広がっていた。

だけどそこに、波の音はなかった。

ただ、群青だけが、静かにすべてを包んでいた。

彼はその中で目を覚ました。

名も、記憶も、身体の痛みさえもない。

ただ──孤独だけが、そこにいた。

そして彼の前に、彼女が現れた。

白い肌、淡金の髪、どこか空に似た瞳。

まるで、かつての約束が形になったような存在だった。

「こんにちは。……また、君に会えたね。」

彼女はそう言った。けれど、彼にはその意味がわからなかった。

「……君、僕を知ってるの?」

「ううん。覚えてるって言ったら、嘘になるかもしれない。

でも、君に会うたびに、心が“きゅうっ”て鳴くの。」

その言葉に、彼の胸がふるえた。

なぜか、懐かしさではなく痛みが湧いた。

「……なんで、僕なんだ?」

「君を愛してるからだよ。

でもそれは、優しい気持ちじゃない。」

彼女は少しだけ目を伏せ、囁くように言った。

「愛は、救済なんかじゃない。

愛は、苦しみを引き受ける勇気。」

「私、君の孤独も、罪も、痛みも知ってる。

それでも、全部引き受けたいって思ったの。」

風が吹いた。砂が舞い、彼の記憶に触れた。

──彼は誰かを、深く傷つけたことがある。

──それでも「愛されたい」と、願ってしまったことがある。

「僕は……君を傷つけたかもしれない」

「うん。きっとそうだね。」

彼女は頷く。

でも、それがなんだろう?

彼女の目は、そう語っていた。

「それでも、君をもう一度、愛してみたいと思った。

愛ってきっと、そういうものでしょ?」

彼の瞳が、群青に溶けていく。

彼女の言葉は、祈りじゃなかった。

赦しでもなかった。

それはただ──**“強くあろうとする選択”**だった。

そして彼は、はじめて言葉を見つけた。

「僕も……君と、もう一度、向き合ってみたい。

恐くても、逃げずに……」

その言葉は、誰にも届かない空に溶けた。

けれど、彼女の目には、確かに光が宿っていた。


※本作およびその世界観、ならびに登場用語(例:メモリウム™、魂経済、共感通貨、ニーチェ的愛 など)は、シニフィアン・アポリア委員会によって創出・管理されたオリジナルコンテンツです。

著作権および構文的構造に基づく創作概念の保護のため、無断転載・類似表現の流用・二次利用を固くお断りいたします。

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