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どうするのかを決めたミリーナの行動は早かった。
翌朝には帰国の報告を受け、その次の日にはここを発つと言うのだ。
アルフェンは「そうか」と笑って受け止める他、出来ることはなかった。
「お世話になりました」
旅装となったミリーナは、見送りに出てきた城の面々を前に頭を下げる。その一番前にいるアルフェンは、何と言って良いやら分からず、その姿を見つめるしか出来ない。
「アルフェン、急でごめんなさい」
「……いや、故郷に戻れるのだろう? 喜ぶべきことだ」
「そう、ですね」
ミリーナは一瞬困ったような顔を浮かべる。だが、アルフェンがその意味を問いただす前に、そんな表情は明るい笑みにかき消される。
「魔法の特訓も続けますね。いつかアルフェンみたいに出来るように」
「ああ。だが、無理はするな。何かあっても止めてやれない」
「…………はい」
ミリーナが虚を突かれたような顔で固まって、それから頷く。
「……あの、アルフェン」
「なんだ?」
ミリーナは何かを迷うように視線を彷徨わせる。だが、結局首を横に振った。
「やっぱり、なんでもないです」
「――姉さん、そろそろ」
その時、ミリーナの後ろにいた人間の男が出発を促して彼女に声をかける。
「わかってる。……アルフェン」
ミリーナは一歩アルフェンに近付いてその手を握った。
「ミリ――」
「また、お会いしましょう」
ミリーナはそういうと、ぱっと手を放して踵を返す。
そしてあっという間に人間の男と共に馬へと乗って、こちらに手を振りながら行ってしまった。
「……ミリーナ」
こちらが声をかける間もなかった。
本当に「また」などあるのだろうか。自分と彼女がいる場所は、こんなにも遠いと言うのに。
アルフェンはしばしその場所に、呆然と立ち続けた。




