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「…………綺麗な月」
ミリーナは自室の窓辺で膝を抱えながら、ぼんやりと夜空を見ていた。
マイスの言葉。そしてアルフェンの態度――。自分はどうすれば良いのか、考えても答えは出ない。
いや、本当は答えなんて出ている。けれど、認めたくなかった。
一つ溜息をついたミリーナは、ぴょいと立ち上がると、薄着のまま部屋を出る。向かうのはこの部屋より少し高い階にあるバルコニーだ。
少し肌寒い廊下を歩きながら、ミリーナは纏まらない思考をもてあそぶ。
先程からずっと堂々巡りをしてだかりで、何も変化がない。
マイスは帰国を望んでいる。おそらくアルフェンも。だから、彼に別れを告げて、この恋は封印して、国に戻るのが正解なのだろう。
けれど、すっぱり決断することもできなかった。
到着したバルコニーの扉に手をかける。
「……あ」
声を発したのはどちらだったのか。ミリーナの視線の先には、こちらを振り返って驚くマイスの姿があった。
「眠れなかったんですか、姉さん」
「――うん、そうなの」
いつもと変わらぬ「姉さん」という呼称。それから変わらぬ笑顔を見て、ミリーナは気が抜ける。そうなってようやく、ミリーナは自身がずっと緊張していたのだと知った。
「すみません、僕の言ったことのせいですよね」
否定することが出来ず、ミリーナは曖昧に笑う。
「いずれ……、考えなければならないことだったわ」
帰国するのか、しないのか。それはマイスが来る来ないにかかわらず、決めなければならないことだった。
たとえ彼がミリーナを探しに来なかったとしても、国が荒れれば知らずに過ごせるわけがない。そうなる前に国内の状況を知ることができて、むしろ良かったのだとは思う。
「姉さん、王妃に追い出された者達は皆、貴女の帰りを待っています」
「……ええ」
彼らを放って、自分だけがぬくぬくと暮らすことなど、どうせできやしなかった。
「帰ってきてください、姉さん」
だから、この別れは遅いか早いか、それだけの違いなのだ。
「そうね、それがきっと皆のため――」
ミリーナは痛む心を見ないふりをした。




