13
ミリーナが立ち去るのを見送ったアルフェンは、ほどなくして自身の執務室に戻った。
部屋にいた副官ロイズが、こちらの顔を見て目を瞬かせた。
「何かありました?」
「……何がだ?」
「浮かない顔をされているので」
アルフェンは、自分の顔をぺたりと押さえて眉根を寄せる。
「ミリーナが国に戻る……かもしれない」
「お引き留めなさったんですか?」
「……何故」
仏頂面で問うと、ロイズはやれやれという顔で肩を竦めた。
「申し訳ありません、そんなことを言えてたら、そんな顔なさってませんよね」
そんな顔とはどんな顔だと思いながら、ロイズを睨むが彼はどこ吹く風だ。幼少期からの付き合いのため、たまにこうして、良く言えば気安いというか、無礼というかな言動をこの男はする。
それを本気で咎めようと思ったことはないが、今日は胸に渦巻くもやもやと相まっていつもより癇に障った。
「何が言いたい? 彼女はもうかなり魔力も安定しはじめているし、帰るというのを止めることはできないだろう。それに、彼女が帰国するのは、こちらにとっても悪い話ではないはずだ」
「……まあ、たしかにそうなんですがね」
ロイズがまだ何か言いたげなのを察し、アルフェンはそれを促す。
「言いたいことは、はっきり言ってくれ」
「貴方ご自身はそれで良いのですか?」
アルフェンは口を噤んだ。
「ミリーナ様と過ごす貴方は、これまで見たことがないほど楽しそうです」
アルフェンは、ロイズの言葉に何も言葉が浮かばなくなる。
ミリーナと過ごす日々は楽しかった。いつしか、この日々がずっと続くのだと錯覚するほどに。だが――
「……国に戻れば殺されると嘆いていた彼女に、帰国の目処がたった。それは、喜ぶべき……だろう?」
「…………貴方がそう仰るなら」
そう言いながらも、ミリーナがここに留まることを願わずにはいられなかった。




