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捨てられ王女と拾った魔王【web連載版】  作者: 桜 みゆき


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「どうしよう……」

 マイスに充てがわれた客室から退出したミリーナは、一人頭を抱えていた。

 彼の「好きなんです」という、思いもよらぬ告白が脳裏に焼きついて離れない。

 魔法の訓練をしているということを言い訳に、答えを保留にしたミリーナだったが、いずれは答えを出さなければならない。

 国に戻るのか、戻らないのか。王になるのか、それとも――マイスの気持ちを受け入れるのか。

 胸がじくじくと痛む。

 マイスのことは好きだ。けれどそれは、弟のような存在としてであり、家族へのもののような愛だ。

 でも、彼の言う「好き」が、そういう意味でないのは分かる。そして、ミリーナがその「好き」を向けているのは彼ではなく――。

「アルフェン……」

「どうした?」

「――っ!?」

 何故か返ってきた言葉に、ミリーナはビクッとして顔を上げた。

「ア、アルフェン!? いつからそこに……」

「つい今しがただが……。どうした、何かあったのか?」

「あ……、いえ……」

 ミリーナは視線を彷徨わせる。どう答えたら良いものか。考えあぐねた末、少し本題とは外れたところから口にする。

「その、マイスのこと、すみませんでした。怪我も大したことなくて……。手加減してくださったのですよね?」

「ああ……。どうにも話が噛み合っていない気がしたから……。どうも彼は、我々が貴方を攫ったと考えていたようだ」

「そうだったのですね。……もう、助けていただいたのに」

 その時、アルフェンの頬に微かな切り傷を見つける。髪に隠れていたから気が付かなかったのだ。

「アルフェン、貴方こそ手当はしましたか?」

 ミリーナはその傷へ手を伸ばす。枝垂れる髪を耳にかけて、その傷を見る。どうやらそう深い傷ではないらしく、ほっとした。

「ん……ああ、気が付かなかった」

 彼が「『治癒(ヒール)』」と呟くと、その傷が消える。その様子をミリーナは、自分が出来たら良いのにと思いながら見つめる。『治癒(ヒール)』は、自分の傷を治す魔法のため、他者には効き目がないのだ。その他人に使うことの出来る魔法もある――らしいのだが、とても難しい魔法で、ミリーナにはまだ扱うことができない。

「それで……、彼との話はそれだけ?」

 アルフェンの手が、ミリーナの手をやわらかく掴んだ。胸が高鳴る。だが、これから言うべきことを考えれば、同じくらい胸が引き絞られる心地がする。

「……いいえ、国に戻らないかと……、言われました」

 アルフェンが息を飲む。

「そう、か……。そうだな、彼は貴女と同郷なのだから……」

「ひとまず、返答は保留にしてあります。魔法の訓練がまだあるから、って……」

 引き止めてほしいと思った。

 だが彼の立場からすれば、魔族を近くで知ったミリーナが国に帰ることは、メリットでしかない。

 そしてやはり、アルフェンは首を横に振った。

「いや、もう今でも暴走するようなことはないと思う。だから貴女が望むのなら……、」

「――っ」

 帰れ、と言われている気がした。

 ミリーナは俯いて唇を噛んだ。

 望まないと言えば、どうするの。そう言いたかった。

 だが、この別れはいずれ来るものだったのだ。だからどうにか、そんな言葉を飲み込む。

「――わかりました。少し、考えます」

 ミリーナはぺこりと頭を下げて、彼の隣をすり抜ける。

 無理矢理に浮かべた笑顔は、引き攣ってはいなかっただろうか。

 帰りたくないという本心には、どうか気付かれていませんように。

 ミリーナはぎゅっと拳を握って、でもそれを悟られないようにその場を後にした。

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