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音のした方角へミリーナは向かう。
大まかな方向と、近くを通った人々の話から、場所は城の正面入口の付近だとわかった。既にそこにはひとだかりができており、ミリーナは彼らの隙間をどうにか通って、彼らの中心に向かう。
「ちょっ……、通して……。――わっ、と」
どうにか最前列まで到着したミリーナは、隙間を無理やり通り抜けた反動で転びかけるが、後ろを付いてきていたルルに支えられ、事なきを得た。
だが、顔を上げたミリーナは、目の前に飛び込んできた光景に目を見開く。
「なんてこと……」
「ミリーナ様?」
ルルの問いかけは、ミリーナの耳には入らない。そのまま彼女の手を振り切って、駆け出す。
「ミリーナ様!?」
「ミリーナ?」
騒ぎの中心にいたアルフェンがこちらを向く。彼の注意がこちらに移ったのに少しほっとながら、ミリーナはアルフェンの腕を掴んだ。
だって、彼の前に血を流して座り込むのは――。
「やめてください」
「ミリーナ、これは襲撃者だ」
「……わかっています、でも」
アルフェンと座り込む金髪の男との周囲には、戦いの痕跡がある。それに城門も破壊されていた。おそらく、男が侵入する際に、爆薬か何かを使った時の音が、あの爆発音だったのだろうと察せられる。
「彼がこんなことをしたのはおそらく」
「『ミリーナ』……?」
金髪の男がミリーナの名を呟きながら、顔を上げた。
「……やっぱり」
よく見慣れた若草色の瞳と目が合う。ミリーナが苦笑を浮かべると、男の目にはみるみる涙が盛り上がった。
「ミリーナ姉さん、生きて……」
「『姉さん』だって?」
ぽろぽろ涙を落としはじめた男の頭をぽんぽんと撫でてやっていると、後ろからアルフェンの信じられないというような声が聞こえた。
ミリーナは肩を竦める。
「はい、彼はマイスという名の……、私の従弟です」
「つまり、今回の襲撃は……」
「私を救うため……、でしょうね。お騒がせして申し訳ありません……」
事情を飲み込んだらしいアルフェンは、大きな溜息をついてから、野次馬に散開するよう手を振った。




