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「ここで降りろ!」
馬車の扉を開け放った男が馬車の扉を開き、中に一人座っていた女を乱暴に引きずり下ろした。
土がむき出しの地面に手をついた女は、ひりりとする痛みを覚えて、手の平に怪我をしたことに気付いた。地面に座り込んだまま、その手を見ると、いくつもの裂傷がその白い肌にできている。
「……『治癒』」
女が小さな声でそう呟くと、その傷は瞬く間に消えていった。
それを見た、先程女を引き倒した男が忌々しそうな目で女を見下ろしながら舌打ちをする。
「気味が悪ぃ……」
男はフンッと鼻を鳴らすと、馬車の御者台に座り直し嘲るような顔で女を見下ろした。
「王妃様に目をつけられたこと、運が悪かったと思うんだな、ミリーナ王女様」
そう吐き捨てると、その男は無人の馬車と共に、その場を去っていった。
一人取り残された彼女は、地面に座り込んだまま途方に暮れる、
こうして女――王女であったはずのミリーナは、国から捨てられた。