嵐の前の静けさ
私は長谷川琴音と云う名前だった。日本で産まれて日本で育った。父親の職業が特殊なのを除けば、普通の家庭だったとは思う。父親は変わった人で、私は幼い頃から、様々な事を勉強させられていた。
高校の時、留学生として来日したアイリスと云う名の女性と出逢う事になる。アイリスは綺麗な女性だった。名前が示す様に虹の様な輝きを放っていた人。日本語に不慣れだったアイリスは、周りに馴染めないでいた。だから父親の影響で外国語を話せる私が、アイリスと周りの橋渡しをする事になったのだ。ソレが切っ掛けでアイリスと親しくなっていった。
様々な事を話した。アイリスは内面までも綺麗で…。同性でありながらも彼女に次第に惹かれていったのだった。いつからか私達は友達の域を超えてしまった。性別なんて関係は無い。時に喧嘩をしてはみたけれど、ソレでも私達は幸せだったとは思う。
留学の期間が終わってからも私達の関係には終わりは無かった。二十歳になった時、私はアイリスの母国を訪れた。アイリスが生まれ育った国を、この目で見たかったからだ。良い経験になるだろうと長期間の留学を希望した。ホームステイ先は、勿論、アイリスの実家だった。