デリヘルドライバーの日常
【登場人物】
ドラ→本編の主人公。職業はデリヘル専門のドライバー。
涼子→ドラが勤務する店で働くデリヘル嬢。源氏名はキリコ。
オレの職業はドライバー。一度も違反切符を切られた事はない。自分でいうのもアレだが、優良ドライバーだと自認している。
何のドライバーかと言うと、デリヘル専門のドライバーだ。
デリドラ。店の女の子からは[ドラ]で通っている。
収入はそんなに悪くはないと思う。
同世代のサラリーマンと同じくらいじゃないかと思う。
ただ、クルマは自前なのでいつもピカピカにしておくのは意外に面倒くさい。
女の子には快適に乗って欲しいから。これも仕事のうちだ。
『デリヘル嬢とイイ関係になっちゃうチャンスがある』と思ってる人もいるかもしれないけど、それは無いと言い切れる。
だって、身を粉にして頑張ってる従業員に手を出すなんてのは常識を疑われる行為だからだ。
客として料金を支払うんだったら話は別だが。
オレの仕事は運転の他に嬢のスケジュール調整やシフトを受け持っている。
ボス(店長)やマネージャーに代わって入店希望の女の子の面接を任される時もあるが、それは出来ればやりたくない。何故なら、年齢を偽って未成年の子がやってきても見た目でそれを見破るのが難しいからだ。
後でトラブルになるのは御免こうむりたい。
車内で女の子とどんな会話をするのかって?
ほとんどの子はメイクしてるか、黙り込んでいるか、スマホをいじってるかのどれかだ。中にはお喋りが好きな子もいるが、オレの方から話しかける事は少ない。
客の部屋に入る時間と出る時間を告げるだけだ。
別に仲が悪いワケじゃない、嬢たちも自分も仕事に専念するだけ、それでいい。
やっぱり訳アリな嬢は多い。未婚のシングルマザーとか、旦那に黙って借金したカネを返済するためとか、奨学金を払うためとか。
風俗で働く女性たちは苦労してる場合が多い。
だから、軽い気持ちで付き合うべきではない。
そんなオレではあるが、とても気が合うデリヘル嬢がいる。
性格はかなり明るく、風俗嬢が持っている[哀愁]や[雰囲気]を感じさせないアラフォーだ。
月曜日から金曜日まで、ほぼ毎日出勤してるハードワーカーだ。小学生の女の子と二人暮らしだという。
娘さんは母親がどんな仕事をしているのか薄々感じているらしいが、親子関係はかなり良好だと聞いている。
彼女は日勤がメインで夜勤はしない組だ。夜は家族と過ごす事を大切にしているんだと私は勝手に思っている。
そのデリヘル嬢の源氏名は[キリコ]。本名は[涼子]。
今日のオレはキリコのデリバリーで終業だ。
キリコが仕事を終えてクルマに乗ってきた。
キリコ「ただいまっ!」
ドラ「ご苦労さま。今日はもうアガリ?」
キリコ「うん、今日は3人ブッ続けでお仕事引き受けちゃったからもうヘロヘロだわ」
ドラ「娘ちゃんが帰ってくるまでに家にいないといけないんだろ?このまま送ってやるから」
キリコ「サンキュー!恩にきるわ」
ドラ「そのくらいどうって事ないよ、恩だなんて大袈裟よ」
キリコ「生意気な口きくようになったね、ワタシより10も歳下のクセにさ」
ドラ「店の子には誰にも別け隔てなく同じように接してるよ」
キリコ「もうそろそろマネージャーとかに昇進してもいい頃なんじゃない?」
ドラ「いや、オレは今のままでいい」
キリコ「ねぇドラちゃん、ドラちゃんの名前って何だったっけ?」
ドラ「ドライバーだから[ドラちゃん]。それでいいよ」
キリコ「そーゆートコ、頑固よねー!」
ドラ「褒め言葉だと受けとっとく」
キリコ「ドラちゃんが理性を無くしたら、どんな男になるんだろ?」
ドラ「フッ…もし[超]がつくほどのド変態だったらどうする?」
キリコ「そうね…見てみたいわ〜」
ドラ「あいにくだが、オレは店の子に手を出す気は無いからな」
キリコ「じゃあ素人の子なら、いいワケ?」
ドラ「そりゃどうゆう意味だ?」
キリコ「ふふふ…」
ドラ「まさか、何か問題を抱えてんじゃないだろうな?」
キリコ「ドラちゃん、真剣に聞いて欲しいの!」
ドラ「それを聞いちまったら、『聞かなかった事にする』ってのは無理な話みたいだな」
キリコ「どうする?聞いてくれる?」
ドラ「分かった。何を聞いても驚かないから話してみろよ」
キリコ「その前に、買い物付き合ってくれる?夕食の食材」
ドラ「オレを晩飯に招待してくれるって事か」
キリコ「ホント、いちいち説明しなくても理解してくれるからドラちゃんはラクだわ」
ドラ「やれやれ…じゃあ、お言葉に甘えて飯をいただく事にするよ」
オレは大きなレジ袋を二つ持たされて彼女のマンションへ。
仕事が終われば源氏名では呼ばないのが自分の中の[ルール]だ。
マンションの前まで送ってきた事は何度もあるが、部屋に招き入れてもらうのは今日が初めてだ。
涼子「さ、どうぞ!」
ドラ「うん、お邪魔するよ」
涼子「支度するからテレビでも見てて」
ドラ「オレが襲ったりしない事を確信してやがるな」
涼子「そりゃそうよ〜、だって私なんて眼中にないでしょ?」
ドラ「そんな事はないだろ?誰が見たって涼子は襲ってみたいレベルのイイ女なんだから」
涼子「ね〜え、もし私がドラちゃんの秘密を知ってたとしたら?どうする?」
ドラ「なっ…」
涼子「クソ真面目な運転手を装ってはいるけど… その正体は!」
ドラ「うううっ、ま、まさか… おいっ!」
ピンポ〜ン
のえる「ただいまー!」
涼子「おかえりなさい」
娘が帰ってきた。
オレは少しだけ延命されたような気分になった。
のえる「こんにちは、お兄さん!」
ドラ「お、お兄さんって… こんにちは…」
のえる「はじめまして、のえるって言います」
ドラ「あ、ドラです… ドライバーの[ドラ]」
のえる「よろしくネ、ドラさん!」
ドラ「あ、うん… よろしく…」
オレは激しく動揺していた。
実は、オレは[ロリコン]なのだ。しかも、かなり重度の変態ロリ野朗だ。
そして、いまオレの目の前にいる女の子はめちゃロリオーラを発している美少女なのである!
もし万が一、自分の性癖がバレてしまったら?と思うと気が気じゃない。
のえる「ドラさんの事はね、お母さんからよく聞かされてるんだ」
ドラ「そ、そうなんだ」
(母親が風俗嬢で、オレがその送迎をしている事も知ってるのか?)
のえる「実はね、こう見えてアタシもお仕事してるんだ!」
ドラ「え?だってまだ小学生だろ?何のしご…」
と、言う寸前、オレは口をつぐんだ。
(もしやこの子、キッズモデル?でも、オレの知らない子だ。だいたいのジュニアモデルは把握してるオレがこんな可愛い子を知らないとは… 不覚っ!)
のえる「この前ね、仲良しの子に誘われてジュニア撮影会に初めて出演したの」
(ガーーーンッ!!!こりゃあ、かなりマズい展開になってきたぞ〜)
涼子「ねぇ、今日は飲んじゃう?」
ドラ「ば、バカッ!飲酒運転になるだろが!絶対にダメだ!」
涼子「だったらぁ〜、泊まってけばいいじゃん」
ドラ「おい、子供ちゃんがいる前でなんて事言い出すんだ?」
のえる「お母さんもああ言ってるんだし、泊まったらいいよ!」
ドラ「い、いやいや…」
オレは二人に圧倒されて何も言い返せなくなってしまった。
ピロピロピロピロ〜
オレのスマホにLINEが入った。マネージャーからだ。
『1週間休み無しで連勤してるから2日くらい休みなさい。これは業務命令だ』
(はぁ〜)
のえる「誰からのLINE?もしかして彼女さん?」
ドラ「あっ… そうだよ、彼女からだ」
涼子「ウソばっか!ドラちゃんに彼女なんていないでしょ!」
ドラ「なんでそんな事が分かるんだよ?」
涼子「顔見たら分かるわよ、めちゃウソついてる顔だもん」
のえる「ドラさん、カッコいいのに彼女さんいないんだ〜」
ドラ「カッコよくなんかないって!」
(ダメだ!完全に二人のペースだ、どうするどうするオレ?よし、ここは一旦引き下がろう!)
ドラ「ちょっくら外でタバコ吸ってくるわ」
涼子「あれ?1年前から禁煙してるんじゃなかったかしら?」
ドラ「受動喫煙を気にしてクルマん中で吸ってないだけじゃ!」
オレはひとまずマンション近くの公園に避難した。
自動販売機で缶コーヒーを買う。
ベンチに腰掛けて作戦を練ようとするが、何も思いつかない。
すると、突然背後から誰かに叩かれる。
「わっ!」
ドラ「うわーーーーーっ!!!」
あまりに意表を突かれて心臓が口から飛び出るくらいビックリする。
「ビックリした?」
ドラ「は?」
犯人は、のえるちゃんだ。
のえる「ゴメンねドラさん、驚かせちゃって」
ドラ「いや、もう大丈夫だよ… ん?」
オレは彼女を二度見した。
学校から帰宅した時と服装が変わっていたからだ。
ピンクのタンクトップにテニスウェアのような短いスカート姿。
オレはその容姿にドギマギしている。
ドラ「どうしたの?お母さんにオレを連れて帰るよう頼まれたの?」
のえる「ううん、料理作るのに時間がかかりそうだからドラさんに遊んでもらってきなさいって」
ドラ「遊ぶって… こんなオッさんとか?」
のえる「ドラさんはオッさんじゃないよ、若くてカッコいいモン!」
ドラ「お世辞でも嬉しいよ、ありがとうのえるちゃん」
のえる「のえるちゃんじゃなくて、のえるって呼び捨てでいいよ!」
ドラ「いやいや、ちゃん付けの方が呼びやすいからさ」
のえる「だって、お母さんの事は涼子って呼び捨てじゃん!」
ドラ「まぁ、お母さんとは仕事仲間だし…」
のえる「ねぇ、これ見て?」
彼女は自分のスマホの画像をオレに見せた。
それはアイドル調の衣装を着た二人の女の子の写真だった。
一人はのえるちゃん。そして、もう一人は…
この子は見覚えがある!
というか、よく知ってる子だ。かなり人気のあるJSアイドルの[ワカメちゃん]だ。
オレは、どう対処したらいいかワケワカメ状態だ。
のえる「この子、同じアイドル事務所に所属してる子でワカメちゃんって言うの」
(知ってるよ、なんて口が裂けても言えない…)
ドラ「じ、じゃあ、さっき話してた仲良しのモデルさんって、この子の事だったんだね」
のえる「ワカメちゃんの本名、知りたい?」
ドラ「え?なんで?」
のえる「ワカメちゃんね、ドラさんの事知ってるって!」
(カーーーーーン! 終わった… もうダメだ、全部バレてる…)
のえる「どうしてワカメちゃんがドラさんの事知ってるか知りたい?」
ドラ「あ… うん」
のえる「撮影会の時にすっごくイヤらしいお客さんがいて、バシバシ写真撮りまくってたの。ワカメちゃんが困ってた時にその人をつまみ出してくれた人がいて、それがドラさんだったって」
(それは覚えてるぞ。やたらとローアングルから撮ってる奴を会場から引っ張り出してやった事があった)
ドラ「そ、そんな事があったっけな〜?」
のえる「うん。すごく嬉しかったって言ってたよワカメちゃん」
ドラ「そうか…」
オレはのえるちゃんが喋ってる事なんて、もうどうでもよくて、全てバレちまってる事をどう説明すればいいのか、その事で頭がいっぱいだ。
(ん?そういえば、ワカメちゃんをオレが助けたって、なんでのえるちゃんが知ってるんだ?)
のえる「ほら、ワカメちゃんとドラさんのツーショット写真だよ!」
(なーにぃーーー???なんでその写真をのえるちゃんが持ってんだ?オレだって持ってないぞ〜)
ぼーっとしてると、のえるちゃんはオレから缶コーヒーを取り上げて飲み始めた。
ドラ「おいおい?」
のえる「えへへ、これでアタシたち、関節キスした事になったネ!」
ドラ「ま、まぁな…」
オレはうろたえるしかなかった。
とりあえず、深呼吸だ。
(ふぅ〜…)
のえる「あー、美味しかった!」
そう言ってのえるちゃんは立ち上がって自販機の横にある空き缶ボックスに飲み干した缶コーヒーを捨てにいく。
その時だった。事件が起きたのは…
この作品を読んでいただいた皆様、どうもありがとうございます。
シリアスなハード路線で行こうと思ってたのですが、ちょっとコミカルな展開になってしまったようです…
果たしてこの先、主人公のドラにどんなハプニングが舞い込んでくるのでしょうか?
筆者である私もドキドキしています。
誤字、脱字はご了承ください…(汗)
どうぞ、よろしくお願いします。