クエストじみた文化祭にて
「さぁ、選んで?」
そんな言葉でめくった一枚。
そこに書かれた指示は『目の前の人から告白される』
…はぁ?
他校の文化祭、図書室の貸し出しカウンターにて。
冗談のような最終課題。
告白される?するんじゃなくて?
あー、でも。するにしたって俺に好きな異性なんていないし。
いや、まぁ、いないし。
なぜこんなことに。
先日。
「私の学校、来週末に文化祭なの。くる?」
駅前、バス停でばったり会った幼なじみから唐突に誘わた。
特に断る理由もなく、ふらり来てみたのが間違いだったか。
幼稚園から中学まで同じクラス。母親同士が仲良くて。
彼女とはそれだけの知り合い。
そう思っていた。
けど、高校進学とともに会えなくなってから気づく、寂しいようなこの気持ちは何なのだろう。
「ちょっとまて、何だこの指示。他のニ枚はなんて書いてあるんだよ」
「ダメ。選択は一度切りよ」
そうかよ。どうせ他も同じような文言なのだろう。
「そうだ。コレあげる」
あの日、バスが来るまでの間、お互いの近況を話していると鞄から出てきたのは『スタンプラリー・クエスト』と書かれた紙。
客入りが期待できない部活と委員会が合同で企画したとかで、その参加券だ。
「最後は図書室ね。午前なら私、いるから」
そうでなければ、書道部のパフォーマンスを見たり、登山部の寝袋体験なんて自分じゃ参加しなかっただろう。写真部で撮られた昭和アイドル風の写真は酷かった…。
いくつもある参加団体から四つ以上のハンコをもらってゴールか。
「で?全部済んだら、ちゃんと出店の割引券くれるんだろうな」
「もちろん」
すっとカウンターに出された、50円引き券は手書き。
額がせこいぞ。
「まぁいい。俺に何を告白するつもりだ?」
恋愛話と思わせて、実は俺の黒歴史、憧れのヒロインキャラを暴露。なんて密告も幼なじみならありそうだ。
「先に言っとくけど、皆には別の指示なんだからね。今日、来るって言うから、特別に用意したの。わかった?」
はいはい。
「わかったから、さっさとしてくれ。何言われても驚かねぇし」
「私、午後は暇なの。よかったら一緒に回らない?」
えっと…これが告白か?
「そしたらちゃんと打ち明けるから」
見ると、照れて真っ赤になった彼女の顔。
からかっているわけではなさそうだ。
「あぁ、俺も。誘おうと思っていた」
なんだかんだ言いつつ、今日を楽しみにしていたし。
そうゆうことなのだろう。
コイツもきっと。
ならば今度は俺が、文化祭へ誘おうか。