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帰り道  作者: 倉木英知
5/8

鬼道


何で此処にいるのだろう…。

記憶は曖昧だ。僕は誰かと逢っていた気がする。

その帰り道なのだろうか…。


頭の中。言葉が廻る。幽霊。死んだ人への想い。存在するモノ。存在しないモノ。自分の世界。他人の世界。自分の想像。他人の想像。死んでいる人。確認出来ない。判断出来ない。生きている人。生態。体温。感情。殺せる。


何で僕は此処にいる?


錆びた鉄の匂い。

地面に浮かんだ赤黒い滲み。

砂利と砂利の隙間から覗く肉片。


またしても僕は…。

何年も使用されずに廃墟と化したビルの前に立っていた。


夢と現実の境は曖昧で…。

その輪郭は陽炎の様にユラユラと揺らめく。




ー何で…

ーお前は其処にいるんだ?


僕から見て右の視界。


死んだ筈の女が居る。


魚の様な虚ろな眼。

金魚の様にパクパクと動く唇。

生々しく蠢く肉瘤。

血液を吹き出しながら疵痕を露出している下半身。

滴り落ちる血液は腐臭を撒き散らす。




その蘭鋳らんちゅうの様な幽霊は…。


此方を視ている。その瞳は白濁としていた。




【何で助けてくれなかったの?】


クチャクチャとした擬音に埋もれた聲。


【視ていただけじゃない………。】


【何で助けてくれなかったの?】


嗚咽に紛れた微かな聲。




ソレは此方に右手を差し出す。


その手には、薄汚れた人形らしきモノが握られていた。


【あれは…。ブードゥー人形。】


身代わり人形。

その人形の左眼のボタンは外れかかっている。



【何で助けてくれなかったの?】

唐突に、脳内に鳴り響く断末魔の悲鳴。


そうだ。僕は友人と逢っている最中の筈だ。

何で僕は此処にいる?記憶は曖昧で夢を見ているかの様だ。


言葉は廻る。


幽霊。死んだ人への想い。存在するモノ。存在しないモノ。自分の世界。他人の世界。自分の想像。他人の想像。死んでいる人。確認出来ない。判断出来ない。生きている人。生態。体温。感情。殺せる。



殺せる??


あの蘭鋳らんちゅうを殺せば…。

もう見なくてすむのだろうか…。




だから…。だから僕は…。


傍らに落ちていたコンクリートブロックを手に取って…。





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