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「おい、清水、気合いが入ってないぞ」と鶴見。
「はーい」と清水が嫌々声を出している。
「ああ、右も左も貧乳ばかり」と鶴見はため息をついた。
「何よ、自分が一番小さいくせに」と清水。
「どうやってゲーム中にあの大きな胸に顔を埋めるかだよな」
鶴見は独り言を漏らしてる。
「おいおい。あそこ、女子が遊んでる」とアフロ所長。
「本当だ」と宇佐義。
「ビキニ女子がいっぱいだ」
「そうだね」
「ここは実は楽園じゃ無いのか」
アフロ所長が急に元気になった。
「パラダイス!」とアフロ所長がステップを踏み出す。
突然服を脱ぎだしたアフロ所長。
「見に行こうぜ」とアフロ所長が走り出す。
全裸のアフロ所長は股間に葉っぱだけをつけていた。
「待った」と宇佐義が呼び止める。
「なんだよ、若い女だぞ」
「あいつら、猿かもしれない」
「どう見ても人間だろ」
「いや、さっき猿の声がしただろ。猿の惑星だよ、ここは……………………」
「猿の雄叫びじゃ無くて女子のはしゃいでる声だったんだよ」
「いや、これはワナだ。猿の仕掛けた罠だ、絶対」
「何言ってんだ。目の前にビキニ女子がいるんだぞ」
「だから怪しいって言ってるんだ」
「どこが怪しいんだよ。ビキニ姿の女子だよ、あれは」
「いや、これはワナだ。ハニートラップだ」
「目の前にビキニ女子をぶら下げられて見逃すバカがどこにいる」
「ビキニの女を餌に、どこかで猿が人間狩りをしてるのかもしれない」
「考えすぎだよ」
「ここが猿の惑星と言ったのはアフロ所長だろ」
「いや、ここはきっと新島だ。ナンパ島だ」
「とにかくしばらく様子を見ないか」
「どうしてそんなに慎重なんだ」
「餌につられて落とし穴に落ちるテレビ番組かもしれない」
「ああ、ロンドンハーツね」
「猿の司会者が突然現れて、ドッキリでしたとか言うに決まってる」
「考えすぎじゃ無いのか?」
「落とし穴に落ちて、猿にとらわれて、労働力として猿たちに仕えるんだよ」
宇佐義が震えてる。
「スタッフ!スタッフ!畑を耕して!」と宇佐義が声をあげる。
「ロンドンハーツのわけないだろ。俺たちは一般人なんだぞ」
「いや、あの番組、昔は一般人にワナを仕掛けてた」
アフロ所長の葉っぱが風でヒラヒラしてる。
「確かにそうだな」
「浮気女に鉄槌をくわえたり、一般人さえ平気でワナにかけてた」
アフロ所長の葉っぱが飛んでいった。
「そんなに言うなら、まあ、しかたないかあ……………………」
「それにあの女たち、どこかで見た気がするんだ」と宇佐義。
「えっ?オレは覚えが無いな」
「いや、あの顔、覚えてる」
「オレはあんなビキニ姿覚えてないぞ」とアフロ所長。
宇佐義とアフロ所長は森を抜け出し、砂浜の岩場に隠れて様子を見ていた。
気がつくと宇佐義も葉っぱ1枚の姿になっている。
「パリピのオレがなんで身を隠さないといけないんだ」
「安全が確保されるまでは接触は危険だ」
「その格好で言われても説得力がないな」
「俺たち、はっぱ隊」
宇佐義は自慢のモノがブラブラしてる。
「なんて大きさだ」
アフロ所長が白旗を手にひれ伏した。
白旗はアフロ所長のブリーフであった。
「科捜研の電力供給をまかなっている強大なタービン様」
宇佐義の葉っぱが風に舞う。
アフロ所長のブリーフも風に舞う。
それからしばらく観察が続いた。
「せっかくのビキニ女子だというのにな」
アフロ所長は岩陰から虹コングたちを見ていた。
「じゃあさあー、最初はなんの競技にするの」
鶴見があかりんに聞いた。
「あかりん、わかんなーい」
「最初はビーチフラッグ対決だ」と大和葵が言った。
「そっか、ビーチフラッグだな」
鶴見は旗をとる素振りを始めた。
「実況の大和です。ゲストは虹色コングラチュレーションの」
「桐野です」
「大塚です」
「ヨロシクお願いします」
「第一走者は鶴見ですね」と大和葵が実況を始める。
「張り切ってますね、鶴見さん」と桐野。
「いつも気合いが入ってますからね」と大塚。
「若い子に負けない」と鶴見がガッツポーズ。
「巨乳さんチームはねもちゃんでしょうか」
「そのようですね」
「ねもちゃんも胸で素振りをしてますね」
「胸でフラッグをつかむんでしょうか?」
「さあ?」
「見てみたくないですか、胸でどうやってフラッグをつかむのか」
「見たい、見たい」と桐野が叫ぶ。
「胸で鶴見さんを弾き飛ばしそうですね」
「いやあ、楽しみです」
鶴見がねもちゃんの胸を見つめながら、思わずヨダレを垂らしている。
ビーチフラッグ……………………。
それは砂浜で遠くに離れた旗を取り合うゲーム。
旗を巡る争いはまさに胸に顔を埋める大チャンス。
もみくちゃになった勢いで胸に顔が……………………。
いわゆるアニメに有り勝ちな「なんでいきなり胸に手が」みたいな展開。
旗を取り合い、もみ合い転がり思わずねもちゃんの胸に顔が。
これで夢心地。
昇天間違いなし。
鶴見はヨダレが溢れてしょうがない。
「よーい」と耳を塞いで鉄砲を構える神田。
砂浜に腹ばいになる二人。
「あっち」と鶴見は声をあげる。
「えっ、どこが熱いのかしら」
「熱いって砂が!」と鶴見が怒鳴ってる。
「私、脂肪の塊二つで熱を吸収してるから、全然熱くない」
「だってめっちゃ熱いでしょ」と鶴見は悶絶してる。
「ベタ胸だから全身で熱を吸収するのね。お可哀想」
じっと暑さにたえる鶴見。
ああ、辛抱だ。
この苦しみのあとにあるご褒美。
鶴見はねもちゃんの巨大な胸を思い浮かべる。
「貧乳さんはお熱いのね」
「お熱いのはお好き。ププッピドゥ」と強がる鶴見。
もうヨダレも枯れていた。
「可哀想ね」
ねもちゃんが蔑んだ目で鶴見の胸を見つめてる。
「可哀想、言うな」と清水が言った。
フフフフフと笑うねもちゃん。
「早く引きがね引いてよ」と苦悶の鶴見。
「だって怖いんだもん」とカンダが銃声にビビってる。
「早くしろよ、神田」
「だってぇー」
「もう、早くしないと焼け焦げちゃう」
「ほんと、可哀想なお胸だこと。同情しちゃうわ。オホホホホホホ」とねもちゃんは高笑い。
「早く、撃てよ、神田」
「無理」とカンダはその場に座り込んだ。
「ああ、もう、やけどする」と鶴見が上体そらし。
「ねえ、カメラ、私の上半身をうつしてね」とねもちゃんが余裕の舌なめずり。
「カメラがありません」と大和葵の声がする。
「何、放送しないの?」
「分かりません」
「スマホで撮影したら」
「何かの時のために電池を残してないと」
「何。一人くらい、撮影用にしたら」
「ダメです。スマホはライフラインですよ」と大和葵。
「私、自撮りしてるけど」とねもちゃん。
「やめてください」
「だってインスタにあげたいし」
「そもそも圏外ですから」
「でも私のナイスバディは保存しておかないと」
ジリジリ焼け付く砂浜に鶴見が干物になりかけている。
「スターター、チェンジしろよ」と鶴見が吠える。
神田に変わって、ありさが銃を手にする。
「よーい」とありさも銃にビビってる。
「怖い」と足を震わせる。
「もう、焼きするめになっちゃうって」
「引きがねを引くだけでしょ」
「無理」
「もう無理」と鶴見は立ち上がる。
鶴見の前半分が真っ赤っかである。
「バン」と大塚が銃を引く。
瞬間、ねもちゃんが立ち上がり、走り出す。
揺れる巨乳。
「あっ、待った」と鶴見が追いかける。
揺れる胸がクラッカーのようにバチバチ音を立てる。
このままじゃ、胸に顔が埋められない。
鶴見が必死にあとを追う。
途中でねもちゃんが立ち止まる。
「ねもと息切れか」
鶴見は横目で胸を見ながら、ねもちゃんの胸を追い越した。
「そのすきに鶴見が追い抜いた」
鶴見が旗をとる。
「鶴見の勝利」
鶴見が旗を突き上げる。
鶴見は悔しそうな顔。
「ビー」と笛を吹くあかりん。
「鶴見、失格」
「どうして」と鶴見があかりんに突っかかる。
「だってフライングだし」
「何、熱くて立ち上がったから」
「そう」とあかりん。
「アレって熱くて立ち上がっただけだし」
「ぶぶぶぶぶー。失格」
「勝者、ねもちゃん」
「チームパイナポーが一ポイント先取しましたね」
「そうですね」
鶴見が旗をねもちゃんに手渡す。
ねもちゃんが旗を高々と突き上げる。
鶴見がその隙を逃さない。
鶴見がねもちゃんに抱きついた。
そしてねもちゃんの胸に張り付いた。
「モォー!変態」とねもちゃんと鶴見がもつれ合っている。
「王手ですよ。あやめが撮ればこのゲーム、巨乳さんチームの勝ちです」
「チームパイナポーです」とあやめ。
「ねえ、勝負に勝ったからってどうなるわけ?」
大和葵があかりんに聞いた。
「あかりん、しらなーい」
「賞金はなんなのよ、清水」と鶴見が怒鳴る。
「えっ?私?」
「そうよ、清水の企画でしょ」
「そうなんだ、私の企画なんだ」
「台本に書いてるよ、企画清水って」
「台本あるんだ」と清水も初耳であった。
あっ!と清水が閃く。
ゲスノート?いや、台本か……………………。
やっぱりゲスノート、いきてるんだあの落書き。
「賞金は何?清水」
賞金なんか決めてないし……………………。
原作者、考えてくれないの?
「私の部屋の生乾きの洗濯物とか」
「いらんわ」とねもちゃんは抱きつく鶴見を引き剥がしながら言った。
おい、原作者、何を言わせるんだと清水。
「じゃあ、一週間前の飲みかけのペットボトル」
「このゴミ女」とねもちゃんが鶴見の頭を叩いてる。
「この胸なし変態女」
「新しい妖怪の名前ですか」と大和葵。
「賞金はあかりん先輩の熱いキスとか……………………」
どさくさに紛れて言ってやったと清水。
「いやよ、あかりん。清水、きたないしー」
あかりんは渋い顔。
「があああああああああああああああーん。失恋気分。
清水が手をついて落ち込む人の絵文字のようになっている。
「清水の変態」とあかりんが言い放つ。
「があああああああああああああああーん。ショック、ショック、ショック!」
「あかりんはそんなに安い女じゃないもん」