ヴィンテージの不思議な魅力
翌日、鋳造屋で鋳造を頼んだ後に再生石の装飾品作りに取り掛かり始めた。再生石と言ってもほとんど天然のオパールと変わらないので慎重に扱わなければならない。
アンティークジュエリーやヴィンテージジュエリーはメインとなる宝石の周りにメレのような小粒石を纏わせたデザインが多い。今回は少しばかりそれを意識して再生石の周りにジルコニアという模造石を配置することにした。
ジルコニアは魔工宝石が誕生する前に作られていた模造石である。その見た目からしばしばダイヤモンドの代用品として用いられていたが、魔工宝石の登場以後は魔工ダイヤモンドにその座を奪われ姿を消した。
以前リッカが蚤の市で購入した再利用品のジルコニアが手元に合ったのでそれを使う事にしたのだ。
(このジルコニア、買ったはいい物のどう使えばいいか分からなくて棚の奥にしまいっぱなしだったんだよね。まさかこんな形で日の目を見るとは……)
少なくとも十数年以上前に作られたヴィンテージになりかけのジルコニアは今回の再生石のお供に丁度良いのではないだろうか。
(まずは指輪かな)
いくつか預かった再生石の中で大き目のオパールをルースケースから取り出す。指輪というと「星屑の宝石箱」で苦い思いをしたリッカだったが、懲りずに指輪に挑戦するのには訳があった。
(ヴィンテージの指輪ってロマンがある気がする)
古い時代に作られた指輪は何であんなにも魅力的なのだろう。長い時を経て経年変化した肌が味となって色気のような物さえ感じる。指輪についた傷一つすら、その指輪が辿って来た人生を想像する糧となる。
(古い指輪を見ていると魔法が無かった時代に作られたはずなのに魔法を使えるような錯覚に陥るんだよね)
魔法がまだ物語の中の存在だった頃に作られたはずなのに、魔法やおまじないが使えるような気になる。そんな不思議な魅力があるのだ。
「そもそも、今回は再生石をアピールしてお客様の反応を確かめるのが目的なんだから。作りたい物を作るの!」
サイズ問題で指輪の売れ行きが悪かったことが尾を引いているのか生産者にあるまじき独り言を呟いて気合を入れる。今回の作品はいわばサンプルだ。目を留めた客に再生石についての意見を聞くのが目的なので売れる売れない関係なしに作りたい作品を作るのだとリッカは自分に言い聞かせた。
(指輪の幅はいつもより広めに取って重量感を出そう。再生石と同じ位の幅をとって腹の部分に向かうにつれて細くなるように……)
まずは指輪用に作られた筒状のロウをオパールの縦幅より少し長めの幅に切り出す。切り出した面をヤスリで整えたら鋳造時の収縮を考えながら筒の内側を作りたい指輪のサイズより少し大きめに削る。
(前回の教訓を活かして要望が多かったサイズにしよう)
コンパス型のケガキ(線を引く道具)を使って筒の内側の穴に沿って削りたい幅の線を入れその通りに削り、紙やすりで整えた物を更にヤスリで削って整形していく。
(石座を取り付ける部分は厚めに、腹の部分は薄めになるように)
中心線を引き採寸しながらペンで指輪の幅を書き込んでいく。それに合わせて削れば大まかな形が見えてくるのだ。石座を付ける所を中心に腹の部分に向けて細くなるよう削り出し、上部に石座が置けるよう平らに削って粗い紙やすりで大きな傷を消せば土台の完成だ。
「問題はここからだな」
この指輪をどういうデザインに仕上げて行くか。シンプルだとつまらないので何か装飾を入れたい。指輪の縁を残すような形で石座を載せる場所以外を一段掘り下げる。同じく裏側も縁を残す形で裏抜きをしておくと後が楽だ。
道具を使って掘り下げた部分を綺麗に整地したらジルコニアを彫り留めする為の下穴を空ける。星座をイメージしてジグザグに配置し、隣同士のジルコニアを線で繋ぐことにした。
残りはオパールを留める石座だ。覆輪留めにするのでロウを使ってオパールよりも一回り大きい枠を作り石座の部分に貼り付ける。あとは縁を残して底の部分に穴を空ければ完成だ。
「こんな感じかな?」
今まであまり幅広の指輪を作ったことが無かったので仕上がりが楽しみだ。
指輪ってなんであんなに魅力的なんでしょう。他のアクセサリーには無い何かを感じます。
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