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【完結】夜の装飾品店へようこそ~魔法を使わない「ものづくり」は時代遅れですか?~  作者: スズシロ
3章

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満腹至福大満足

 料理の話をしていると一品料理が運ばれて来た。海老のフリットは五尾の大ぶりの海老に具沢山のタルタルソースとオーロラソースが添えられていてボリューム満点だ。カンパチのマリネは皿一杯のカンパチに紫玉ねぎが乗せられ上からバジルソースがかかっている。鶏レバーのパテはこんがりと焼かれたバゲットに良く合いそうだ。


 まずは海老のフリットを口に運ぶ。揚げたての衣のサクっとした食感がふわりと口の中で溶けてぷりぷりの海老が現れる。具沢山のタルタルソースが良く合って至福だ。海老一つ一つが大きいのでかなり満足感がある。エビフライも良いがフリットも良い。お酒と一緒に食べるならばフリットの方が合うかもしれない。海老の美味しさを噛みしめた。


 カンパチのマリネは脂の乗ったカンパチにさっぱりとしたレモンベースのマリネ液が良く合う。揚げ物を食べた後に口の中をさっぱりとさせてくれるので有難い。脂の甘みとバジルソースの爽やかさが絡み合って幾らでも食べれそうな気がしてくる。


 鶏レバーのパテは臭みが無く食べやすい味付けにされており、薄切りで表面を炙ったバゲットに塗って食べると良いつまみになる。小さい頃はちょっとしたほろ苦さが苦手だったが大人になると不思議と美味しく感じるのだ。宝石商が気に入ったようで赤ワインと共に食べていた。


「そろそろメインディッシュを頼みますか」


 結構お腹が一杯になって来たのでメインディッシュを注文することにした。パスタやピザ、ステーキにハンバーグ。メニューが豊富で目移りしてしまうが……


「私、カニのパスタにします!」


 数あるメニューの中で特に目を引いた「特製カニの濃厚トマトクリームパスタ」を注文することにした。カニは絶対に失敗しないという自信があった。


「では、私はカルボナーラにします」


 宝石商が選んだのは「濃厚四種のチーズのカルボナーラ」である。二十分ほど待つと香ばしい香りを漂わせながらパスタが運ばれて来た。


「うわ、美味しそう」


 思わずそう呟いてしまうほど暴力的な見た目をしている。カニ味噌を溶いた濃厚なトマトクリームソースの上にカニのほぐし身がたっぷりと載せられその脇にはいくらが添えられている。早速一口食べると口いっぱいにカニの風味が広がった。


(カニの風味が消えないようにトマトの酸味が抑えられていて美味しい。期待していた以上にしっかりとカニの味がして良いなぁ)


 以前カニのパスタと謳いつつ全くカニの味がしない物に当たってがっかりしたことがあるのだが、このパスタは正真正銘「カニのパスタ」だ。


 宝石商が頼んだパスタは見るからに濃厚そうな四種類のチーズが溶け込んだソースで作ったカルボナーラだ。綺麗に盛り付けられたパスタの上に卵黄とすりおろしたチーズ、粗びき胡椒がかかっており芳醇なチーズの香りを漂わせている。


「これは……美味しいですね」


 パスタを口に運んだ宝石商は思わず笑みを浮かべる。とろりと溶かしたチーズをそのまま口に運んだような濃厚な味わいで四種類のチーズが上手く調和して濃厚な味ながらもくどくなく食べやすい。食べた後に満足感で満たされること間違いなしだろう。


(このソースはどうやって作っているのでしょう。材料は多分……)


 美味しい物を食べると材料を分析したり作り方を考えてしまう。宝石商はそうして日々料理の腕を磨いているのだった。


 パスタを食べ終え満足した二人は最後にデザートを注文することにした。


「ケーキも良いですけどパフェも良いですよね。あ、でも焼き林檎も美味しそう!」


 リッカはあれだけ食べたのにまだパフェを食べる気でいる。


「私はケーキと珈琲にします」


 宝石商はお腹が一杯になりつつあるのか小さなケーキと珈琲のセットを注文した。リッカが注文したのは「望郷の港(ノスタルジア)」パフェだ。昼間のカフェ営業時の名物パフェらしく、倉庫群のレンガをイメージしたチョコレートパフェにレンガを模した生チョコが乗っている。


 一番下にはチョコムース、真ん中にコーヒーゼリー、その上にはティラミスが載っていて一番上にホイップクリームとチョコチップが混ざったチョコレートアイスと生チョコが載っている豪華仕様だ。なかなかのボリュームだったが温かい紅茶と一緒にぺろりと平らげて大満足のうちに夕食を終えた。


 レストランを後にして帰路に着く。転移港(ポート)に向かう道もイルミネーションが施されていて心が躍る。


「さて、帰りましょうか」


 潮風を感じながら夜道を歩く。沿道は観光客が溢れて賑やかだ。楽しかった一日があっという間に終わってしまう。オカチマチに帰っても毎日顔を合わせるというにそこはかとなく寂しかった。


「おっと」


 料理屋から酒を飲み過ぎたのか酔っ払った観光客が溢れ出てきてぶつかりそうになる。


「大丈夫ですか?」

「は、はい!」


 観光客から庇うようにさりげなく手を引いて身を寄せる宝石商に心臓が跳ね上がった音を聞かれないようにリッカは平静を装った。繋いだままの手のぬくもりを感じながら転移港(ポート)を使ってトウキョウへ帰る。


「今日は大冒険でしたね」

「色々見て食べて、最高の一日でした!」

「疲れているでしょうし、今日は早めに寝てゆっくり休んでくださいね」


 リッカの店の前で別れを告げ、それぞれの家に帰宅する。


(疲れたけど楽しかったな。石も買えたしご飯も美味しかったし、それに……)


 買ってきた紅茶を淹れ、指先に微かに残る暖かさを感じながらその日一日の思い出に浸るリッカ。製作の息抜きを終え、翌日から始まる新作作りに向けて気力を養ったのだった。

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