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【完結】夜の装飾品店へようこそ~魔法を使わない「ものづくり」は時代遅れですか?~  作者: スズシロ
3章

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藍色は愛の色

「リッカさんがお持ちのルーペって普通のルーペですか?」


 ルーペやペンライトを取り出し買い物の準備をするリッカを見て宝石商が問いかける。


「はい。倍率十倍の普通のルーペですね」

「なるほど。いや、即売会や展示会で石を買うなら鑑別魔法の魔道具も持っていた方が便利かなと思いまして。私のルーペや眼鏡は鑑別魔法を付与してあって真贋鑑定や魔力感知が出来るようになっているんです」

「……やっぱり偽物って流通しているんですか?」

「残念ながら売っている方はいらっしゃいますね」


 偽造石の歴史は長い。グラスストーンのように宝石を模して楽しむ為の物ではなく、購入者を騙すために作られたり利用されたりする偽物もまた常に進化を遂げてきた。


 最初はガラスなどで真似ているだけだったので誰でも見分けがついたが、時代が進むにつれて外観がそっくりな模造石や「ダブレット」と呼ばれるスライスした石と樹脂などを張り合わせて作った加工石などを故意に本物と勘違いさせるような売り方で売る業者が現れ始めた。


 一応フォローを入れておくと模造石やダブレットの石が悪い訳ではない。それを石に詳しくない素人にあたかも「本物」かのように錯覚させる形で売りつける者たちが悪いだけである。


 ここまでは石に詳しい者ならば騙されることはなかったのだが、魔工宝石と複製魔法の登場で状況が一変した。


「最近は魔工宝石を天然石だと偽って売りつける業者が増えていますから、こういう場で買うならば自衛が必要ですね」

「即売会でもあるんですか?」

「即売会だからこそです。ここにはリッカさんのようなマニアばかりが来るわけではありませんから。石に詳しくない素人さんを狙った輩がたまに紛れ込んでいる事があるのです」

「えぇ……」


 複製品として一番狙われやすいのは不純物が少ない高品質な宝石だ。人工的な魔工宝石と品質が似ている為複製しやすく、本物を原本として宣伝した後に複製品を送りつける詐欺が横行しているらしい。愛好家の間で高価で取引されている為資産として購入する高齢者多く、石に詳しくない上に偽の鑑別書も同封されているので騙される客が多いようだ。


 次に多いのが即売会などで売られているルースだ。目の肥えているマニアには見向きもされないがたまたま立ち寄ったような一般客の中には偽物だと見分けられずに購入してしまう者もいる。大抵が天然石のルースを複製した粗悪品で一見天然石と変わりないようにみえるのだがマニアが見ると違和感を持つような品質の物が多い。


「鑑別魔法は便利ですよ。魔力の残滓を見る事が出来るので複製品に引っかかることが無いですし」

「へぇ……。確かにオパール以外の石には詳しくないので鑑別出来ると便利かもですね」

「私のルーペをお貸しするので今日一日使ってみますか?」

「ありがとうございます!」


 今まで複製品があるなんて思っても見なかった。魔工宝石は質が良い物を安く作るための物なのだからわざわざ不純物やクラックのある天然石を作る必要が無いと思っていたからだ。まさか石に疎い一般客を狙った複製品が出回っているとは……。


 万が一客に複製品を使った作品を売ってしまっては大変だ。石を見分ける自信はあるが確かに鑑別魔法を使った方が安全だ。


 持ってきたサコッシュバッグに軍資金とルーペ、ペンライトを入れたら出陣だ。今回も今までと同様ルースを扱っているブースを中心に見て回る。特に使う石を決めてはいないので気に入った物があれば購入するつもりだ。


 まず訪れたのはいつもの安売りをしている店だ。値段を表すシールが張られたルースケースがトレーに入れられ山積みにされている。掘り出し物が多いので既に人だかりが出来ていた。順番を待ちトレーの前に陣取ると良さそうな石が無いか物色する。宝石商も隣で良さそうな石が無いか探し始めた。


「そういえば、トウカさんって好きな石とかあるんですか?」


 宝石商としてのトウカを見たことはあってもコレクターとしてのトウカは見たことが無い。宝石商がコレクターとしてどのような石を購入しているのか興味が湧いた。


「特に決めずに気に入った物を購入していますね。ルースだけでなく鉱物標本も集めていますし、珍しい物や一目惚れした物は何でも購入対象です」

「え!鉱物標本も集めてるんですか?」

「はい。あれは良い物ですよ。自然の神秘を感じます。今度お見せしましょう」


 そう言ってニヤリと笑う宝石商の顔を見て「これは大量のコレクションを抱えているな」と察したリッカだった。


「ああ、でも最近は集めている石があって」

「え!何ですか?」

「アイオライトとタンザナイトのような藍色の石です」


 宝石商は藍色の石が集められたルースケースを漁りながら言う。確かにアイオライトやタンザナイトは美しい石だが、数ある宝石の中でも藍色を好むとは渋い選択だ。


「この深い藍色がたまらなく愛おしく感じるのです」

「へー……。私のオパールみたいなものですかね」

「そうかもしれませんね」


 心から愛せる石が見つかるのは幸せなことだ。その分財布は軽くなるが、お気に入りの石を並べて眺めるための対価と考えると安い位だ。


(タンザナイトにアイオライトか……)


 以前からリッカは宝石商に日頃の感謝を込めて何か贈り物をしたいと考えていた。藍色の石が好きだというのならそれを使ってネクタイピンでも仕立てようか。そのために質のいいルースが欲しい。今度コハルに相談してみよう。

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