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【完結】夜の装飾品店へようこそ~魔法を使わない「ものづくり」は時代遅れですか?~  作者: スズシロ
3章

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不穏な会話

 とある場所にあるお洒落なカフェ。店内には若い女性客が溢れ、皆美味しそうなスイーツを食べている。


「ここのパフェ、一度食べてみたかったんですよね~」


 アキは目の前に鎮座する可愛らしい柑橘系パフェを眺めながらそう言った。オーダー品のメッキをかけるために外出したついでに久しぶりにアキに会おうと思い連絡を取った所、「行ってみたいカフェがある」とこの場所を指定されたのだ。


「若い子に人気なんでしたっけ?」

「そうなんです!蜃気楼通信(ミラージュ)に可愛い物を載せるのが流行っていて。ここのパフェは見た目に凝っているので写真映えするんですよね」

「確かにパフェが一つの作品みたいな感じですね」


 ただ果物を盛っているだけではなく、「桜のパフェ」「紅葉のパフェ」など四季をテーマに様々な装飾が施されている。例えばアキが頼んだ「秋の彩りパフェ」は黄色やオレンジの柑橘類に加えて紅葉やイチョウなどの葉を模したアイシングクッキーやマジパン、赤と黄色のグラデーションがかかったゼリーなどが入っており、食べる前に見た目で楽しめるよう工夫がされていた。


「ボリュームもあるし美味しそう」


 リッカは自分の前に運ばれて来たボリューム満点の「四季のパフェ」を見ながら呟く。見た目よりもボリュームと味の方が気になるタイプだ。とりあえず後で宝石商に自慢しようとアキの真似をして蜃気楼通信に画像を保存しておいた。


「いただきます!」


 季節のフルーツがたっぷりと乗ったパフェを食べる。まずは一番上の生クリームから。ふわふわとしていて練乳のような甘さがするタイプだ。そこにアラザンや星形のチョコレートがトッピングされている。生クリームの下にはバニラアイスが入っていてその周囲に林檎や蜜柑、葡萄や苺など四季の果物がたっぷりと配置されていた。


「こういうお洒落カフェって一人だと入りにくいのでアキさんに誘って貰えて良かったです」

「分かります!私も師匠が居なかったら来れなかったですし……」


 周囲のキラキラした女性客をちらりと眺めながらアキが言う。若いグループ客ばかりで一人だと入りづらい雰囲気だ。店内の装飾も可愛らしくて写真映えしそうなものが多く、元々大人数でわいわい楽しむ為の場所なのかもしれない。


「あの」


 急にアキが真剣な顔で切り出す。


「私、『黒き城(シャトー・ノワール)』を辞めるかもしれないです」

「え!」


 驚きすぎて大きな声を出してしまい、慌てて小声に切り替える。


「この前の件で何かあったんですか?」


 思い当たるのはナギサの件だが、そこからどう転がれば「会社を辞める」という話になるのか見当もつかない。リッカは展開が急すぎて話が全く飲みこめなかった。


「はい。ナギサのお父さんが会社に謝罪に来た時に色々と話を聞いて、今まで自分がしてきた努力って何だったんだろうって思っちゃったんです」

「一体何があったんですか?」

「リッカさんは三女神と魔法の話を知っていますか?」


 アキの言葉にドキっとした。先日宝石商と話していた事を思い出す。その三女神とアキが会社を辞めることになんの関係があるのだろう。


「教科書で習った話位は……」

「創造の神『イーリア』と文化の神『ヴィクトリア』、技術の神『リディア』の三姉妹が十数年前にこの国に魔法をもたらした。それから魔法技術は急速に発展し今に至る。そんな話、新しい技術を広めるための与太話だと思っていました」

「思っていた?」

「はい。ナギサのお父さんと社長の話を聞くまでは」


 そう言ってアキが話し始めたのは少し前の出来事、ナギサの父親が「黒き城(シャトー・ノワール)」へ謝罪に来た際の話だった。

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