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【完結】夜の装飾品店へようこそ~魔法を使わない「ものづくり」は時代遅れですか?~  作者: スズシロ
3章

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デザイン画の摺り合わせ

 オーダー品のデザイン案を送ってから数日後、男性客から返信があり通話をしながらデザインを詰めていくことになった。音声通信を繋ぎながら蜃気楼通信(ミラージュ)で画像を送り意見を交わしていく。


「指輪本体はこんな感じで大丈夫ですか?」

「はい。綺麗に仕上げて頂いてありがとうございます。彫のデザインなのですが迷っていて」


 男性はリッカが送ったデザイン画の中から何枚かピックアップして表示した。唐草のみのシンプルなもの、花と唐草をあしらった可愛らしいもの、大小の五光彫り(星形を模して彫ったもの)を散りばめた物、五光とミル打ちをあしらったものだ。


「依頼した時はお二人のイヤーカフみたいな唐草が良いなと思っていたのですが彼女は花や星のような意匠をあしらったデザインが気に入ったみたいで。どれにしようか迷ってしまって」


 オパール好きの女性客の事を思い出す。確かに華やかな指輪が似合いそうな可憐な女性だった。


「ペアリングですのでお客様ご自身もお付けになる指輪です。お二人の意見を摺り合わせて頂くのが一番良いかと存じますが……」

「そうですよね……。実は僕自身は可愛らしいデザインを身に着けるのはちょっと……と思っていて。でも彼女がとても気に入っているみたいなのでダメとも言えなくて」


(そういう事情かぁ。難しいな。せっかくのオーダーメイドなのに我慢して苦手なデザインにするのは勿体ないし、なんとかできないかな)


 どうやら男性はシンプルは唐草が好みらしい。それはオーダーを受けた時の反応で分かっていた。しかし女性は華やかなデザインが好き。せっかくのオーダーなのだ。両者の希望を叶えられるデザインを提案したい。


「でしたらこれはいかがですか?」


 手元の紙にデザインを書いて男性に提示する。小さめの五光の左右に短めの唐草がついたデザインだ。五光は星のくぼみの外側に細い線を入れ、輝きを表現している。


「五光をメインストーンに見立ててその左右に飾りとして唐草を配置しました。全周囲うのではなく一粒石のリングのように1点だけ装飾を施しているので派手過ぎず、しかしながらキラリと光る五光彫りが少しだけ華やかさを添えるようなデザインにしてみたのですが」

「おお!あの、これって彼女の分の星を大きくして僕の分だけ小さくする事って可能ですか?」

「可能ですよ。確かに大き目にした方が彼女さんの好みかもしれませんね」

「そうなんです。多分大きくてキラキラしていた方が好きなので……。このデザインを彼女に見せて了承を貰えたらまた連絡しますね」

「分かりました。ご連絡をお待ちしております」


 男性との通話が切れ、リッカはほっとして思わず大きく伸びをする。


蜃気楼通信(ミラージュ)、便利だ……」


 今までだったら手紙でやり取りをしなければならなかったところをリアルタイムで相手の意見を聞きながらデザインの提案が出来る。どれだけ時間の節約になっているか分からない。これならもっと早く導入すれば良かったと少しだけ後悔した。


 オーダーは恐らくひと段落だろう。女性客のお気に召せばいいが……。カレンダーをちらりと見る。次の大型イベントは暫く先だ。委託先への納品はしているもののそろそろ何かイベントに出ておきたい。


(久しぶりに蚤の市に出るか)


 コハルからの依頼を進めつつ、蚤の市のような細々としたイベントに参加しながら別の新作を考えよう。ナゴヤで少し余裕が出たとはいえ日銭を稼ぐのは大事だ。善は急げ、とリッカは早速不動産屋に蚤の市の申し込みをしに向かった。

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