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【完結】夜の装飾品店へようこそ~魔法を使わない「ものづくり」は時代遅れですか?~  作者: スズシロ
2章

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ペアリング

「わぁ、かわいい!ここに寄っても良いかな?」


 リッカのブースに一組の男女が訪れた。女性は指輪に興味があるようで展示されている指輪に夢中だ。


「いらっしゃいませ。指輪をお探しですか?」


 宝石商が対応する。


「実はペアリングを探していて。男性用の指輪ってありますか?」


 男性が恥ずかしそうに言う。


「申し訳ございません。女性向けの物しか扱っておらず男性向けは無いのですが、後日サイズ変更をしてお送りすることは可能ですよ」


 そう言ってリッカにアイコンタクトを送る。


(サイズ変更、確かにその手があったか)


 リッカはこくりと頷いた。


「なるほど。石が付いてないシンプルなのが良いんですけどありますか?」

「それでしたら……」


 宝石商が男性の接客をしている間にリッカは指輪を眺めている女性に話しかけた。


「石がついた指輪も良いですよね」

「そうなんです!こういうシンプルなのも欲しくて。オパールの指輪が可愛いなぁって」

「分かります!」


 オパールの話題にリッカは思わず力強く返事をしてしまい、我に返って少し恥ずかしくなった。


「私もオパールが好きで厳選したオパールを使用しているので石には自信があるんです。お好みの物がありましたら試着してみますか?」

「良いんですか?じゃあこの小さいオパールの指輪を」


 女性が選んだのは小さなオパールがついたシンプルな指輪だった。


「このオパール、小さな青い遊色が星みたいで綺麗ですよね!」

「そうなんです!気になっちゃって」


 女性が指に嵌めると指輪はぴったりと収まった。


「え!ぴったり!」


 女性は驚いた様子で指輪がはまった手を眺める。一点物の指輪がぴったり嵌った時の嬉しさは特別な物がある。指輪が自分のために待っていてくれたような気がして購買意欲をそそられるのだ。


「サイズが丁度良いみたいで良かったです」


 サイズが合ったようでリッカは安堵する。サイズが合わずに悲しい顔をしてブースを去る客が多かったからだ。


「ど、どうしよう……」


 指輪がはまった手を眺めながら苦悩する女性に男性が「どうしたの?」と話しかける。


「この指輪良いなって思って……」

「似合ってるよ」

「本当?買っちゃおうかな。ペアリングはどうだった?」

「やっぱり僕に合うサイズが無くてさ。すみません、オーダーすることって出来ますか?」

「サイズ変更ではなくオーダーですか?」

「はい。シンプルなのが良いなって思っていたんですけど、お姉さん達みたいなのも素敵だなと思って」

「私達?」


 「()()()()()」という言葉に疑問符が浮かぶ。何も指輪を嵌めていないリッカが怪訝そうな顔をしていると男性は言葉を継いだ。


「お姉さん達のイヤーカフってペアじゃないんですか?お揃いだったからてっきりそうかと」

「……え!」


 そういえば宝石商とペアで作ったイヤーカフをしていたんだったと思いだす。


(確かにペアだけど、ペアリング!あれ?でもそう言われてみれば確かに……。あれ?もしかして外から見たらそう見えて……?)


 男性の指摘に頭が真っ白になる。よくよく考えたら確かにペアリングみたいなものである。と言うかペアである。固まって動かなくなったリッカに代わって宝石商が応対した。


「そうなんですよ~。私もこれ気に入っていて」

「ですよね!シンプルなんだけどちょっと飾り気があるところが素敵だなぁって。石をつけないで同じ感じで作りたいんですけど出来ますか?」

「リッカさん、どうでしょう?」

「……えっ?へっ?あ、大丈夫です。ではお二人のサイズを測らせて頂いても……」


 混乱する頭で男性と女性のサイズを測り、希望する仕様を確認する。平打ちのリングに簡単な装飾をしてメッキをかけ、金と銀の色違いにしたいという希望だ。納期は余裕を持って2カ月とし、連絡先を交換してオーダーを受け付けた。女性はオパールの指輪も購入し、嬉しそうに帰って行った。


「オーダー取れて良かったですね」

「そ、そうですね」


 普段オーダーを取らないリッカが思わずオーダーを取ってしまう程動揺していた。なんとなく気まずい。


「ペアリングみたいに見えていたんですね、これ。なんかすみません」


 耳を飾っているイヤーカフを触りながらリッカは言う。話題に出さないのも変に思われるかもしれないからだ。


「なんで謝るんです?私は構いませんし、嬉しいですよ」

「へっ……?」


 思わぬ言葉に宝石商の顔を見たまま固まる。


(嬉しい?嬉しいとは?)


 顔が熱くなるのが分かる。何か言おうと思ったが言葉が出てこず口をぱくぱくとさせるだけだった。


「……」


 無言のままギクシャクと体を動かし通路を見つめる。恥ずかしくて宝石商の顔を見れないからだ。そんなリッカを宝石商は楽しそうに見つめていた。

ちょっと甘い展開です


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