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【完結】夜の装飾品店へようこそ~魔法を使わない「ものづくり」は時代遅れですか?~  作者: スズシロ
2章

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星屑の宝石箱

 新作のリング製作は順調だった。時折アキやコハルと通話をしながらただ黙々と作業をする。装飾がついた指輪は腕の部分を星に準えて星座をイメージした丸と線のデザインにした。形が複雑なのでロウを使って原型を作る。シンプルなデザインの指輪は地金を叩く方法で製作した。石の数だけ指輪と石座を作りロウ付けする。石の大きさがそれぞれ異なるので1つずつ石座を作る必要があり、気の遠くなるような作業が続いた。


 それと並行してディスプレイとして使う宝石箱のリメイクをする。中綿が痛んでいるので布と一緒に全て剥がし、新しい綿と紺色の天鵞絨の布でピローケースを作る。木で出来た本体も綺麗に磨き、真鍮部分もアンティークさが残る程度に磨いた。蓋の裏側に夜空を描き、星がモチーフである事を強調する作戦だ。作品の展示方法は売れ行きを左右する。一瞬で客の視線を奪えるような特徴的なアイテムがあると集客力が上がるのだ。


 石座と指輪のロウ付けが終わり、鏡面になるまで丁寧に磨くといよいよ一つずつ石留めをする。その中に勿論オパールも混ざっていたが、もう怖がるようなことは無かった。量が多いので集中力を保つために何日かに分けて作業をこなした。


「出来た!」


 春の手仕事祭の3週間ほど前、ようやく全ての指輪が完成した。指輪を作る合間に在庫が減った作品の再生産などもしつつ、なんとか余裕をもって製作を終わらせる事が出来て思わず鼻歌が出そうだ。メッキをかけられるものにはメッキをかけ、宝石箱に収納してみる。薬箱ほどの宝石箱に沢山指輪が詰まっている光景は圧巻だ。


 あとは新作を宣伝するためのチラシを製作して各所に配布するだけだ。記録板で画を撮ると早速デザインを考え始める。


(今回のテーマは『星屑の宝石箱』にしよう。背景を星空にして星座のイラストをいくつか入れて、中央に宝石箱の写真を載せる形にして…)


 紺色の紙に記録画を複写し、宝石箱の周囲に金のインクと銀のインクで星と星座を描いていく。宝石箱の上部にキャッチコピーである「星屑の宝石箱」という文字をアーチ状に入れ、下部に春の手仕事祭の日時と「夜の装飾品店」が配置された区画番号を記載する。


 完成した原画を複写機で複写し、常連客やお世話になっている店などに郵送すれば宣伝完了だ。店のショーウィンドウにも沿道から見えるように掲示した。


 丁度同じ頃、アキからも「新作が完成した」という知らせが届いた。


「絶対見に来て下さいね、師匠!」


 という自信満々の声を聞き、一体どんな新作を作ったのか気になって仕方ないリッカだった。

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