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【完結】夜の装飾品店へようこそ~魔法を使わない「ものづくり」は時代遅れですか?~  作者: スズシロ
2章

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魔導メッキと技術の進歩

 魔導メッキとは造形魔法を利用したメッキ加工の事を指す。造形魔法を利用して上から金属を被せるので、熱に弱かったり変色しやすいなどの理由で通常のメッキ加工が出来ない石を留めた場合に利用される事が多い。


 リッカはその存在を昔から知ってはいた物の、魔法を使わない「無垢」の製造に拘っていた為自分の作品には使った事が無かった。しかしながら通常のメッキには耐えられないオパールでもメッキ加工が出来る手法としていつか使ってみたいと思っていたのだった。今回自分用の装飾品が図らずも手に入ったので良い実験台になると踏み、魔導メッキをかける事にした。


オカチマチに戻り、早速魔導メッキの店を訪ねる。


「メッキの種類はいかがなさいますか?」

「金メッキでお願いします」

「かしこまりました。オプションは付けますか?」


 一覧表の下に「オプション」と書かれた箇所がある。どうやらメッキや石が傷つかないよう保護魔法をかけることが出来るようだ。オパールは柔らかい石なのでオプションを付けることにした。


「では、少々お待ちください」


 店員はイヤーカフを持って店の奥へ下がっていく。魔導メッキは金属を造形魔法で変形させ直接上に被せるのでメッキ液を乾燥させる必要が無く、手早くメッキ加工が出来る。その為すぐに商品を受け取る事が出来て便利だ。


 5分ほど待っていると名前を呼ばれ、出来上がったイヤーカフの確認を求められた。


(見た目は普通のメッキと変わらないなぁ)


 イヤーカフは数分で加工されたとは思えない程美しく丁寧にメッキ加工されていた。彫り留めしているオパールにも損傷は見られない。


(オパールを留めたままメッキ加工出来るなんて)


 知識としては知っていたが実際に目にするとなんて便利な魔法なんだろうと感心した。


「魔導メッキって便利ですね」


 店を出て帰路に就く途中、興奮冷めやらぬ様子でリッカはイヤーカフを眺めていた。


「短時間でメッキ出来るのも良いですけど、どんな石でも留めたまま無傷でメッキをかけられるのが魅力的です。魔導メッキなら修理で戻ってきた作品も石を留めた状態で簡単にメッキをかけ直せますし」

「魔法を使う技法ながらオカチマチに店があるのはそういう需要があるからなんでしょうね」

「そうですね。今までメッキをかけられなかった作品でも安全にメッキ加工出来るんですから」


 メッキに耐えられない石を使っている職人にとっては渡りに船だろう。技術の進歩は素晴らしい。一方でメッキ屋にとっては驚異的な存在となるだろうとリッカは感じた。


「そうだ、イヤーカフのお代を渡さないと」


 別れ際、宝石商は財布から金貨2枚を取り出した。


「え?こんなに頂けませんよ!1個は私の分ですし」

「良いんです。量産品でなくオーダーメイドで作って頂いたんですから、働いた分のお金はちゃんと受け取ってください」


 確かに型で複製する量産品と比べるとデザインを考え1本ずつ製作し、さらに彫りと彫り留めをする等多くの手間と時間がかかっている。「かかった時間分の賃金はちゃんと受け取るべきだ」というのが宝石商の言い分だった。


「分かりました。でも一本分だけで大丈夫ですよ」

「いえ、いつもお世話になっているお礼のプレゼントですので。受け取って下さい。あ、通信魔法付与のお金も気にしなくて良いですよ。それ込みのプレゼントなので」


 どう言っても宝石商は引き下がらないだろうと感じたリッカは言葉に甘えて素直に受け取ることにした。自分の仕事の対価としてきっちり代金を払ってくれるのだ。有難い事だ。


「分かりました。では、頂きますね」


 金貨二枚を受け取り頭を下げる。


「また何かあったら連絡しますね。今日はありがとうございました」

「いえいえ。今日はお付き合い頂きありがとうございました」


 そう言いながらほほ笑む宝石商の耳に光る銀色のイヤーカフ。それを眺めながらなんだか不思議な気持ちになったリッカだった。

こういうメッキがあればいいのになと常日頃思っております。


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