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【完結】夜の装飾品店へようこそ~魔法を使わない「ものづくり」は時代遅れですか?~  作者: スズシロ
1章

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閑話 肉を食べよう

 お腹が空いたらガッツリとしたものが食べたい。「記録画映え」する可愛らしいカップケーキとか、流行もののお洒落な飲み物とかそんなものではなく、お腹が満腹感で満たされるようなガッツのあるものが食べたいのだ。幸いオカチマチはそういう種類の食べ物には困らない。むしろ可愛らしい食べ物の方が少ない方だ。


「何を食べよう」


 そう考えた時、リッカの頭には「カレー」「ラーメン」「焼肉」という選択肢が浮かんだ。オカチマチはカレー激戦区である。スパイスカレーから洋風カレーまで趣向を凝らしたカレー屋がひしめき合っている。


 また、ラーメン屋も「ラーメン横丁」というラーメン屋が集まった横丁があるので選択肢には困らない。そして最近台頭してきたのが「焼肉」だ。職人たちが集まるオカチマチに「一人でもパッと食べられる」のを売りに一人用の焼き肉屋が進出してきたのだ。


(うむむ……)


 疲れた体に刺激溢れるスパイスを叩きこんで汗をかくのも良い。じっくりと煮込まれた濃厚なスープに良く合う細麺のラーメンも捨てがたい。しかし、今食べたいのは……


「焼肉。焼肉が食べたい」


 そう、焼肉だった。やはり疲れたり頑張った時は肉に限るのだ。


  焼肉屋に着くと一人用に区切られたカウンター席に案内される。カウンター席には小さなコンロがあり、そこで肉を焼くのだ。


(今日は何にしようかな。シンプルセットも良いけど、今日は『お祝い』だし)


「すみません。カルビのセットにタンとトロを追加でお願いします」


 オプションを付けて少しだけ贅沢した気分になる。でもそんなささやかな幸せで良いのだ。注文してすぐに肉とご飯、スープのセットが運ばれて来た。


 まずはカルビから。網の敷かれたコンロの上に肉を置くと「ジュー」と言う音と共に水蒸気が上がる。


(これこれ。これだよ……)


 その光景に思わずごくりと喉が鳴る。肉をひっくり返して焼いた後にタレに浸して口に運ぶ。口の中に広がる肉の味に思わず顔がにやけてしまう。


(焼肉ってなかなか一人じゃ行けないからこういう店が出来たのは有難いなぁ。しかもこれだけ食べて銀貨1枚程度って。たまの『贅沢』には良いね)


 石の購入費にズボラな性格で自宅では何かと質素なご飯になり勝ちなリッカにとってたまの外食は栄養補給も兼ねているのだ。高くても銀貨1枚前後で食べられる店の多いオカチマチはそういう意味でも住みやすい街だ。


 カルビを堪能したあとは脂の乗った……と言うよりも脂の塊といっても良いトロを焼く。弾力のある肉を噛むと口の中で脂が染み出るのがたまらなく好きなのだ。無言で肉を焼きもくもくと口に運ぶ。焼肉とは実は一人で焼くのが本来の姿なのかもしれないとリッカは思った。


 トロの次はタンだ。薄くスライスされたタンはコリコリとした歯ごたえとあっさりした味が良い。カルビとトロで脂っこい口の中を塩とレモンでさっぱりと整えてくれる。

 

 あっと言う間に全てを完食し、支払いをして焼き肉屋を出た。満足感が凄い。


「美味しかったな」


 久しぶりの焼肉に満足したリッカは上機嫌で工房へ戻ったのだった。

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