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【完結】夜の装飾品店へようこそ~魔法を使わない「ものづくり」は時代遅れですか?~  作者: スズシロ
4章

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お披露目会の準備

 新店舗兼新居への引っ越しが終わり荷物の片付けがひと段落した頃、宝石商の提案により新店舗のお披露目会を開催することになった。まだ什器等を運び入れていない状態ならば机を並べて小さなパーティー位出来るだろうという考えである。


 日頃から世話になっている人を呼んで催す立食形式のパーティーで、少しお洒落をして楽しもうというコンセプトだ。


「招待状は作ったので招待客のリストを確認して頂けますか?変更があれば修正して頂いて大丈夫です」


 宝石商がピックアップした招待客のリストを確認する。宝石商とリッカの顧客を中心にコハルやアキなどいつもの顔ぶれが並んでいた。


「リッカさんのご家族は如何しましょう」

「あー……」


 宝石商なりに気を使ってか、一応リストの中にリッカの家族の名前があった。両親とは手仕事の道へ進むのを反対され、袂を分かって以来顔を合わせていない。手紙のやり取りすらしていないのでお互い何をしているのか分からない状況だ。


 そんな形で家を出て来たものだからリッカには絶対に手仕事で食いつないでやるという気概があった。どんなに苦しくても実家には頼らない、手仕事で生きていくという強い志があったからこそ今があるのだと感じている。


(両親は……父は特にすぐに挫折して泣きついてくると思っていただろうな。今の私を見たらどう思うだろう。手仕事のことを見直してくれるかな)


「……無理に呼ばなくても大丈夫ですよ」


 思いつめた表情をしているリッカを見て宝石商が声をかける。


「すみません。考えさせてください」

「分かりました。一応招待状をお渡ししておくので、リッカさんのしたいようにしてください」

「ありがとうございます。……トウカさんのご両親は来られるんですか?」

「未だに海外を飛び回っていますから、無理でしょうねぇ」


 宝石商の両親は宝石の買い付けで年中海外を飛び回っている。一応連絡はしてみるが、どこにいるのか分からないので難しいだろうと宝石商は語った。


「まぁ、折角のパーティーですから難しく考えずに楽しみましょう」

「そうですね」


 招待状のことは一度置いておいて、料理や装飾、服装のことなどまだまだやることは沢山ある。今回は大人数を呼ぶので手料理は難しいと判断し、レストランに外注することにした。立食形式なのでお酒に合うようなオードブルを中心に注文する予定である。


 店内の装飾は丸テーブルをいくつかレンタルして綺麗なクロスを敷き、テーブルごとに小さな魔導ランタンと生花を置いて飾りつけをすることにした。クロスはリッカの店のイメージカラーに合わせて深い紺色のサテン生地に金色の刺繍が入った美しい物を用意するらしい。


「パーティーが終わった後も店内のディスプレイに使えて一石二鳥ですよ」


 パーティーの後にクロスをリメイクしてリッカの店の什器用の敷き布にするらしい。刺繍もリメイクすることを考えたデザインにしてあり用意周到ぶりだ。


「お花はどうしましょう」


 花屋のカタログを開くと色とりどりの花が載っていてどれにしようか迷ってしまう。値段も大きさや使う花の種類によってピンキリだ。


「ミニブーケみたいな形にして、帰りに持って帰って貰えるようにするのは如何でしょう」

「それは良いかもしれないですね。大量にお花が残っても大変ですし」


 招待客にも喜んでもらえて片付けも楽になるなんて素晴らしい。クロスの色が深い紺色なのでそれに合うように白や黄色を基調としたブーケを花屋に「お任せ」で頼むことにした。こういうことはプロに任せるのが一番なのである。


「あとは服装ですが……私はスーツで良いとして、リッカさんはドレスですよね」

「え!ドレス!」


 自分の服装について全く考えていなかったリッカは雷が落ちたような衝撃を受けた。確かに、これだけ立派なお披露目会に普段着で臨むはずがない。ワンピースはカジュアル過ぎるし、やはりパーティードレスが必要だ。


「私、ドレスなんて持ってないです!」


 ドレスどころかワンピースですらご無沙汰だ。


「では作りに行きましょうか」


 リッカの返答を待っていたかのように宝石商がニヤリと笑う。


「え?ドレスって作れるんですか?」


 買うではなく作る。リッカは思わぬ言葉に素っ頓狂な声を出してしまった。


「最近は服飾業界にも造形魔法の進出が進んでおりまして、オーダーメイドでドレスやスーツを仕立ててくれるちょっとお高い店が流行っているんですよ。

 私のスーツもそこで何着か仕立てていて、リッカさんのドレスにどうかなと思っていたんです」

「そんなお店があるんですね。確かに造形魔法なら個人の体型に合わせた形を作りやすいから服飾とも相性が良さそうですし」

「そうなんですよ。実は明日店に予約を入れてあるので行ってみませんか?」

「相変わらず手際が良いですね……」


 なんだか宝石商の手のひらで上手く転がされているような気もするが、それはそれとしてどうやって造形魔法で服を作るのか見てみたい。宝石商の提案に乗って翌日ドレスを作りに行くことにした。

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