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【完結】夜の装飾品店へようこそ~魔法を使わない「ものづくり」は時代遅れですか?~  作者: スズシロ
4章

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新店舗の完成

 年が明けてしばらく経った頃、リッカの元へ新店舗が完成したという報告が舞い込んできた。「見に来ないか」と誘いを受け、嬉しい知らせに心を躍らせながら新店舗へと向かったのだった。


「わぁ……!」


 建設中に何度も足を運んでいたが、外の覆いや足場が外された姿を見るのは初めてだ。白い石造りの三階建ての建物は重厚感があり、まるで高級店のような佇まいをしている。店の入口にはまだ看板が掛けられておらず、そこにはまるで眠りから覚めるのを待っているかのような静けさがあった。


「お待ちしておりました」


 店の扉が開いて宝石商が手招きをする。


「凄い、凄いです」


 何か喋ろうにも言いたい事が多すぎて「凄い」という単語をひたすら繰り返してしまう。


「中はもっと凄いですよ。さぁ、どうぞ入って下さい」


 リッカは宝石商に促されるままに店内に足を踏み入れた。まず目に入ったのは落ち着いた色合いの木材が敷かれた床だ。綺麗に磨かれた上からコーティング剤を塗ってあるのか、鏡のように光っていて美しい。


 壁にはリッカの希望で「夜の装飾品店」らしい深い紺色の壁紙を配し、天井には金の塗料で星や星座を拵えた。照明には小さな星形のペンダントランプを吊っていて天体モチーフで統一した形だ。


 入り口側の壁には大きなショウウィンドウを配置し、季節ごとのディスプレイを楽しめるようになっている。入口から見て耐火ブースや水場などの作業スペースを作り、その他の壁面に沿ってディスプレイ用の棚を配置した。


「如何ですか」


 宝石商はぽかんと口を開けて内装に見惚れているリッカに声をかける。


「いや……想像以上でした。本当に良いのでしょうか。こんな素敵なお店……」


 自分のブランドイメージに合ったフルオーダーの内装。なんて贅沢な仕様なのだろう。それだけではない。広い耐火ブースに広い水場、作業スペースもたっぷりだ。職人としてこんなに嬉しいことは無い。


「ここはリッカさんのお店ですから。次はこちらへどうぞ」


 呆気にとられているリッカの手を引いて店舗間に作られた通路を通り宝石商の二号店へ移動する。


「こちらの内装もかわいいですね」


 一号店の昔ながらの内装とは違い、女性にも好まれそうなお洒落な内装だ。床はリッカの店と同じ木張りで壁紙は暗めのグリーンと金のストライプだ。天井にはシンプルなシャンデリアが吊ってあり、レジの横にショーケース、その奥と壁際に沿って大きな棚が並んでいる。まるでカフェのような内装だ。


「一号店よりも気軽に入って頂きたいのと、通路で繋げてあるリッカさんのお店の雰囲気と合わせた方が統一感が出て良いかなと思いまして。

 あと、空いているスペースでカフェのような物をやっても面白そうなのでそれも考慮した内装にしています」

「カフェですか?」

「はい。在庫管理は二階の倉庫で行うので、そんなに陳列スペースを取る必要が無くて。余ったスペースにお洒落な椅子と机を置いてクッキーと紅茶を楽しめるようにしたら面白そうだと思いませんか?」

「なるほど……。宝石カフェみたいな感じでしょうか」

「ええ。夜市でのクッキーが好評だったので、新しい客層を取り込む意味でもやってみようかなと」


 夜市で販売した宝石クッキーは蜃気楼通信(ミラージュ)で話題になったこともあり思いのほか好評で、それを新店舗の話題作りと集客に活かそうという考えのようだ。机と椅子はお客様とのちょっとした話し合いにも使えるし、空いたスペースの有効活用という面でも良いのではないだろうか。


「込み入った話は二階の応接室を使えば良いですし、椅子と机を移動させればプチ展示会なんかも開けそうなので臨機応変に色々試してみようと思っています」

「実験店みたいな感じですね」

「はい。天然の宝石販売に代わる販路を見出すための二号店ですから」


 再生石の販売や修理事業もその実験の一つである。とにかく商売になりそうな物は一通りやってみる、というのが宝石商の信条らしい。


「では、次は二階へどうぞ」


 奥にある階段から二階へ上がる。二階には小さな応接室が二つ、従業員用の休憩スペースと調理スペース、それに在庫を置いておくための倉庫がある。応接室はリッカの店との共用で、それぞれの店から二階に上がれるよう階段も別に備え付けられていた。


「お客様との大事なお話や、大きなお金が絡むような商談はここで。防音魔法がかけられているので安心してください」


 続いてはリッカ達の住まいとなる三階だ。三階へは二号店からの階段でしか行けないようになっており、普通の鍵に加えて魔力認証式の鍵を付けてあるので安心だ。


 三階の扉を開けるとまずは玄関、玄関から繋がる廊下の左右の扉はトイレや洗面所、風呂場に繋がっている。リビングの奥には宝石商がこだわり抜いた大きなキッチンが備え付けられており、すでにいくつか調理器具が並べられていた。


 リビングの左奥にある扉はコレクションルームに繋がっている。防犯魔法がかけられているのでセキュリティ面での心配はなく、安心してコレクションを並べることが出来るのだ。


 リッカ用と宝石商用の大きなガラス棚がいくつも並べてあり、椅子に腰を掛けてのんびり眺められるようになっている。


 リビングの右奥にある扉はサロンに繋がっており、その奥に寝室が二つ配置されている。サロンにはティーセット等を収納する棚とゆったりと座れるソファと机、コレクションを飾れるディスプレイ用の飾り棚などを置く予定だ。就寝前に語らう場所になればいいと宝石商が作った場所だった。


「家が広すぎる」


 二店舗分の面積をそのまま住宅にしたので二人暮らしするには広すぎる位だ。


(これって掃除が大変なやつでは?)


 広いのは有難いが掃除しきれるだろうか。そんな不安が顔に出ていたのか、


「今は自動でお掃除してくれる魔道具もあるので大丈夫ですよ」


 と宝石商は苦笑いした。


「あ、あ、そうなんですね!良かった!」


 掃除が苦手なわけではないが、お掃除担当の魔道具があるのならば有難い。今は一人暮らしなので日中はずっと製作をしていて気が向いたら掃除をする程度だったが、同居人が出来ればそうもいかない。とはいえ日中はずっと店舗にいるだろうからそこまで居住空間が汚れはしなさそうだが。


「気を張り過ぎず、気楽に行きましょう」

「そうですね」


 新しい場所での新しい生活。きっと躓くこともあるけれど、無理せずゆるく暮らしていこう。生活について話していく中で、一緒になったのがこの人で良かったとしみじみ思うリッカだった。


ついに新店舗と新居が完成しました。あとは引っ越しするだけです。

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