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氷の令嬢と、その婚約者の王太子~感情を凍らせるほどつらいことがあったなんてあなたには言えません。でも真実の愛を見つけた婚約を解消するといわれてしまいました。そんな私がした復讐とは?

作者: まひろ

『なあ、身代金目当てとはいえ、見てるだけなんてもったいなくね?』


『お前の趣味は知っているが今回はやめておけ、一応侯爵令嬢だぞ』


『ますますそそるな……おい』


 来ないで来ないで来ないで! 私は後ろに下がります。ああこれは夢だと……でも怖い、怖い、怖い。

 私は何度も何度も後ろに下がりやめてと頭を振ります。

 私の叫びは……。



「きゃ、きゃああああああ!」


「お嬢様? どうされました」


「いえ、なんでもありません、お下がりなさい」


 今日もまた夢を見た。あの時の夢だ。私はなんでもないと心配する使用人を下がらせた。

 あはははいつもいつも夢を見る。


「どうしてまた……」


 しばらく見ていなかった悪夢だと思う。

 私はこの夢を見てしまうと、いつも恐ろしくて飛び起きてしまう。


「……何もなかった。私は助かった。私は助かった、私は助かった、私は……」


 呪文のように私は唱える。あの時、寸前で私は助かったのだ。ええ助かったのだ! なのにどうしていつもこう……。

 男の下卑た笑みを思い出す。ああ頭が痛い、ああ……。


「……もうすぐ婚約式だというのに……」


 私は顔をあげる。どうしていつもこんな悪夢を見るのか、幸せになればきっと見ない。

 私はそう言い聞かせる……。




「すまない、僕は真実の愛に目覚めた」


「え?」


「リアナ、すまない婚約を破棄してくれ」


「私、私……」


「氷の令嬢、と言われる君には信じられないかもしれないが、感情の一つもあらわさない君に隣にいられると僕の心まで氷になりそうなんだよ! 耐えられないんだ!」


 氷の令嬢とは私につけられたあだ名、私は笑わない泣かない、無表情、愛想のない女として知られていました。

 12歳のあの時から。


「私、心がないなんてことは、今もとても悲しいです。でもそれをうまくあらわせないだけなのです前に申し上げた通り!」


「12まで普通に感情をあらわしていたのに、どうしてそれ以降あらわせなくなったんだ?」


「それは……」


 言えるはずがない、傷物にされかけた、いえもう話をすれば傷物にされたと認定されてしまう。

 そんな話を婚約者であるあなたに!


「言えません……」


「そうだろう! もう耐えられないんだ!」


 愛する令嬢がいるといわれて、その人が後ろからやってきました。ひまわりのように優しい笑みをするご令嬢でしたが、どうして笑っていますの?


 私は何も言うことができず婚約を解消されました。

 世界はそこからますます暗黒になりました。



「すまない、どんな医者に見せてもお前の心は……しかしわが家のことを考えてみてくれ、お前が傷物にされかけたなどと……」


「わかっています。誰にも言ってませんわ」


 私はお父様に言いました。だって私は12歳の時誘拐されて、その男たちに傷物にされかけた女、寸前で助けられたといっても……。男のあの息遣い、そして……。


「次の婚約者を探す」


「私もう……」


「解消したのは殿下からだから、お前には罪がないと言っていただいた、侯爵令嬢が婚約者がいないとなれば恰好がつかん」


 誰も私の心なんてわかってくれない。お父様に私は頷きを返すしかできませんでした。

 世界は本当に残酷ですわ。泣けません、こんな時にも……。


「……どうしても許せない」


 私はもうどうなってもいいと思い、部屋の窓から身を投げようとしました。するとばさっと羽音が聞こえ、ねえねえと話しかける声がします。


「死ぬ前にその願いをかなえてあげるよ」


 私は羽音の主を見たのです。それは……。


「悪魔?」


「君の絶望をくれたら、あいつらをどうにかしてあげるよ。君の心の傷を無視して、事実を隠ぺいする父親、傷物にされたと娘を無視する母親、感情がない女なぞ愛されないという君の元婚約者! 憎いだろう?」


 私は現れた黒髪、黒い目の男にある翼を見て、ああ悪魔だと悟ります。

 でも死のうと思っていたくらいです。もうなんでもいいのです……。私はその提案に頷いたのでした。


「満足?」


「……ええ」


「君にひどいことをした男たちは討伐されたけど、黒幕だった君の父親の政敵も消しさった」


 私は目の前に広がる光景を見ます。私は殿下とその浮気相手とやらが震えながらこちらを見ていても何も感じぬ自分を自覚しました。

 ああ私は絶望とそして弱さを……。


「うふふふ、あの顔! あの情けない顔、あははははははおかしい!」


「さあ、どうやって殺す?」


「うふふ、そうですわね、少しずつその体を切り取って、あの炎に……」


 城が炎に包まれています。お父様もお母さまもすべてもういません。私が消しました。この悪魔の力を使って。

 私は氷の令嬢ですもの、何も感じません。


「うふふふふ」


「助けてくれ、僕が悪かった!」


「助けてください!」


 私は助けてあげませんわとにっこりと笑い、血の玉座から二人の死を命じました。

 氷の令嬢は世界を憎む、なら本当に私は氷となって見せましょう。血の饗宴の始まりですわ。

 命乞いする二人を笑いながら私は見たのでした。


読了ありがとうございます。広告の下にある【☆☆☆☆☆】を押して評価してもらえると嬉しいです! 執筆の励みになります!

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