ひみつクラブ結成!
この世界には大きな陰謀が動いている。色々なドラマで見た事ある設定だ。俺は画面の向こうの世界に憧れを持たない。陰謀に巻き込まれるなんて真っ平ご免だ。それなのに、あの時聞いた事が耳から離れないのは、首を突っ込もうとしているのは、一体何故なのだろう。
灯里にその事を伝えると、驚いた様子ながらも小言でこう言った。
「えっ…。それってもし陰謀だとしたら、マズいんじゃない?」
「そうだよ…、でも先生に言っても信じてくれないな」
灯里はそれならと言ってこう返した。
「先生がダメなら…、先輩に聞いて周るのはどう?」
「先輩に…?」
灯里は他のクラスメートには聞こえないように俺に近寄って、耳打った。
「先輩なら、私達よりもここの事知ってるはずだし、私達に親身に話してくれると思うの。そうだ、海斗、部活がない日って分かる?」
「水曜日は毎回無いって先輩言ってたけど、まだ本入部前だし…。そうだ、灯里は結局何部に入ったんだ?」
「悩みに悩んで…、家庭科部にするよ。先輩優しいし、保健委員もあるからあまり忙しく無い方がいいなって」
灯里は家庭科部は忙しくないとか言っているが、それは単純に活動時間が短いだけの話だ。文化部も、部活によっては夏休みにかなりの時間を割いて参加するものだってある。家庭科部だって例外ではない。
「でも、夏休みから文化祭の準備するって言ってたぞ?」
「へぇ…、そうなんだね」
灯里は、納得したのかしてないのか、突然席から立ち上がった。
「ユキも誘ってみるよ!」
「灯里!待てよ!」
灯里は俺が止める暇も無く、雪音が居る教室へと走ってしまった。灯里は、一度決めた事を行動に移すのがとてつもなく早い。その実行力は羨ましくもあり、呆れる程でもある。
結局俺は、灯里を止める事も出来ず、更には雪音まで巻き込む事になってしまった。そして、人気のない教室に三人集まって、話をする。
「それじゃあ毎週水曜日、ここに集まろう!」
「そんなに勝手に決めて良いのか…?」
元々自分が言い出した事のはずなのに、何故か灯里に勝手に決められている。煮えきれない思いはあるが、それがいつもの事だから仕方ない。
俺は、灯里を無理に説得するのを諦めて、二人に起こった事の大まかな概要を聞かせた。その後灯里は、俺が予期しない事を言う。
「名前どうする?これは部活じゃないから別の名前にした方がいいんじゃない…?」
俺はいつもの幼馴染で集まっただけど思い、名前を付ける事なんて考えなかった。名前なんて思いつかないと頭を抱える俺の横で、雪音が手を挙げる。
「それじゃあ…、日向丘ひみつクラブなんてどうだ?」
すると、灯里が雪音を指して頷いた。
クラブ、そういえば小学校の時にクラブ活動があったっけ。このひみつクラブはそれに近いものにするのだろうか。
「日向丘ひみつクラブ…、良いね!それじゃあ来週から始めよう!」
「何で灯里が仕切ってるんだよ…」
体育委員で男子をまとめるのが得意と言われる俺も、灯里の口には負ける。
男は強いとよく言われるが、それは腕っぷしだけな事が多い。灯里と雪音を見る限り、女子の方が芯の強さというのがある気がする。
そう考えてるからか、灯里と雪音以外の女子とは距離を置いている事が多い。最も、男子と女子の隔たりが無い時代はそうではなかったが、今の俺はそうだと思う。
もうすぐ昼休みか終わると思った俺達は、その教室を出て自分のクラスに戻った。ひみつクラブで先輩に調査するというものの、俺は長居先輩以外の先輩の事をあまり知らない。ひょっとして、灯里は知ってそうな上級生を手当たり次第に回るつもりだろうか。俺は、灯里の無計画さに呆れていた。