タイムカプセル
授業が終わって部活を終わらせて、残りの仕事を片付ける。そして、一人校庭に出る。
「今日文治が来るはずだよな」
僕は、校庭にある大きな桜の木の根本に立った。すると、何人かの人が集まってきた。
この日向丘中学校を卒業した時、僕達は校庭の隅にタイムカプセルを埋めた。本当は、今日みんなが集まって掘り起こす予定だったが、忙しくて中々集まらない。そんな中、何人かの元クラスメート達が集まってくれた。
その中の一人が、僕の親友である西脇文治だった。文治は、大きなスコップを取り出して、根本を掘る。
「同窓会の時にでもやれば良かったのに」
同じく同級生だった関本春奈がそう言う。
タイムカプセルは大きなカプセルの中に、一人一人の名前を書いた小さなカプセルが入っているものだった。
「みんなに見せてあげたいね」
文治はそう言って携帯電話を取り出して、タイムカプセルの中身を撮った。そして、一つ一つ取り出してカバンの中に詰め込む。
「忙しくて来れない人も居るから、俺が郵送しとくよ」
「ありがとう」
「それで、教助は何を埋めたの?」
僕は二人の前でカプセルを開けた。
「僕は未来の自分へ手紙を書いたんだ」
僕はその手紙を読んだ。その手紙の中には、未来の僕は元気にしているのか、先生になっていますか、と書かれてあった。僕はその手紙を畳んで二人を見つめた。
「あの時の事は、今しか出来ない。だから、自分のクラスが三年生になったら、タイムカプセルを埋めようと思うんだ。みんなに思い出が形になる瞬間を味わえさせたいからさ」
「それは、良い考えね」
僕は、手紙をシャツのポケットの中に入れた。
そして、あの頃と同じように三人で一緒に帰った。最も、帰る場所は三人とも昔とは違うのだが。
「まさか教助がこの中学校で教師をやっているなんて、信じられないわ」
「みんな、生徒でもあり、良い後輩達だよ」
僕はそう言って校舎を見た。確かに、僕達が中学生の時から、この校舎は変わらずそこにある。
青春は、過ぎてみて初めてそれが青春だったと分かるものだ。あの頃は一瞬で過ぎた日々が、今はどれも懐かしくて、愛おしい。この校舎で三年間過ごした時間が、今では何よりも大切なものになっている。
部活で忙しかった時も、卒業して全く来なくなくなっても、この日向丘中学校は、変わらず日向川の近くに立って、生徒達を迎え、見送っていた。僕も、その校舎に見送られた人の一人だ。教師になってから忘れかけていたが、久し振りに同級生に会った事で思い出した。
そして、また明日から自分達の生徒達を迎え、見送る存在にならなければならないと思うのだった。




