河川敷で
もうすぐ夏休みになると、先生は言っていた。夏休みは、大会もあるし、叔父さんの手伝いもある。また、読書感想文や絵の宿題に頭を悩ませる時でもあった。
夏休みになる前に叔父さんに電話してみた。今年も、畑の手伝いに来ていいよという話だった。夏休みも両親は忙しく、家を空ける事は多々ある。叔父さんの家から学校までは遠いが、それでも歩いて行けない距離ではない。
俺は、休み時間にずっと配られた夏休みの宿題をしていた。サッカー部は、大会に向けてまた練習が始まったし、家に帰ってからも何となく時間がない。俺は、剛也や真司とも話さず、宿題に集中する。すると、灯里が俺の席に近付いてきた。
「海斗ってさ、自分本位なのに、自分に自信ないよね?」
どういう意味だろう。確かに俺はいつも自分中心に考えていると思うが、自信がないように俺は捉えられる事をしているだろうか。俺がそう考えると、灯里がこう続ける。
「あれだけ色んな事出来るのに、どうして自信がないように見えるの?」
確かに俺は、学校の教科なら、美術以外は卒なく出来る方だ。
だが、それだけで色々な事が出来るとは思っていない。
「俺、自分が出来る奴だって思ってないから」
俺がそう答えると、灯里は納得したような、していないような顔をした。
「ふうん…、そういえば、今年の自由研究は何するの?」
「いつもやってる天気図、技術家庭科は技術で、木で工具箱造ろうと思って」
「へぇ…、もしかしてまた叔父さんの所に行くの?」
「そうだな…」
叔父さんの家にまた行ける事を俺は楽しみにしていた。
「叔父さんの事、好きなんだね?
「まあな…」
はっきり言って、叔父さんの所に産まれたかった。両親は、特に父は俺に期待をかけているような気がする。
叔父さんは、俺が自分の子供ではないから、無理な期待を掛ける事もないし、昔の自分の事を教えてくれる。
もし、叔父さんが俺の父親だったら、その叔父さんも俺に期待を掛けるのだろうか。もし、そうなら叔父さんは叔父さんのままでいて欲しいと思う。
チャイムが鳴ると、俺は宿題を片付けて、授業の用意を出した。この時期になると、授業はあまり進まず、夏休みの宿題や、課題考査の事、それから二学期の話になる事が多い。科目によってはなかったり、あっても夏休みの宿題をする時もある。
俺のクラスは、美術が無かった。宿題も厚紙を配られて、鶴居先生から少し説明があっただけで、それ以外は特になかった。甲賀先生の居残り授業を受けたばかりで、会いたくなかったから、丁度良かったのだが。
今日は珍しく学校が早く終わったので、河川敷の方に寄り道しに行った。恐らく、今年もそこで絵を描くのだろう。あの青年に会って以降、絵を描く時は河川敷を選んで描いている気がする。
俺は河川敷にあるベンチに座って、一休みした。日向川は今日も穏やかに流れていて、近くの公園では子供が遊んでいる。
それを見て帰ろうとベンチから立ち上がったその時、横で同じように休んでいる人を見かけた。その顔には、見覚えがあった。
「亮…、何でそんな所に居るんだ?!」
見慣れない制服を着て、顔立ちは少し大人になったが、間違いない。あいつは、俺の一番の親友だった亮だ。会いたいとも、会いたくないとも思った亮に出会った俺は、一瞬震えて、固まってしまった。




