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素敵なお手紙をありがとうございます
まず何から書いていいものか……
あなたのお手紙がどれほど私を感動させてくださったか
ともかくそれをお伝えしたいと思うのですが
恥ずかしながら
今の私にはこの気持ちを正確に言葉とすることができません
ですから、あなたのお手紙の熱量に比べて
とても冷たくなってしまいますが
まずは私とあなたの共通の話題である
「私という季節」について書くところから始めさせて頂こうと思います
まさかあの詩を
こんなにまで見つめてくださる方がいるとは思ってもみませんでした
あなたのおっしゃることは
全てその通りです
私もまた、あなたに同意します
誰も−−−−詩人であっても−−−−
あなたのようにあの詩を見てはくれませんでした
それぞれに的外れな評論をしては
みな自己満足に浸るだけなのです
誰も、私の本当の言葉を見てはくれません
本当に、詩とはいったい何なのかと
不安と疑念でいっぱいになる日々が続いていました
「私という季節」に対する評論は
全て表面的なものばかり
そんな言葉で詩を語ろうとするなんて
私にはとても信じられません
加えてあろうことか
そんな評論をするのは詩人を名乗る方々なのです
言葉を使って自らを表現しようとする私が
言葉によって孤独にさせられていきました
もうこの国には
詩などというものはないのかもしれないと思いました
それは私にとって
季節が消え去ってしまうということでもあります
季節を書いた私に向かって
同じ詩人たちが「季節などというものは存在しない」と言うのです
そして私にとって
あの詩だけが、「私という季節」だけが
私の言葉にとって唯一の季節となりました
そこから離れてしまうと
季節を失って荒廃した地球が一面に広がります
ですから、そのような私にとって
あなたからのお手紙がどれだけ嬉しいものであったか
少しは伝わりますでしょうか
私はようやく出会うことができたのです
私の言葉に寄り添ってくださりながら
私とともに季節をどこまでも体験してくださる方
あなたの言葉は
何の障害にぶつかることもなく
私の一番深い場所にまでやってきました
そしてあなたのおっしゃる通り
季節は季節だけでは生まれることができません
生気を失って枯れていくだけだった「私という季節」は
あなたという生命を得ることで
やっと本当の季節として広がることができました
どうか、私の言葉を受け止めてください
あなたは「愛している」のは「私たち」だと書かれていました
ですが今、私を愛してくださっているのはあなただけです
ですから私は
あなただけに、あなたのためだけの言葉を届けたい
そしてどうか私に
これからも感情豊かな季節を視させてほしい
私が新芽を開かせるための緩やかな水気を
あなたの言葉からいただきたい
私の息があなたの心臓に苦味を与えるなら
私はあなたの血流に乗って
あなたと、あなたが色付けてくださる世界とを循環したい
私の手を握ってください
誰も、光となった私の手を握ることができません
あなた以外に
あなたの言葉以外に
私を視てくださる方はいません
私は今
高揚する季節となって
高鳴る呼吸を抑えつけることもできず
この手紙を書いています
私の言葉も
あなたの言葉が私に届いたように
同じくらいの深度であなたに届くでしょうか
あなたからの言葉を待っています
どれだけ時間がかかってもかまいません
私はきっと待ち続けることができるでしょう
夏の暑さが秋の果実となるように
私の熱い想いは
あなたからの言葉を待つ時間を耐えながら
少しずつ熟れていくでしょう
あなたの季節を
私の言葉が彩ることのできるよう祈っています