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神の名のもとに〜異世界と現実の狭間に生きる〜  作者: 麒麟燐
第二章 王政奪還編
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第五話 試練地へ赴く


 4月23日、火曜。

 朝7時。


 悠斗は外出準備を整え玄関に立っていた。

 今日の朝8時に東京駅集合。

 そう美楽に支持されたが、何故東京駅に集合なのかは理解できなかった。

 悠斗の家からかなりの距離があるので正直もっと近場での集合を提案したかった。


 そして、悠斗と共に軽装で身を軽くした悠斗の選んだパートナーもその隣に並ぶ。


 その二人以外は今日も元気に登校する必要があるためいつも通りの時間に起床し、そのついでに悠斗たちの見送りとして玄関先まで来ていた。


「それじゃあ行ってくるからな」


 家事等は任せたぞの意味を強く込めて言った。


「うん……」

 自宅待機(登校はするが)のメンバー、エリカが物悲しそうに悠斗を見送る。

「がんばれ」

「頑張って、なの」

 そこに並ぶ黒金姉妹もそれぞれ激励の言葉をくれる。


 そう、悠斗のパートナーとして選ばれ、悠斗がパートナーとして選んだ一人とは――


「それでは」


 偽妹、ノア。


 理由は様々だが、やはりテレポート能力の存在が強く影響している。

 いついかなる状況でも、ノアさえいれば逃げることは可能だ。近くにいると最も安心できる。


 無論、エリカからの反感は強く買ったが、「家事をお前に任せる、お前だから任せるんだ」と信頼している風に誤魔化すと何とかなった。

 案外チョロい。

 いや、予想通りチョロい。

 それでも現在の彼女の様子の悪さは否めないが……それは想定の範囲内だ。

 これは仕方のないことだと割り切ってもらうほか無いが。


「気をつけてね」

「……おう」

 エリカの感情を抑えた言葉に軽く頷いてその場を離れた。


「よし、エリカ、朝飯どうすんだ」

 2人の出発を見届け何故かやる気を見せた白翼が拳を打ち合わせた後、そう聞いた。

「うん、いつも通りに学校だね」

 割と機嫌も良くて助かったと安心しつつ白翼は居間へと向かう。

「まずは朝ごはんなの」

 食卓には悠斗が用意した定常の神本家の朝食の数々が3人分揃えてあった。

 各々席につき、早めに食事を済ませるといつも以上に焦りながら身支度を済まし、いつもより少し早くに登校した。





           *****





 東京駅周辺ともなるとノアのテレポートでの移動は一般人に見つかる危険性が高いため電車の乗り継ぎで行く手段以外にない。

 いや、悠斗だけなら走ってもいいが……。

 とにかく、そんなわけでノアと悠斗は2人でこれからの試練に緊張しながら東京駅正面口へと向かった。


 試練内容、試練と健祉の関係、八咫鏡、八尺瓊勾玉、三種の神器、ヴェルディア・ミラー……。

 頭に浮かぶ様々な要素。

 考察しても理解の及ばない複数の単語たちに頭を痛めているうちに東京駅正面口へと到着した。


 通勤時間と丁度かぶる時間帯、人の往来がそこら辺の電車の比ではない。

 人混みに紛れ、酔いそうになりながらふらふらと彷徨い何となく「東京駅」の石碑の前に来た。

 その悠斗の直感か何かが功を奏し美楽と絵美に合流できた。

「おはよ、時間ぴったりだね」

 絵美の軽い挨拶に腕時計を見ると8時00分を指していた。

「はい、まあ偶然ですけど」

 出会えるかすら不安で仕方なかったのだ、当然意図的に合わせたわけではない。


 そして一度2人と距離のある位置で止まり、2人の私服を観察してみた。

 絵美は美楽の指示どうり軽装で、運動がし易そうな格好だったが、当の美楽はラフな格好ながら所々にオシャレを意識した装飾品が見られる。

 因みに悠斗とノアも先の供述通りオシャレさは微塵も含んでいない。


 美楽が悠斗の視線に気恥ずかしそうにするのを見て絵美が楽しんでいた。


 分析が終わると悠斗は2人の前までノアと共に歩み寄る。

「えっと、それで、これからどこへ?」

 ここへは遊びに来たわけではないことは言うまでもない。

 そして無意味に集合場所をここに決めたわけでもあるまい。

 おそらく、これから電車等を使った移動でそれなりに遠くへと足を運ぶことになるだろう。

「はい、お金と時間はかかりますが、伊勢神宮へ行きます」

「なるほど……」

 地名を聞くと納得した。

 八咫鏡の奉納場所として知られる観光地だ。

 そこからどう異世界へと繋がるかは美楽に任せるとして、できれば交通費と時間を削減したい。

 そう願い、悠斗は隣を見る。

「すみません、私伊勢神宮へ行ったことはなくて」

「……そうか」

 ノアが悠斗の視線の意味を理解し答えてくれた。

 悠斗の期待には応えられなかったが。

「でも、出雲大社なら行ったことあります」

「いや、別にそこはどうでもいい」

 関連のある観光地で意地を張るが出雲大社は目的地でもその途中にもない。

 途中……?

「あっ、なら伊勢神宮までの道のりのどっかに……」

「悠ちゃん悠ちゃん、焦るのはわかるけど落ち着いて、冷静に、深呼吸して、美楽に抱きついて」

 逸る悠斗の心を落ち着かせるため絵美が動作を指示する。

 最後の指示以外は聞き入れ、冷静になる。

 悠斗はサラッと流したが、美楽は少し赤面して絵美に弱々しい抗議をしていた。


「ほら、美楽、説明説明」

 美楽の抗議も沈静化させ話の進展を促す。

 美楽は少し膨れながら、絵美を見つめた後対面する2人……主に悠斗を見ながら説明を始める。

「時間はどうしようもありませんが、お二人の交通費は私が出しますから、あまり気になさらないでください」

 そう穏便に事を済ませようとするが、悠斗には逆効果だった。

「いや、それこそ無理ですって……いくら依頼人だからって、そんな巨額……」

 東京から伊勢までの交通費は一端の高校生がホイホイと払えるほど安くはない。

 自分のものに加え、ノアと悠斗のものもとなると額が3倍にまで跳ね上がる。

 流石に見過ごせない。

「うん、悠ちゃんの心配は最もだね。でもテレポートする先に人が多いと結界があっても見つかる可能性が出てくるし、こっちの方が無難だと思うよ?」

 悠斗の憂慮を否定せず、しかし悠斗の案の欠点を知らしめる。

 悠斗が憂慮する事以上に、美楽と絵美が憂慮することの方が杞憂では終わらない可能性が高い。

「それは、そうですけど……」


「だよね、じゃあ行きは美楽にお金出してもらって、帰りはのんのんのテレポートで帰るっていうのはどう?」

「のんのん⁉︎」


 絵美が新たな案を提示するがノアが自分の新たなあだ名に驚愕する。

 悠斗も驚いた。


 今の絵美の提案を呑めば確かに美楽の支払う金額が想定の半額になる。

 悠斗たちが自腹で払えば更に安くなるが、ここで心理的現象が発生してしまう。

 極端な二例を出された後、その中間を狙った提案で人は妥協しやすくなる。

 よって美楽も悠斗も、当然ノアもその絵美の提案に乗っかる。


「それじゃあ行こっか、あと20分でのぞみが来るから」

 道順は完璧なのか絵美が先導して案内を始めた。



 所々で波乱もありながら、何とか伊勢まで辿り着いた。


 一応ここに順路を記す。

 『山陽新幹線のぞみ』で東京駅を出発。

 そして1時間40分ほどの時間をかけて名古屋駅へ到着。

 そこから徒歩7分ほどで近鉄名古屋駅へ行き、近鉄特急賢ISL(伊勢志摩ライナー)で伊勢市駅へ。

 その後はバスに乗り、降りたところから徒歩で向かい到着、と言った形だ。


「やっと着いた……もう12時だ」

 疲労感を完璧に露わにし、だあー、と息を吐く。

「これから試練なんだけどね」

 以前来た事があるのか、慣れたように平然としている絵美がくすくすっと笑った。

「なんだか……そんな気力も湧きません」

 ノアもグッタリとしてすでに疲労困憊といった様子だ。

 まあ、ノアの場合は富士山で騒いだりしたことも理由に含まれているが。


「そうですね……では時間も時間なので、昼食をとってから、というのは?」

 美楽が一度顎に手を当て思考する動作を見せるとそんな提案を持ち出した。

「あ、じゃあ賛成!」

 いいのだろうか……こんな幕開けで……。


 決定権はほとんど2人に委ねているので悠斗とノアは賛成以外の選択を知らない。

 よって、近場での昼食となる。


 昼食は折角なので伊勢の名物伊勢うどんを食べた。

 一般に見るうどんよりも明らかに麺が太く、見た目も醤油の色が濃いのか少し辛そうなイメージがした。

 だが、口にしてみると塩辛さは然程なく、まろやかな味が口に残る。

 見た目以上の柔らかさを持ち、辛味の少なさと共にかなり印象に残った。


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