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神の名のもとに〜異世界と現実の狭間に生きる〜  作者: 麒麟燐
第一章 人生開幕編
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第七十九話 王家の血筋


 12時半、神本家着。

 一行は一つのテーブルを囲い、エリカが指揮を取るように最も目立つ位置に座っていた。

 パーティー(作戦会議)については6時からの開催が確定し、それまでは各々の自由となったことは皆に伝達されていた。

 健祉、司、唯は自宅で準備等を済ませて再度ここへ来ると言っていた。

 それまでの間にやるべき事は済ませる必要があった。

 まず第一が、目の前のこの状況と繋がる大問題。

 第二はそれぞれ異なる。

 最優先事項はとにかく情報共有。

 「エリカ」という存在の程度を知る時間が必要だ。

「私は、ミスティア・エリキャス・スィースター。グラスティル王国の元国王の娘」

 エリカが似つかわしくない態度で重苦しく切り出す。

 話の腰は折るまいと、悠斗を中心に全員静かに耳を傾けていた。

 場を冷たい空気が支配し始める中、エリカは引き続き詳細を知らせ始める。

「政権交代が起こったのを知ったのは、悠くんも察した通りでこの前ここに来て初めてネットの記事を見た時」

 思い返すように机の一点を見つめるエリカ。それに釣られて悠斗も少し前を思い出していた。

 あの時のエリカの様子は鮮明に覚えている。

 彼女らしからぬ様相を悠斗は的確に指摘した。だが、何もないと誤魔化された。

 あの時の悔やみは複雑な形で残っているのだ。


「私がどこの家の人だろうと、今はどうでもいい事……なんでしょ?」


 エリカが分かったような口ぶりで4人を見回す。

 誰からの返事も、首肯も、ない。


「……私、実は家出みたいな雰囲気でここに来たから……」

「家出……」

 無回答を肯定と受け取り、話を進めるエリカ。その彼女の1単語を悠斗は無意識にリピートしていた。

 ノア、白翼、あーちゃんは困った顔で一度それぞれの顔を見合わせるが、何をいうでもなく無言を貫く。

「うん、色々あってね……」

 そこはやはり語らない。

 きっとまた10年前だろう。

 彼女が頑なに10年前の出来事に触れないのは、一体何が理由なのか。語ることによって世界の事象に乱れでも生じるというのだろうか。

 しばらくは10年前については無視する方向性で固めた方がいいだろう。

「だからまあ、確認し難かったんだけど、家族に電話してみたの」

 そこでエリカの顔が少し下方向に動いた。

 空気の変化に敏感な悠斗は、居心地の悪さに一度座り直した。

「お父さん、お母さん、兄さんたち……」

 親族を順に挙げていく。

「お前兄がいたのかよ……」

 腰を折らないと腹に決めてもツッコミ担当の性か……どうしても所々で口を開いてしまう。

 しかし、エリカのいつもの天真爛漫な様子を一度でも目撃していれば、一人っ子のように思えるのは納得できた。

 それは、聞き手側だけでなく、エリカ自身も。


 と、また話が脱線していた。


 とにかく、彼女が順々に親族を挙げた、それは即ち、その順に電話をかけてみたということ。

 そして連ねてあげる理由は――

「誰も繋がらなかった」

 悠斗の考察を見透かしたエリカが小さくゆっくりと、でも確実に頷き、答えた。

 政権交代して一週間も経たずして連絡の一本も取れない。

 そもそも、国王ほどの人間の後退後についてネットに上がらないはずがない。

 国王に関する情報が「政権交代した」のみであったのなら、その時点で不自然だ。何かしらの力が働いている。

 それも、国家を操作するほど強大な組織的な何かが。

 エリカもそれを承知していたはずだ。


「だからね、メイドに電話したの」


 と、ここで急激にエリカの声のトーンが明るくなった。

 同時に室内も急激に暖まり始める。

 彼女の面持ちや空気、それが直接世界に干渉しているような錯覚すら覚える。

「エリカのメイド……」

 流石悠斗、と言わんばかりの含みある呟き。

 彼は心中でこう思った。

 エリカのメイド……日々疲労に苛まれ、疲れが癒えずに辛いだろう、と。

 見知らぬ人に同情できた。

 そんな同情する悠斗をよそに……はしてないが、エリカは話を続ける。

「連絡がついたの」

 その時の安堵感が今この場の全員に伝染する。

 晴れやかな表情が全員を捉え、話が深くなり始める。

「どうやら私の家族はみんな王宮の牢獄に入れられてるみたい……あの人も言ってたし」

 メイドの持つ情報と、「あの人」の持つ情報を掛け合わせると信頼度は高いだろう。

「あの人?」

 ここまで疑問形を口にする事はなかった悠斗も、流石にその呟きには疑問符を浮かべた。エリカが信頼を置く誰かがいることを示す「あの人」の存在。

 だが、エリカの言う「あの人」とは、彼女が信頼を置いているというより、地位的に考えて情報の信憑性が強いという話だ。

 なぜなら「あの人」とは、先日エリカと一戦交えた相手で悪魔軍の幹部でもあるのだから。

「あ、ううん、気にしないで。それより、その時メイドが言ってたんだけど……」

 悠斗の疑問に少し大きくかぶりを振ると話題を戻した。

「国民の中にも不満を持つ人が多いみたいで……なんせ顔も出さないみたいだし、交代理由も分からないから、動揺してるみたいで……」

 声の調子は変わらないまま、表情だけをすこし陰らせる。

「そうでしたか……。私もグラスティルに家がありましたが……焼けてから全くなので」

 国内に住むものとして察知できなかったノアが予想以上に悪びれた様子で顔を顰めた。

 日頃は喧嘩していても、仲間想いなところがあるんだと改めて知ることができた。

「…………」

 あーちゃんがそんな会話の中、姉の横顔を見つめていた。

「…………?」

 それに気がついた悠斗が不思議そうにその憂い顔を眺めていると、彼女はハッとして静かに視線を逸らせた。

 首を傾げ、悠斗はエリカに向き直る。


「だから色々話し合って、王政奪還計画を立てたの」


 元気に声高に、揚々と告げた。

「…………マジかよ」

 反応は悠斗のその僅かな呟きと、全員の驚愕や動揺、困惑に揺れる瞳だけだ。

 全員理解は追いつく。

 正しく頭の中で言葉や意味は処理できている。

 だが、問題はそこではない。

 一度奪われたからと簡単に政権を奪い返していいのか、口で言うほど容易いことなのか、自身の安全性は考慮されているのか、などなど、様々な疑問や問題が浮かび上がる。

「それで、作戦会議は夜だし、それとかよりも先に……」

 突然な前置きが入り、全員が顔を見合わせた。

 席を立って数歩下がると、思いっきり頭を下げてこう頼み込んできた。


「みんな、私に力を貸して欲しいの――ううん、貸してください!」


 悠斗が全員に謝罪した時を思い出させるほど類似した環境だった。

 謝罪と依頼、内容こそ全く異なるものだが、なんだか同類のものと錯覚してしまう。

 もう一度傍観者4人は顔を見合わせる。

 誰かの苦笑がエリカの耳に届いた。

「今更感が半端じゃないな」

 悠斗の軽口にエリカが喜ばしげに顔を上げる。

「それって――!」

「いいんじゃね。多分こいつらも」

 悠斗がわざわざ他人に話を振る。

「いいですよ、私は。一応借りもあるみたいですし」

 ノアが過去の一件を口実に要請を引き受ける。

 エリカの目が次のものへと移動する。

「オレもまぁ、役に立つかどうか分かんねぇけど」

 最後の1人に視線が移る。

「私は……出来ることなら、なんでも」

 エリカの目が光り、口元が緩められる。

 小さな癖毛がピコッと跳ねて感激を表現している。

「てなわけだ、だから作戦参謀よろしくな」


「うん‼︎」


 今日の空模様と同じく、快晴のエリカが太陽よりも明るかった。

 色々会話が続いたが、エリカの表情が頭に焼き付いた悠斗はあまり内容を覚えていなかった。

 きっと覚えるほどの内容ではなかったのだろう。

 結局、自由時間は2時から5時の3時間だけだった。

 社会のノートの書写、白翼の数学課題の手伝い、机などの配置設定、そして心のゆとりを表すかのように少々趣味にと自由時間は有意義に使用された。





 第一章終わっちゃうぞー。

 あと一部あるけど!


 多分この一部はすぐ終わりますから、早々に第二章に突入しちゃいます。

 最近固定化してきた愛読者のみなさん。

 これからも支えてください。

 よろしくお願いします。

 評価については、もういいよね?


 あ、それと、次の前書きは二章の初めにかきますので。


 それではまた!


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