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神の名のもとに〜異世界と現実の狭間に生きる〜  作者: 麒麟燐
第一章 人生開幕編
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『第五部』 第四十八話 ケルベロス


 みなさん、こんにちは、麒麟燐です。


 これを読んでいるあなたに「こんにちは」は適切でしょうか?

 私は夜行性ですが、夜はそこそこ早いです。

 勿論、夜更かしを否定しているわけではありません。

 態々夜更かししてまで見にきてくれるのなら、光栄です。むしろもっと夜更かししてください!


 あ・ら・す・じ


 下校途中、謎の男2人に挟まれた悠斗たち。

 なす術なく魔界へと誘われ、目の前に現れたのは、地獄の番犬ケルベロス。

 今までとは比較にならない戦いに巻き込まれた悠斗達は、この場をどう切り抜けていくのか。


 第五部『魔界の小競り合い』開幕。


 読了後の評価等にご協力ください。




「――――ッッ!」



 耳を引き裂き、心臓を激震させる。青銅を引っ掻き擦れるような獣の雄叫び。

 三つ首の魔獣の爆音は声量も大きい上に、非常によく反響する。この洞窟での反響は天井や床の崩壊を心配しなくてはならない。


「――ッッ!」


 次の咆哮。

 さっきよりも短く途切れる代わりに、強靭な五つの煌く刃が悠斗たち目掛けて勢いよく振り下ろされる。

「ふんっ……」

 1人以外が身構え、躱す位置を模索していたがその1人の声と、発揮される力に構えを解いた。


「あーちゃん、ナイス」

「………………」


 悠斗の声に取り合わず目を真っ赤にして両手を広げている。能力の制御に集中するために言葉を返せられないらしい。返答無しでも、あーちゃんの答えを勝手に想像する。

 彼女が展開したバリアの中で身を集め、作戦会議を開始する。


「まずノア! 落ち込むな、状況は呑めないが取り返しに行く。だからお前も力貸せ」


 ノアを励まして奮い立たせる。気を引き締めさせるために背中を痛むほどバシッと叩き背筋を伸ばさせる。

 その鼓舞にノアも顔が次第に引き締まり、やる気を見せた。

「はい、すみません」


「ノアちゃん、あの人がテレポートした場所分かる?」

 エリカの質問に悠斗が顔をしかめた。

「いや、それは無理難題じゃねえのか?」

「そんな事ないよ。同じ能力者に同じ能力は通用しない、そう言ったでしょ?」

 悠斗の意見を否定するために過去の話を引き合いに出す。

 その言葉は確かに以前耳にしたのでコクリと頷く。

「テレポーターの場合は移動前から移動先が分かるんだよ。だから素のテレポーターはかなり優秀なの」

 なるほどそれで、と納得がいく。

 今までの疑念もちょうど解消されてスッキリする。

 以前からテレポートの能力者は道具のテレポーターがあれば存在価値がないと思っていたが、逆にその機器が流通する今の時代には効果的な能力と言えるだろう。

 そして、ノアがまさしく素のテレポーター。あの男がどの方角に瞬間移動したのかを確認できるわけだ。


「はい、あっちの方です」

「え、まじ?」

 ノアの示した方向に不信感が湧く。

 何故ならその指と視線の先は、忌まわしき魔獣が通せん坊する通路と真逆の通路――即ち悠斗たちの背後にある比較的突入し易い方だからだ。

「はい、間違いないです」

 自信満々に言い切るなら大丈夫だろう。

 きっと悠斗たちに勝手な思い込みをさせ、先入観という武器で時間を稼ぐ算段だったのだろう。だが、そうと分かれば怖くはない。

 このままノアのテレポートでその場まで行きたいところ。だが、それは不可能だ。

「ですが……私はこの世界を知らないので、テレポートは基本的に逃走手段としてのみにしか使えません」

「分かった」

 ノアの素直な告白に首肯し、この状況で唯一奮闘する現在赤眼の少女を見やる。


「……」

「あーちゃんのバリアはそう長くは持たねえぞ」

「――!」


 悠斗の視線から思考を読み取り、それが杞憂でないことを肯定する。

 バリアに関しての知識など、攻撃を防げる程度しか所持していない。それでも、あーちゃんの様子を見れば制限付きなことは分析できた。

 果たしてその『制限』がどこまで重たく伸し掛かるモノなのか……。


「細かな部分は人やバリアの種類によって異なるが、あーちゃんの場合は結構厳しい」


 白翼の苦い表情とその通告に思わず息を呑んだ。詳細についてはエリカとノアも分かり兼ねるようで、彼女の言葉にしっかりと耳を傾けていた。


「基本的にあのバリアは自分を中心にして、大小様々な円形を作り出すんだ。その際、バリアへの衝撃はある程度にまで削減されて能力者に蓄積する……今回は突然で、長時間張るつもりだったろうから、15分の1くらいだ」


 悠斗は大袈裟なほどに後ろを振り返り、懸命に手を広げた少女とバリアへの衝撃源を交互に見る。

 ケルベロスは包丁よりも鋭利な刃でバリアを引き裂こうとしたり、さらに強靭な腐った色が残る白い牙で噛み砕こうとしている。

 いくら15分の1に軽減できたにしても、少女――しかもどちらかと言えば軟弱なあーちゃんには大きなダメージになるだろう。

「早く移動しよう――」

「待って」

 立ち上がるために腰を浮かせかけた悠斗の焦燥の肩に触れて呼び止める。

「多分道はこっちで合ってるだろうけど、このまま私たちが逃げたら、きっとコレも追いかけてくる」

 冷静になるように促すが、今の言葉だけでは悠斗に上手く響かなかった。

「幅が足りないから追ってこれない」

「ううん、道を壊して追ってくるよ……多分」

 最後を曖昧な形で誤魔化しながら、自分の見解を述べる。

 その言葉に「うっ」と音を鳴らし、自分の甘い考えを早々に改めた。

 もし道を崩しながら追ってこられれば、天井が崩落し瓦礫に埋もれてしまう可能性が高い。


「なら……どうすれば」

 早速行き詰まった状況に頭を抱える悠斗。

「誰か1人が残るってのが妥当じゃねえのか?」

 白翼がそう提案してくれる。

 全員それ以外に発想がない。

「全員で闘ってたら時間が無駄だし……」

 更にそうとも付け加える。

 この流れから、白翼が1人残ろうとしているのは明白だった。


「オレが残るから」

「……いいのか?」


 揺れる瞳孔を向けながら、そう尋ねる。

 悠斗にも策がなく、誰かを頼ることしかできない。

 ここで悠斗が残れば後から追うことも比較的に楽だが、一人で戦える自信が無い。

 ノアは案件的に進まなければならないし、エリカは知識的にいてもらわなくては困る。結局この場に留まれるのは黒金姉妹のみ。

 折角の小さな立案を蹴って仕舞えば次なる手段は浮かばない可能性が高い。ならばここは白翼に任せるべきなのか……。


「……それで、いいな?」

 ノアとエリカに視線を送り最終確認を取る。2人とも一度ずつ頷くと、ノアだけが一歩前に出てもう一度深く頭を下げる。

「私のせいで、ごめんなさい」

「いや、気にすんな。持ちつ持たれつ、なんだろ?」

 過去の悠斗の言葉を操ってこの場を凌ぐ。ノアは現場にいなかったが、悠斗とエリカにはわかる。ならばそれだけで十分だ。


「お前だけは心配だから、あーちゃんも置いて行く。頼んだぞ」

 バリア展開中の少女もここに残して先を急ぐ。

 薄く煌めくバリアを突き抜けて後方にある通路に突入する。

 あーちゃんは意識の片隅に悠斗たちを置いて、その姿が見えなくなるまで能力を発動させ続けた。


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