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神の名のもとに〜異世界と現実の狭間に生きる〜  作者: 麒麟燐
第一章 人生開幕編
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第四十話 高待遇



 目の前に広がる風景。丁寧に配膳された5人分の朝食とそれを前に1ミリも動かず1人の少年とその付き添いを待つ3人。

 待ち人である2人の登場に室内の空気は一変し暗い表情は華やかな花へと変わっていった。

「お待たせ、迷惑かけたな」

 全員の不安を一蹴しようとそんな軽々しい挨拶から切り出す。

「悠くん! 大丈夫? 何か悪いとことか――」

「エリカさん、それよりも早く食事ですよ」

「そうなの、ご飯食べて元気なのー」

「さあお兄ちゃん、私が頑張って作ったごはんです」

 三者三様の反応に一度頷きノアの指示のまま自分の席へと着く。白翼もそれに続き悠斗の隣の空席へと腰を下ろした。

 皆が悠斗を気にかけていたのは不自然な挙動から明らかだった。


 食事を前にした悠斗はノアの笑みに苦笑いが出る。

 頑張って作ったごはんと言ったが、内容は単純すぎる。朝食用のパンをトースターで焼き、別の皿には目玉焼きと冷蔵庫から引っ張り出したであろう野菜のサラダが盛ってある。スープは多少頑張った感があるがその他は出来なければいけない常識レベルの範囲、頑張ったと言えるだろうか……。そもそもスープも悠斗的には常識だと思うのではあるが……。どう考えても失敗する要素も無い。それともう一つ、キッチンに見える家で一番大きいフライパンは何に使ったのだろうか。目玉焼きにこのフライパンは大きすぎだろう。


 しかし、悠斗の不在の中(恐らく)一人で努力したノアの期待を裏切れず盛大に褒めてやる。


「ありがとな、4人の中でお前が一番家庭的だよ」

 盛大とはいえど基礎能力から壊滅的なものが多いこの一団、家庭的の程度など高が知れている。

 それでも、彼女にとっては自分の腕っ節よりも悠斗に褒められ愛でられることが大切故に今の言葉一つで大きく跳ね上がる。

「やっぱり私が一番お嫁さんに向いてるって事ですね」

「安心しろ、それで決まったりしないから」

 いつもの調子であしらう悠斗の姿に安堵する一同。ノアだけは少し膨れていたがそれでも嬉しそうで何よりだった。

 ただ、白翼が「お嫁さん」の一言に紅潮している姿は面白く実に女子らしかった。


「ん、普通に美味しいな」

 唯一料理と言えるスープを口にし素直な感想を述べる。即席でない事を当然とするなら相当いい出来だ。たまにノアのスープを飲んでも良いほど美味である。その原因といえばやはり新鮮味だろう。毎度悠斗が食事を作るためスープや味噌汁、その他の料理も悠斗の能力と好みによって調整されている。担当者が変われば内容と風味が変化するもの必然である。

 とにかく、一週間に数度ノアに頼んでみようと思う。


「悠くん、それで乗り切れると思わないでね。これからはちゃんとこれ着ける事だよ」

 と、悠斗が感慨のようなものにふけっているとエリカに釘を刺された。どこから取り出したのか悠斗に装着させていたベルトを食事を跨いで押し付ける。

「うっ、悪かったよ」

「ちゃ・ん・と、反省してね。じゃないと私が悠くんのこと貰っちゃうから――」

「マジすまん、ちゃんと反省するからそれだけは勘弁してくれ」

「ぶーー、なんかひどーいー」

 エリカの気遣いは本当に有り難いほど上手い。

 忠告しながらふざけるが、それが相手にとって突っ掛かりやすい様に設定してくれているのだ。だからこそ悠斗も気兼ねなくその悪ふざけに甘えることが出来る。


 膨れるエリカの腹の中はやはり悠斗にも読めない。彼女は悠斗に好意を寄せている様に見える、がそれは果たして真実なのかも分からない。人を雰囲気やオーラ、気配だけで区別し心まで読み取れるほど能力は優秀ではない。

 何となくこうだ、こうではないと思う、こんな感じだった。

 結局はどれもこれも自己満足なのである。


「ほら、良いから()よ食え。あーちゃんなんか食べ終わってんぞ」

「ごちそうさまなのー」

「早っ‼︎」

 合掌し礼儀よく挨拶すると丁寧に食器を重ね台所へと運んでいく。その一連の流れを見たエリカは目を剥き驚愕する。

 あーちゃんはその後もう一度席に着き周りの完食を待機する。

「ノアちゃんのごはん美味しかったの、悠斗さんと合わせたらきっともっと美味しいの」

 天井の中を見つめる様に空を見上げると、そんな風に妄想にふけっていった。

「そんな、私の料理なんて……しかもお兄ちゃんと合作なんて、えへへ」

「えへへじゃねえよ、作る時は一人で作るからいいよ」

 悠斗と対角の位置にいるノアは身を捩らせながら照れ照れしている。今最も食が進んでいないのは圧倒的な差でノアだった。悠斗と白翼は間も無く食べ終わり、エリカもあと少し。だがノアは手以外の器官を動かし続け、一向に皿の上が空かない。


「ちゃんとパン食っていけよ。パン咥えて曲がり角で『誰か』にぶつかる的なシチュは要らんし、歯磨きしないやつは汚い」

 訳の分からん事を言って食事を催促する。それと同時に悠斗と白翼が完食し食器を流しへと戻しにいった。

「俺たち先に準備しとくからな」

 そう言って悠斗は洗面台へと向かう。

 その後を追い白翼とあーちゃんも食卓を離れて行った。


「……」

「……」

「ちょっとノアちゃん、悠くんにアプローチ掛けすぎだよ」

「エリカさんだっていっぱいしてるじゃないですか」

「メインヒロインなんだから私はいいの」

「誰がそんな事決めたんですか、それは理不尽です」

「料理だって私がしようと思ったのに」

「それはエリカさんがステーキなんか焼こうとするからですよ」

「それじゃあ今までのはノーカンで、通学までの間で勝負ね」

「いいでしょう」


 そんな馬鹿馬鹿しい会話を起点とし食事は速やかに終わりを告げた。



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