表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の名のもとに〜異世界と現実の狭間に生きる〜  作者: 麒麟燐
第一章 人生開幕編
39/117

『第四部』 第三十九話 朝が来た


 みなさんどうも、いつか輝く自分を想定してサインの練習をしている麒麟燐です。


 もう第四部。いや、まだ第四部?

 早いのか遅いのか分かりません。

 時の流れは掴めませんね。


 さて、それではあらすじ。


 白翼を半強制的に引き止めた悠斗。

 結局4人揃って仲良く過ごすことになるが、やはり平穏なんてあり得ない。

 学校生活中に動く者達。

 やがてその手は悠斗達にも届き、遂に物語が本格的に始まる。

 進出してくる様々な者とは?


 第四部、進出。



 読了後の評価等をぜひよろしくお願いします。


 …………………………。

 …………………………。

 …………………………。

 …………………………。

「…………」「――――」「…………」「――――」

「…………」「――――」「…………」「――――」

 ――――――――――。

 ――――――――――。

 ――――――――――。

 ――――――――――。

「………………?」

「………………?」

「………………?」

「………………!」

 ………………………………。

「………………‼︎」

「…………?」

「………………!……!」

「……?………………?」

「…………!…………‼︎」

 ………………。

「………………。…………?」

「……………………‼︎」

「…………?……?………………。……?」

「………………!……。………………‼︎」

「…………?」

「………………」

 …………………………。

 ――――――――――。

「……………………‼︎」

「…………」

「…………?」

「…………」

「――――!」「――――!」「――――!」

「――‼︎」「――‼︎」「――‼︎」「――‼︎」「――‼︎」

 ――――――――――――――――――――。

「――‼︎」

「――‼︎」

「――――――‼︎」

 ――――――――――。




           *****




「ハッッ‼︎」



 正体不明の幻覚か、はたまた曖昧模糊とした悪夢か。

 少年は漠然とした異界のモヤを振り払いこの世界に形を取り戻す。


「はぁ…………はぁ…………」


 悪魔を見たように顔面を蒼白させ荒々しく空気を欲す。

 既に脳内から色褪せた夢は中身を魅せてくれない。

 右手を額に合わせ汗を握る。

 何かを見た気がする。懐かしい声を遥か遠くから耳元に吹きかけられたような感覚だった、気がしたのに……。

 夢とは起床数分後には忘れ去ることが多いが、これほどまでに早い忘却が存在するのか……。悠斗は初めて夢の曖昧さを実感すると同時に、左手で柔らかい素材のものを強く握りしめた。

「…………」

 その手に触れた感覚は少年を確実に現実世界へと引き摺り込む。右手を額から離し視界を広げると世界をより多く視認する事ができた。

 少年の起こした上体より下には柔らかい物の正体があった。

「布団……」

 左手がグッと圧迫していたのは羽毛入りの掛け布団。

 少年が幼い頃から家に残っている数少ない品だ。

 違う、そんな事はどうでもいい。


 少年は何をしていた……? 寝ていていいのか?


 ゴチャゴチャと混ざり合った思考が氾濫しいよいよ整理が追いつかなくなる。

「ゆ、悠斗……起きたのか」

 体を突き抜けるほどの威力を見せる声。

 一瞬にして脳が整頓され自分がした事、自分の状況、自分のするべき事が浮かんだ。

 心が覚醒し目を大きく見開きながら隣に視線を移す。

 夢の衝撃が強力すぎて今の今まで目の端にも入っていなかったその姿。今確かに認識し胸の奥が熱を帯びてくる。


「…………」


 視線の先には悠斗と同じベッドに横になった白翼がいた。

 心配そうな表情で涙ぐんでいる。そう、どちらもだ。

 なんだかんだで似た物同士なのかもしれない。

「残ったんだな……」

 目元にグッと圧力を加え静かに呟く。

 驚きより嬉しさ、悠斗の感謝の意を込めての言葉だった。

 白翼のいる方と真逆を向き俯くと両手を強く震わせた。

「まあ……。あそこで逃げれねえしな」

 ベッドから身を下ろして悠斗の真横に腰を下ろす。

 悠斗の服は寝巻きだが白翼は違った。

 その制服を見て思い立ったように時計を見やる。

 時刻は朝の6時52分、学校がある今日は早くキッチンに着き料理を始めなければならない。真夜中に問題が発生し睡眠時間が確保できなかったとしても学校へはいつも通り登校しなければならないのだから。


 その使命に駆られ悠斗がベッドから這い出そうとするのを白翼が押さえ付ける。

 困惑する悠斗に力強い目で首を左右に振り訴えかける。

 言葉も必要とせず2人は意思疎通ができた。

 親切心に甘え上体をベッドに倒す。

「お前も降りなよ」

 白翼に背を向け壁と直面する。昨晩(正確には今日の朝)に見せた自分が恥ずかしすぎてまともに会話できない。

 その言葉で白翼は立ち上がりかけ……いや、ただの膝立ちだった。布団と服の摩擦音がしたかと思うと悠斗の右手に少女の両手が被せられた。

 悠斗が喫驚し身体ごと振り向くと2人の顔は見詰め合っていた。


「っ……!」


 いつもなら2人して目を逸らす場面。今回は悠斗だけが逃避する結果となる。

 白翼は悠斗の手を優しく包んだまま悠斗の後頭部を見続けていた。

「……ど、どうしたんだよ」

 壁に声を反射させて会話を始める。

 今までとは真逆の立場に違和感を覚える二人。

 そして悠斗は普段と様子の異なる白翼に当然疑念が生まれる。この時に最も危惧した事は夜の口論で変に思われたと言う事だ。


 いつもいつも変なことを口走って後からトラウマになる。アニメやドラマのカッコイイセリフは現実に起こすと非常に恥ずかしい。それを口にして仕舞えば黒歴史と化す。

 別に悠斗は、昨日の言葉はそこまで格好つけたつもりはないが。いや、寧ろ泣き叫んでいてとてもダサかった。

「オレは……今は出ていく気はない」

 不意に紡ぎ出された言葉は悠斗の脳を直撃し束の間の喜びを与えた。だが、その言葉に用意された抜け道に気がついた時逆に奈落に落とされたように錯覚した。

 『今は』出ていく気はない。これはつまり、以前はそんな事はない、またこれからも分からない、と言う意味を孕んでいると言う事だ。


「……」


 無言が不可解に思えた悠斗はもう一度ゆっくり振り返ってみた。するとやはり眼が合った。

 だが今度はしっかりと見つめ返す。


 すると――


「だからオレが逃げないように、その……ちゃんと捕まえとけよ」


 言葉に詰まった間だけ視線が逸れたがしっかりと眼を捕らえて離さなかった。

 両手に力を加え悠斗の手を圧縮する。

 手に力が加わるほど少女の顔は赤く染まって行く。

「…………ああ……、だな……」

 悠斗までも羞恥に頰を染める。


「…………」

「…………」


 2人の恥ずかしさレベルが最高潮に達した時、やっと視線を外し沈黙のひと時を味わう。

 時刻はまもなく7時を回る。

 白翼が昨日の続きとして悠斗に応えてくれたのなら、悠斗も白翼に応えるべきか。

 でも、なんて言えばいいのだろうか。

 悩み果てているとまたしても白翼から仕掛けてくれた。

「悠斗、オレはお前があそこまで必要としてくれるから生きてみようと思う」

 そんな決意に満ちた一言。

 そこへ更に付け加えたい様子。


「……でも、やりたい事ってのが分からない……。オレは……どうすればいい?」


 先の表情とは一変、未来が見えず不安の大きい将来。何を当てにし、何を目標に生きて行くべきか検討できない。

 考えてみれば今までの目標は「生きる事」であった。一般人にとっては当たり前のこと、その上でどうするかを決めるのが人生。「生きる事」の先にあった「生きる理由」が欲しいのだ。


 そしてそれを、他でもない悠斗に提案してもらいたい。

 「生きる理由」がある事を自分に知らしめた悠斗に。


「ふっ、そうか……。なら楽しく生きなよ」

 一度笑みを溢し考える素振りを見せる。

 そして、その笑いを保ちながら楽しそうに語る。

「楽しく……?」

「ああ。通う学校では楽しく勉学に励み、友達を多く作って、家では自分の好きな娯楽に触れて、将来は好きな人と付き合ったりして、とにかく自由に生きるんだ」

「好きな、人……」

 幾つも挙げた例のうちその一部分だけを抜粋し手元を見る。そこには自分の両手とそれに優しく包まれた悠斗の右手がある。

 数秒手の辺りに向けていた頭を更に下へ下へと落として行く。途中から視界に映り込むのはただの掛け布団。


「――? どうした?」


 苦々しい顔つきへと変化して行く白翼に疑問が生まれる。

 何か気に触る事を言ったか?と自分の言動を振り返る。

「……なんて言うか、言いにくいんだけどよ……」

 こんな風に切り出してきた。

「は?」

 唐突な文章に素っ頓狂な声が漏れてしまう。

 眼を思いっきり逸らせたまま言葉は続く。

「オレ、異性とまともに関わった事ないから……その……よく分かんねえけど……、多分、悠斗のこと…………」

 ここまでを恥じらいながらも言葉にした。しかしこの先の思いが届けられない。自分がこんなキャラでないこと分かり切っている。


 恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。

 熱い、暑い、熱い、暑い、熱い暑い熱い暑い熱い暑い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い。

 躊躇う。躊躇する。逡巡する。

 迷い、戸惑い、混乱し、両手がするすると自分の元へ戻って来る。


「……そう、か……」

 続かない言葉を推測し歯切れ悪く相槌のようなものを悠斗は打った。どこか物悲しそうに、そして自分を卑下するかのように小さく嗤い、離れていった白翼の右手だけを握り返した。

 自身の手が捕獲され羞恥と驚きに肩が跳ねる。俯いていた顔を何とか持ち上げると、肌を赤々と火照らせながら悠斗と視線を絡ませた。


「――ありがとな」


 悠斗は彼女にさっきの表情を見られなかった事を良いことに図々しくそう告げたのである。

 自虐の笑みを切り崩し自然のスマイルを面として被せる。

 己の卑怯さと非道さは反吐が出るほどだった。

「でも俺に好きな人はいないから、できたら教えてやるよ」

「なんか悪いな……」

 白翼は知っている、他の3人も悠斗に好意を寄せている事を。それと同時に白翼は知らない、悠斗がどんな意を込めて今の二つを贈ったのかを。

「お前も周りに負けないように頑張らないとな」

 白翼の正しい誤解を巧みに利用し己の裏を取り繕い誤魔化す。

 そうとは知らない気楽な苦笑が悠斗の心に深く突き刺さり酷く抉れた傷跡を残して行く。

「もう大丈夫だ。飯とか済ませて学校行こう」

「そうだな」

 悠斗は人生で初めて高校へと向かう意欲を見せたのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ