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コトバデール  作者: 美月
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希望の光?

人と関わったことがないということは、人と関わることで得られる成長をしていないということだ。



小学校高学年にもなると、持ち物も見るものも大人っぽいものを好み始める。


しかし私は小さい頃の延長で、テレビは子供向けのアニメしか興味がなく、ドラマやバラエティーは見なかったし、少女マンガも読んだことがなかった。

なので、流行とか芸能人とか全く知らず、話についていけない。どん引かれたりイラつかれたりした。



そして、空気が読めない。



場面緘黙(ばめんかんもく)の人はずっと人の顔色を伺っているので、他人の心の動きに敏感だ…という記述をよく見かけるけれど、私にはどうも当てはまっていなかった。



それどころか鈍感で、全く悪気なくデリケートな質問をしたり、無神経なことを言ってしまったりした。



他の人達の、人間関係の変化なんかもわからない。

「◯◯ちゃんムカつくから、美希ちゃんも無視してね」と言われてそうしていたら、いつの間にか仲直りしていて、ひどい態度をとっているのは自分だけ…という事もあった。



また、緘動(かんどう)といって、緘黙によって動きも抑制されてしまうことがある。

それであまり動かないせいか体力が異常になく、どんくさかった。


体育で何か試合をすれば私のせいで負ける。

鬼ごっこなんかもすぐ捕まるので、捕まっても鬼にならないみそっかすにされた。



そうした事が重なるうちに、次第に疎まれるようになり、『友達』という言葉を免罪符に、いいように利用されたり、ストレス発散の捌け口にされるだけになった。



そして、完全に嫌われるか飽きられて、独りになる。小・中とそんな感じだったので、コミュ力なんて身につかなかった。



いや、普通はもっと学ぶのかもしれない。

単に私がバカだったのかも…。



それでも高校に入学した時は、これを機に変わろうと決意して、同じように1人でいた子に、自分から話しかけたことがある。



ところが、相手もおとなしい子で、そうなると全く話が続かず…話したのはその一度きり。

私の挑戦は失敗に終わった。



環境が変わって中学の時よりは言葉が出やすくなったものの、周りより幼いというコンプレックスはさらに強くなり、積極的に関わることなど出来なかった。




運良く高卒で就職できて、揉まれに揉まれて最低限の会話はできるようになり、今に至るわけだけど…コミュニケーションがよくわからないことに変わりはないのだった。






隣の席で話していた女の子達が、立ち上がって帰っていく。

静かになって、少しほっとした。



なんか嫌なこと思い出しちゃったな。

気分を切り替えるように、少し薄くなったアイスカフェラテをすすった。



彼女達のように話せたら…仕事ももっとまともに出来るだろうし、友達も作れるし、恋愛だって出来るんだろうな…。



人よりいいものを求めてるわけじゃない。

ただ人並みの幸せが欲しかった。

欲しいものに手を伸ばせる力が欲しかった。



なんでこんな体質に生まれついたんだろう…。

何度したかわからない問いに深くため息をついた。



…ん?

ふと、目を落としたスマホの画面に妙なものが映っていた。


私がしていたパズルゲームには、10秒ほどの広告映像を見るとアイテムがもらえるというシステムがあった。



1週間で10㎏痩せるダイエットサプリとか、シミが消える美容クリームとか、 怪しいものがほとんどで、全く信じちゃいない。


しかし、そこに映っていたのは…。



『ついに開発!緘黙状態緩和にコトバデール!』



へ?緘黙の…薬?

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