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コトバデール  作者: 美月
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私の日常

駅前にある全国チェーンのカフェ。

そこで仕事終わりにたまにお茶をするのが、私…長野美希のちょっとした贅沢であり、楽しみだ。



レジで若干どもりながら注文し、受け取ったドリンクを手に2階の1人用の席に座る。今日はアイスカフェラテだ。ミルクとガムシロップを入れて、ストローで一口すすると、ほのかな甘さとコーヒーの香りが疲れた体に染み渡った。


あ~おいし~…。


スマホを取り出し、お気に入りのゲームアプリを立ち上げる。

何よりの至福の時間。

無心に指を動かしていると、ふと近くの席の会話が耳に届いた。



「そこで、そういう言葉が出るってマジありえなくない?」

「え、キモっ!なにそれ!?」

「お前と友達でもなんでもねーっつーの」

「確かに(笑)迷惑でしかないw」



若い女の子が、同僚の愚痴を話しているようだ。

一般的には中身のない会話なのかもしれないが、私にはものすごくハイレベルに思える。



まず話題に上っている人よりも、自分らのほうが立場が上だと思っている。

そして、その人をこき下ろせるくらい自分らがまともだという自信がある。


一体どこで培ったのか本気で知りたい。



頭の中で話を組み立ててわかりやすく相手に伝え、相手は的確なリアクションをし、それにまた即座に絶妙な返しをする。


その淀みないキャッチボールの繰り返しで、さらに会話が盛り上がる。

そんな超人的スキルも、私にはひとっつもない。



なぜなら…私は【場面緘黙症】だったからだ。



場面緘黙とは、家など安心できる場所では普通に話せるのに、学校など特定の場所に行くと、異常な不安や緊張で話せなくなってしまう状態のことで、それが長期間続くと【場面緘黙症】と診断される。


人見知りとは違う。

本当に声が出ず、話したくても話せないのだ。



私も保育園から始まって、小学5年生くらいまで学校で一言も話せなかった。そう一言も。


みんな普通に喋ってるけど、喋るってどうやってやるのかわからなかった。

頭の中では、たぶんみんなと同じように言葉が出ている。

でも、それを口から出すという機能が壊れているようだった。



喋ろうと思っても、視線を感じるとそれだけで緊張がMAXになり、体が固まって、声が出せない。


会話をキャッチボールと例えるなら、どうしても投げ返す勇気が出ない…という感じだ。いや、投げ方がわからないという方が正しいか。



小5の時に何かの拍子で友達の前で声が出て、それがきっかけで全く話せない状態は脱した。


しかし、その子達以外には話せなかったし、他の人にその子達と話しているのを聞かれるのも抵抗があった。


自分から話しかけることもできない。



普通は保育園(幼稚園)・小学校と集団生活を経験するうちに、コミュニケーションの取り方を学んだり、接する友達の影響で人格が形成されて行ったりするのだろう。


でも、それまで話せず人との関わりがなかった私には、その機会がなかった。


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