Pre-Z-9:君がための青い目の剣士(8)
君がための青い目の剣士
☆前回までの“ハコニワ”☆
大雨が降りました。
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新聞通りなら、今日が予定日。
数日前から別の宿にいる未来の殺人鬼は元々赤い瞳で、わざわざ魔法をかける必要はなかった。
計算通りであるなら、かんなに遅らせていた月が今日、星の影に埋まる。
準備は完璧。あとは俺次第──。
足を外にのぞかして窓の縁に座った。
心地よい風が足を霞む。
時刻は午後六時。
町を照くオレンジは彼方の西へと過ぎ、静かなる藍が深々と滞る。
俺は昨日鍛冶屋から拝借した剣の刃に触れた。
ひんやりとして気持ちがいい。
ああ、なんか今日は暑いな、なんて思っているとかんなが部屋に入ってきた。
「かむいさん、月の最終調整終わりました。そろそろ、行きますか?」
俺は窓から降りて、剣を収めた。
「よし、行こう」
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薄暗い路地の、大通りに面している端っこ。
「ここなら例の男の宿を見張れる。──いいか?悲鳴が聞こえても直ぐには出るなよ。少しだけ泳がせるんだ」
「どうしてですか?」
「新聞では37人が死んだことになっている。まあ、そこまで待てとは言わないが、ある程度の数が死なないと辻褄が合わないだろ?」
「そんな!じゃあ人が死んでいくのを黙って見過ごせって言うんですか!?」
信じられない、という顔をするかんな。
「そうだ。何か問題でもあるか?」
俺がそう言ったとき、かんなは眉と口を歪ませ、目を見開いた。
そしてすぐにうつむいて、こう呟いた。
「──まだ、許せていないんですね」
俺は聞こえなかったことにして空を見た。
もうすでに蒼白い月が昇っていた。
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午後九時。
あまりに退屈だから居眠りをしていた俺達を起こしたのは、甲高い女の悲鳴だった。
例の宿からだ。宿の娘が殺られたのだろう。
「かむいさん、あれ!」
かんなが空を指差す。
月が欠け始めていた。
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……3,4,5,6………
悲鳴の数を数えて、時を計らう。
かんなは耳を押さえ、すっかり塞ぎこんでしまった。
俺はかんなの頭をポンと叩き、囁いた。
「そろそろ行く。魔法附加をかけてくれ」
かんなはこくっとうなずき、俺が教えた通り手際よく魔法を発動させる。
かけてもらったのは筋力上昇、速度上昇の魔法。
「流石だな。……行ってくる。」
剣を抜いて進もうとしたその時──「待ってください!」
「あの、無茶はしないで下さい。私、かむいさんが殺られたら……殺られ、ちゃったら──」
涙で顔がぐちゃぐちゃだ。
「──ったく。何を言い出すかと思えば。──馬鹿だな。俺がやられるわけないだろ?なんたって俺は、かむいさんなんだからなっ!」
胸を張って堂々と。
かんなも安心してくれたのか、意味不明な一言を呟いた。
「……ふふっ。Lv.3ですね」
何のことだかわからなかったが、取り敢えず進もう。
俺はじゃあ、と言って赤めのとこまで突き進む。
月はもう、半分までかけていた。
こんにちは。ななるです。
イキナリのかむいさん視点でした!少し大人びていすぎ、みたいな感じもしますが、彼は結構不安定なのですぐに子供っぽくなりますよ。多分。
来週からはついに戦闘シーンに突入です!
次回があれば、またお会いしましょう!




