表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の箱庭  作者: ななる
8/20

Pre-Z-8:君がための青い目の剣士(7)



君がための青い目の剣士


(7)



☆前回までの“ハコニワ”☆



かむいさんの魔法レッスンを受けてから、一人でオムライスが作れるようになりました。

   

─────────────


あと10日で犯行予定の日。


その日は雨だったので特訓は簡単なものだけで終わり、すぐに解放されました。


もう私の魔法もほぼ完成しているのですが、それでもかむいさんは手を緩めてくれません。確かに、今日はいつもより簡単でしたが、それでも私はもうヘトヘトでした。


ふらふらしながら窓に寄りかかると、外を傘を差して歩いているかむいさんを見かけました。


「どこに行ってるのでしょうか……?」


私はこっそり後をつけていくことにしました。


右へ左へ……迷いなく進んでいくかむいさんは敢えて人気の無い道を選んでいるようで、気を抜いたら見失ってしまいそうです。多分、もう一人では帰れません。


「……て、あれ?」かむいさんがいないっ!


どうしようどうしよう……雨も気にせず走ってみると、「いた!」

危ない危ない……。


細い路地の奥の方で立ち止まっています。


こういうときは……。習いたての望遠魔法を思い出します。


魔法陣を明確に想起し、手の中で形作る。

型が出来たら魔力を流して──「出来た!」


ピントが少しずつあっていきます。


ふむ、どうやらかむいさんはただ立ち止まっているのではなく、立ち止まってさらに奥を覗いているようです。


私もかむいさんの視線をたどってさらに奥へとピントをあわせます。


「むむ……む!むむ‼」


喧嘩でしょうか。

雨が降っているのに二人の男性が剣を交えています。


一人はとても真剣な表情で余裕の無いように見えますが、もう一人は少し笑って──「あれ!?Aさん?」


黒い瞳に“巷の若者風”ファッション。よく見ると、その近くにAさんの変な形の杖も転がっています。間違いなくAさんです。


何か二人で話しているようですが、わかりません。……うーむ。


二人の戦いはさらに激しくなっていきます。


交わる鉄剣、重なる鼓動……見ているだけで息がつまってしまいそう。


ただ、Aさんざずっと微笑を崩さないからだんだんとムカムカしてきて、いつの間にかAさんじゃない方の知らない人を応援していました。


その人は見た感じだと20歳くらいで、私と同じ青い瞳をしていました。


傘を振り回してしまうほど、私の応援もヒートアップ。


「よし、いっ──ああ、負けないで下さ──」

「──お前、何してんだよ」

「ひゃうっ‼」


スコープ覗きに夢中になっていた私は、いつの間にかかむいさんが近づいて来ていたことに気がつきませんでした。


むすっとした不機嫌顔のかむいさん。


「あっええっと……散歩をしていたら、道に迷って、気がついたらここにきて……ええっと……」

「冗談は存在だけにしろっ‼」

「酷いですぅ……」


ほら帰るぞ、と言ってかむいさんは来た道を戻って行きます。


何だか後ろ姿が寂しそう。


────────────


雨が少し弱まり、傘に落ちる雨がポツポツと軽い音を立てます。


少しだけ開けた道に出たので、私はかむいさんのとなりに並びました。


「──何も、聞かないんだな」


かむいさんがポツリと言いました。

顔は傘に隠れて見えません。


「まあ、いいけど。──いいか?ここからは俺の独り言だ。返事とか、するなよ?」


思わず、「はいっ‼」といってしまいそうになった口を片手で必死に押さえます。


「──俺、最初この町に来てあの場所でAを見てからさ、毎日のように行ってたんだ。そしたらいっつもAとアイツがああしてる。初めて見たときは最初、勝負だと思ってさ、無意識に俺もお前みたいにAを応援してた」


いえ、私が応援していたのはもう一人の方です。


「なかなか決着がつかないと思いながらずっと見てたらさ、気づいたんだ。あれは勝負なんかじゃない。剣術を教えてるんだ。俺もお前も知らないアイツに、Aは剣術を教えてたんだ。それがわかってからさ、ずっとモヤモヤしてさ……正直、初日の時、魔法が失敗したことよりも気になっていた」


そういえば最初に私が宿を取りに行ってから再開したとき、かむいさんはとても動揺していました。


私は「何故、一ヶ月前の服装で」という疑問が大きかったのですが、かむいさんは「何故、教えているのか」の方が大きかったようです。


剣術はかむいさんもAさんに習っています。

いつもかむいさんは「なかなか上達しないのはAのせいだ」などと文句を言いながらも、なんだかんだ楽しそうでした。


「アイツは俺よりもずっとセンスがあるんだろうな、毎日どんどん強くなってる……。Aがさ、楽しそうなんだ。俺に教えているときよりも……楽しそうなんだよっ‼」


かむいさんは立ち止まって声を荒らげました。

傘の柄を強く握りしめています。

顔を覗くと今にも涙が溢れだしそう。


「何でっ……何で‼」


零れる大粒を片手で拭い、足りなくなって傘をもっている方でも拭いだしました。


カタンっ……。


私は傘を手放しました。


「──大丈夫、大丈夫ですから。きっと二人で帰りましょう?これが終わったら、ちゃんと二人で帰りましょう」


どうか言葉に出来なかった想いも一緒に伝わりますように。


私はかむいさんを抱きしめて、一緒に大粒の雨を溢すことしか出来ませんでした。


こんにちは。ななるです。


書くのも読むのもシリアスよりコメディの方が好きです。というか、真っ直ぐなシリアスが書けない!

どうか少しでも最後のシーンがまともになるよう頑張りました。いかがだったでしょうか?


さて、次回からはついに犯行予定日に入ります。


次回があれば、またお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ