Pre-Z-17:レマイア・オラトリオ④
レマイア・オラトリオ
☆前回までのハコニワ☆
かんな「そういえばAさんにそそのかされたって言ってましたけど、『お前が崇められてる祭りがあるから行ってこい』とか言われて浮足立ってレマイアに来たんですか?」
かむい「……そうだけど?」
かんな「い、いえ。なんでも……ふふっ」
かむい「おい、笑ってんじゃねーぞ」
総えっへん回数……一回(未遂)
最大Lv. ……3
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「よし、まずはやることが決まったな」
コフー、コフーと人ならざる呼吸でかむいさんが湯気を立てながらそう言いました。
「まずはあの忌々しいクソデカクラッカーどもを消し炭に……」
パチンとかむいさんが指を鳴らすと遠くの方でドカンと何かが爆発した。
同時に聞こえるたくさんの悲鳴。
「かむいさん、落ち着いて下さい!今絶対、民間人も巻き添え食らってましたよ!?」
「知るか!銃持ってる奴は皆同じだあっ」
ドウドウと宥めるとフシュー、フシューと少し人に戻った気がします。
外は突然の爆発に騒然となりましたが、すこしするとまた戦火が飛びあうようになりました。
かむいさんははあ、と短くため息をつくと、またその場にしゃがんで地面に手をつきました。
白い紋章がかむいさんの手を中心に広がっていきます。
これは確か、サーチ魔法の一種のはず。一体何を探しているのでしょうか。
「……よし」
立ち上がってパンパンと手をはたいて土ぼこりを落とすとかむいさんはまたパチンと指を鳴らしました。
爆裂。
いくつ火柱が上がったのでしょう。その衝撃は大きく地面が揺れるほど。
「あの、かむいさん……?」
「獄官側の武器はすべて無効化した。これで一旦は住民側が有利になるだろうな。まあ、剣とかそういうのはそのまんまだけどな。けど一度は退却するだろ?」
がれきの壁の方を向いてかむいさんがそう言います。
私は何と答えていいのかわからず、取り敢えず「おそらく……」と声を絞りました。
「退却先はきっと監獄だ。監獄に一気に集まったやつらを襲撃し、無力化。その後、頭をとらえて撃つ。そうすれば後は街の住人が好きにするさ」
頭、おそらく現監獄長グリーチャー・プリズンの事でしょう。
一対多数でも、この前の“血塗り月”ような人ならざる者でもない限り、かむいさんが手こずることはないので、作戦自体に何の問題もないのですが……かむいさんが人助けを進んでするなんて。
「おい、勝手に勘違いするな。これは決してレマイア住民のために動くわけじゃないぞ。これはあれだ。ここで神様らしくパパっと人間が悩んでいるちっぽけな問題を俺が解決することで、さらに信仰心をだなあ……」
「わかってますよ……ふふっ」
「おい、笑ってんじゃねーぞ」
だって、耳をぴくぴくさせながらとってつけたかのように話すかむいさんが面白いんですもの。
この少しの間に戦場の空気は一変したようで、先ほどまで劣勢だった住民側が、「攻めるぞォオ!!」と吠え叫んでいます。
「さあ、俺たちも行くぞ」
「はい──あれ?」
ガタン、と何かが崩れるような音。
いいえ、崩れた瓦礫が一斉に積みあがる音です。
周りのすべての瓦礫が一点に集まってゆきます。
それはだんだんと人の形となってゆき──
「ゴオォォォオオオオオっっ!!」
巨大な石人形となりました。
「かむいさん、あれは一体──」
「……ゴーレムだ。しかもエクシティマ・ゴーレム。失われたはずの古代魔法……」