Pre-Z-16:レマイア・オラトリオ③
レマイア・オラトリオ
☆前回までのハコニワ☆
かむい「そしてまた年を明け……」
かんな「ええ。そうですね。……はい、もうしりません」
かむい「あ、あー……なんとかレマイアに入れたかんなだったが、まさかレマイアでは戦争が起こっていた!混乱する中、かむいと合流。さあ、どうなる……!?……はい、続き始まりまーす」
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がれきの壁に身を潜め、かむいさんが外の様子を伺います。
かむいさんは「ふう、」と胸をなでおろすと私の方を向いて腕を組みました。
「……で、お前は何でこんなところにいるんだ?」
がれきの外ではまだ銃の音や悲鳴などが轟いています。
私はその音にかき消されないよう、努めて大きな声で説明しました。
「Aさんが糸コンニャ──」
ドーン。
「──べたいって言うので、糸コンの聖地と呼ば──」
ドドーン。
「──マイアに私がお使いをす──」
バキューン。
「──になって、道を間違えてしまったので──」
ドルギュンギャーン。
「──たがないので、壁から──」
ボッシュボッシュズドドーン。
「──というわけです」
「なるほど、わからん」
かむいさんははあ、と浅くため息をつくと、私のおでこに手をあて、私の前髪を上げました。そしてそのまま自身のおでこを私のに接近させて――
「え!?な、なに!?なんなんですか!?」
「うるさい、じっとしてろ」
ぴと、と接触。
おそらく時間にして五秒も経ってなかったと思いますが、私にとってはもう何時間も経ったかのように感じました。かむいさんは私から離れると「……なるほどな。Aめ、また厄介ごとを押しつけやがって」と舌打ち。私は顔があつくて、その場でへちゃ、と座り込んでしまいました。
「大体わかった。俺も似たようなもんだ。Aにそそのかされてここに来たんだよ」
「そそのかされた?」
「ああ。今日このレマイアでとある祭りがあるっていってな」
お祭り……
そう言われて外の様子を見るも、それは祭りとは遠く離れた地獄絵図。
少し落ち着いてきたので、立ち上がってかむいさんに聞きました。
「でも、今のこのレマイアは……一体何が起こっているんですか?」
「見た通りだ。……戦争だ。いや、正確に言うなら、内線、あるいは紛争か。闘っているのは獄官とレマイアの住民。今日で四日目になるな」
もう四日も……
町だったものを見て、言葉を失います。
「きっかけは住民側の反逆。レマイアという町は少し特殊でな、でっかい監獄があるのは知ってるだろ?あの監獄が行政もすべて行っているんだよ。中でも監獄長を代々務めるプリズン家がほとんど実権を持ってて、この町でプリズン家と言えば神にも等しい存在だった」
神……全身水色のAさんが頭をよぎりました。
「そうして生まれたのは神とは程遠い悪魔、グリーチャー・プリズンだ。奴が監獄長になった途端、町の治安は悪化し、その上税金も今までの十倍に跳ね上がる。何か文句を言えば、近くの獄官にひっ捕らえられ、監獄送り。あとは奴隷のように働かされる。こんな毎日が何年も続き、町では獄官が我が物顔でふんぞり返り、住民たちは身を粉にして働く。……で、もう耐えられるか、ってこうなったってわけだ」
?
不思議に思ったのが顔に出ていたのでしょう、かむいさんは怪訝な顔で「なんだ?」と聞きました。
「いえ、その……なんで住民さんたちは今更になって戦おうとしたのかなって、不思議に思って。何かきっかけとかなかったんですか?」
かむいさんの説明の最期の方がやけに雑だな、と思ったのですが、そういうときっとすねられてしまうのできゅっと口を結びました。私、えらいです。
かむいさんは私の質問に何か迷っていたようでしたが、やがて何かをあきらめたように、頭を掻きながら答えてくれました。
「まあ、どうせ後でわかる事だからな。かんな、お前、この町のとある信仰について知ってるか?」
「ええと、何かの神様を信じてる、っていうくらいですが……」
「そうだ。それでこの町では100年に一度、その神様を祭る神事が一週間にわたって行われる。それがこの四日前からなんだ」
四日前……たしかこの紛争が始まった日です。
「伝承ではその祭り中に神様もひょこっと町を訪れるとされ、きっと神様も味方に付いてくれるだろう、そう住民たちが願って始まったのが、この紛争だ」
なるほど、神様を味方に……
「で、その神様というのはいったい?」
かむいさんはよくぞ聞いてくれたとばかりに胸を張り、えっへんのポーズLx.3を繰り出しました。
そして、親指を立て自身の胸に向けて──
「それは他の誰でもなく、こ・の・おr──」
ドーーン。
「──だ!」
おっと、かむいさん、我神宣言を大砲に邪魔され見る見るうちに顔を赤らめてゆきます。
おいたわしい、おいたわしいですかむいさん。
ここは私が何かフォローをしなければ。
「……わー、そーなんですかー、すごーい」
「ぐふっ」
「あ、かむいさーんっ!」
かむいさんはその場に倒れて動かなくなりました。
しまった、フォロー失敗です。