修羅に活きる影
まず、本編に入る前に我が太賀黒現流れの谷より他忍で行われていた2つの出来事から説明する。
1つ目は、1573(天正元)年12月18日に七宝行者や果心居士と呼ばれている謎の幻術師が現れ、主君の子の妻に恋した武将と共に部下の破戒坊を遣い様々な女心を操っていた。
しかし、ある多く傷を負った忍の働きで事件は涙がありながらも終止符を討った。
2つ目は、1614(慶長19)年4月29日の1日から起こったある城内での2人の子の跡目争いがきっかけで双忍の血が流され結は、代々の家に以後の繁栄を齎す光となりし子と長きに亘る乱戦の後に決まった。
2つの出来事は有名な2人の忍の人生と大きく関わる語であった。
そして、また、ここに、1人の忍の人生と大きく関わるであろう語がある。
1595(文禄4)年8月21日、犬猿たる双忍の争いが続く中、影に隠れてしまっていた太賀の里にも外の情報が送られていた。
主忍がまだ10という幼き歳の頃であった、乱戦の叫びと共に産まれ育った。
名は、市加 戲夫丞
明け方から天が曇て小雨が降る。
太賀組の首目である宗勝の従甥にあたる雨好きな市加にとっては幸運なのだが稀にしか降らない里の民にとっては毎乱戦の日は雷雨と思いがあったので多少の不安な所もある。
太賀邸宅から森へ入り少し離れた草木生える広野で雨粒を敵と見立てながら草木の倒れ具合が斬り範囲としながら高度な剣術を励んでいた。
修行を見ていた師匠の撃長 唾陰は黒滝の池衆の武隊長を代々務めている護衛柱の中の1族だ。
少し聾だが瞼を閉じ集中し己を中心に数距離の所に幻壁を隔て構え待つそして、壁内に入ってきた敵を瞬殺する技『聡術』を市加に伝授している。
もう1つ、名にある唾を活かした飛ばし技『吼箭』は伝授するつもりはない。
画して日暮れ前まで撃長は傘を差しながら指導し市加は濡れながら難度も繰り返し訓練していた。
そこへ急足が水溜を烈しく駆けて来る人影が見えた、里娘のお舞だった。
着く間際ふらつき両膝を地に浸け青白い顔を両手で隠し泣きながら言った。
里が・・・・・・家が・・・・・・皆が・・・・・・ と
森の方を見るとさっきまで訓練に集中していた所為、聞こえなかった人々の悲鳴や里空が闇になっているのに気がついた。
訓練をやめ即座に戻った。
森中には逃げ遅れた痛々しい遺体が彼方此方に横たわっていた。
森を抜けるともう地獄絵図と化し民は火傷ではなく刺傷で殺されていた。
すると、謎の黒装束の刺客が何人か迫って来たが撃長が反撃し邸宅へ向かった、他の家と同様に炎が廻っていたが中にいた人々は何とか逃げおうせた。
しかし火中で宗勝は残り、謎の刺客の1人と闘っているという。
2人は加勢する為、入ったが、燃樹を堺に闘っていた。
宗勝が老していた事もあり刺客が凄腕という事もあり苦戦していた。
首目の体は一夜に起きた幾千の刃から里人を守る為、諸に受け避ける動きが容易ではなくなっていた。
撃長は見付けるやいなや叫び続けた。
宗勝様ーーーーーー!!!宗勝様------!!!!!!と
首目は胸に多数の矢痕があり血だらけで息苦しく燃えていない木柱に寄り掛かり今にも倒れそうになりながらもこちらを視て返した。
来るな!!!・・・ワシは駄目だ、もう・・・この・・・里も・・・滅す、・・・撃長・・・戲夫丞を・・・守れ・・・頼む・・・と
伝え終わりに残力を振るい長棒が入った袋を撃長に投げ渡した。
戲夫丞は泣きながら走り出し撃長は背中で見送り袋を受け取った。
首目の太賀宗勝は豪炎の中、1人、すまぬと小声を言って消えた。
振り向かず門まで走り戲夫丞が泣き肩から崩れるのを撃長が支えそのまま里を出た。
敵に知られぬ様に森に入り、長棒の袋を開けた。
中には太賀宗勝が若き頃に、やんちゃな忍として民に迷惑をかけていた時に雨の中里を抜け出しある寺横を歩いていた際に兄弟鍛師に会い貰った名刀であった。
名を、荘菅
と言う。
逃げたにも関わらず敵が追って来て囲まれそうになっていた。
暗草の中、撃長は戲夫丞に刀を渡し逃がそうと飛び出した。
里の意思を頼みます。と言う言葉を残し暗闇の中に入って行った。
すると謎の刺客と思われる幾つもの死声が聞こえて来た。
戲夫丞は涙を怺え何も言わず逃げた。
撃長の叫び声が聞こえぬ距離まで。
それから約10年後期ある村で惨殺があった。
その村の名は虫兪王と言う。
昔、近海で大量の食用虫が採れよく市場に売られていた事からこの名が付いた。
裏で麻薬を育てていたという闇では名の知れた悪代官が暮らしている。
多少の正義の民も家族の為に目を瞑り狂って逝った。
その1週間後。
戲夫丞は秋道を歩いて居た。
紅く彩られたイチョウが舞い落ちる鮮やかな昼道。
木々の枝影に輩達が隠れていた。
それに気付いて一度停まり周りを見渡したが向こうから仕掛けて来るまで斬らぬと決めていて聡術で間合いを取り髪に隠れた瞼を閉じて少しずつ歩く。
敵中の敏感な1人が行こうとした仲間を止めたが
待て!!!
何だ!?
お前には無理だ!!!
放せ!!!
と飛び出した。
すると、いつ抜いたかも分からぬ速さで斬った。
同胞が目の前で斬られたので4人ばかりが木影から飛び出して来た。
何奴?
と問うた。
1人が攻をしようとしたのを頭らしき者が止めた。
いきなり、申し訳ない。
我ら、玉海の忍であります。
名を翫 鄭丞と申します。
訳有って、視回りをしております。
と返した。
視回り?
何かあったのか!?
と再度問うた。
がしかし、事が大きい為言えず多少黙った。
此の世は最近物騒ですお気を付けて。
とだけ伝え。
まだ少し息のある同胞を抱え背負い立ち去った。
戲夫丞は落ち葉が舞う道を抜けて次の村に向かった。
小川を渡り岩場を登り幾つもの廃家を見歩いていた。
そして、出入り口が何処かも分からぬ廃村とも言えぬ地に足を踏み入れた。
朽ちて刻が経っている気配では無くかといって争いが起きた形跡も無い。
そこを突っ切る事にした戲夫丞は聴き耳を起てながら路の真中を歩いた。
人っ子1人居無い村、何かと不気味な家々。
村道を大分歩いていた時、数距離の右の家角の方から農人であろう3、4人が突然飛び出して来た。
その者達を追っていた巨人が2人に操っているのが6人。




