ペットボトルロケット
あしたの朝はお父さんがペットボトルロケットをとばしてくれる。
ペットボトルロケットは、ペットボトルで作ったロケットで、とても高くとぶらしい。
あしたはようちえんがおやすみで、お父さんのおしごともおやすみの日。
そういう日はいつも楽しみだったけど、あしたはもっと楽しみだった。
どんなロケットができるんだろう。どのくらい高くとぶんだろう。ねぼうしたくないから、よる8時にはねむってしまった。
ペットボトルロケットができあがった。
「らお、入ってごらん」
お父さんに言われて、ペットボトルロケットにのりこんだ。
ペットボトルロケットは、中に入って歩きまわれるくらい大きかった。とうめいなペットボトルだから、外もよく見える。
お父さんはロケットの外でにこにこしている。ペットボトルロケットがうまくできたから、うれしそうだ。お母さんもにこにこ手をふっている。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
お母さんに手をふりかえすと、ペットボトルロケットはとびはじめた。
らおはとてもどきどきしてきた。これからペットボトルロケットで、だいぼうけんがはじまるんだ。
ペットボトルロケットは、ぐんぐん高くとんでいって、でんしんばしらもすぐおいこした。
お父さんが下のほうで大きく手をふっている。口をあけてなにか言っているけど、らおはもう聞こえないくらい高くにいた。
らおはお父さんのうれしそうな顔に、元気に手をふりかえした。お父さんがもっとうれしそうにするのが見えた。
お父さんが見えなくなるくらい高くとんでいくと、鳥さんがぱたぱたとんでいた。くちばしの大きな鳥さんだ。青いつばさを広げると、らおよりも大きい。
「おはよう」
「おはよう」
らおはちゃんとあいさつをしたから、鳥さんとはすぐ友だちになれた。
「お空はどう? 気持ちいいでしょう」
鳥さんは楽しそうに言った。
すると、つよい風がふいて、ペットボトルロケットがゆれた。
まるでじしんみたいに大きくゆれるから、らおはしりもちをついた。
鳥さんは風がふいてくるほうにまわって、ペットボトルロケットをまもってくれた。鳥さんの大きなつばさは、つよい風にもしっかりしていた。
「ありがとう」
「どういたしまして」
鳥さんはすまして言った。
富士山よりも高くなると、鳥さんとさようならをした。それより上には飛べないからって。
それからペットボトルロケットはくもの上までとんでいった。
くもの上では、てんしさんがこっちを見ていた。びっくりした目だ。てんしさんは、らおよりも小さくて、金色のかみがふわふわしていた。
らおはもっと上までとんでいって、てんしさんは白いつばさでついてくる。
「こんにちは」
「こんにちは。すごい高くまでとんでいるのね」
ちゃんとあいさつをしたから、てんしさんともすぐなかよしになれた。
てんしさんは、らおのようちえんのことをいろいろ聞いてきた。
「いいな。わたしも行ってみたいな」
てんしさんはうらやましそうだった。
てんしさんといっしょに行けたら、ようちえんがもっと楽しいのにな。
らおもそんなふうに思った。
それからペットボトルロケットは空の上までとんでいった。
「宇宙まではとんでいけないわ」
てんしさんとはそこでさよならをした。
「帰りにまた来てね」
てんしさんはえがおで言った。
宇宙はよるだったけど、お星さまがかがやいていたから、こわくなかった。
らおはお星さまをちかくで見たのははじめてだった。とおくで見るより、もっときらきらできれいだった。
「こんばんは」
「こんばんは」
お星さまにもちゃんとあいさつをしたから、お星さまはもっときらきらしてくれた。
「お星さまは、いつもらおくんを見ていたよ」
お星さまは空の上から、ずっとらおのことをみまもってくれていたらしい。
「らおくんはお父さんとお母さんが、すごい好きなんだね」
お星さまはらおのことをよくしっていた。お星さまはとてもやさしくわらっていた。
お星さまのかおを見ていたら、心がぽかぽかして、やわらかくなってきた。それで、らおはうとうとねむたくなった。
「おやすみ、らおくん」
「おやすみなさい」
らおはお星さまにおやすみなさいをした。それからすぐ、ペットボトルロケットの中でねむってしまった。
「らお、川に行くぞ」
つぎの日の朝、らおはお父さんのこえで目がさめた。
らおは楽しいゆめを思いだしてふわふわしたきもちになった。
それからお父さんとお母さんとらおで川に行った。ペットボトルロケットはふつうのペットボトルの大きさだった。
だけどやっぱり、らおはペットボトルロケットが楽しみだった。
ひゅー。
ペットボトルロケットは家のやねより高くとんだ。
らおは空を高く見上げた。
そこに、ゆめの中で会ったのとそっくりな鳥さんがとんできた。
青くて大きなはねで、ペットボトルロケットのまわりをぐるりととんだ。そしてらおのほうをちらりと見ると、そのままどこかにとんでいってしまった。
らおがおっこちてきたペットボトルロケットをひろいに行くと、ペットボトルロケットの中には、きらきらひかる白いはねが入っていた。
らおは空を高く見上げた。
お読みいただきありがとうございました。
ずいぶん前に、私が一番最初に書いた童話です。
子供向けって小さくなればなるほどむずかしいなと思います。
心に残るような作品ではなかったかと思いますが、祖父に唯一読んでもらえたお話なので、投稿させていただきました。