~第一章~ 第5話 僕はあの美少女エルフが気に食わない
僕たちは宴会場に入り、とりあえず空いている席に座ることにした。割と広いここも赤い絨毯が敷き詰められている。
僕はウエイトレスに差し出された、水の入ったグラスに口を手に取りながら言った。
「傭兵っつっても具体的には何をするんだ?」
モノによっては今すぐこの場所から逃げ出さなければいけなくなる。
「依頼主のご意向を実行するだけだぜ。傭兵というんだから基本は戦闘系の依頼だけど、たまに違うのもあるな。もちろんどの依頼をこなすかは自分たちで決められるから、各兵のレベルにあったものに挑戦できるんだ。成功したら報酬ももらえるってもんだ。ちなみにやっぱり難易度高い方が報酬も高いぞ」
よくあるやつだ。二次元マニアの僕としては、そういう仕様はよく知っている。ただし役に立つとは言っていない。
まぁとりあえず簡単なのに挑戦してみるか。
「その依頼ってどこで受けるんだ?」
俺の質問に手を振りながら、
「ちょっと待て、二人で行く気か?最低でも三人は必要だぜ?」
と慌てて言った。
「なんだ?仲間の一人や二人もいないのか?使えないやつだ」
呆れたように言うと、掴みかかってきた。
「使えないやつとは何だ!俺は戦闘に役に立つタイプなんだ。お前こそ俺が誘ってやらなければ野垂れ死にしてたんじゃないのか?」
言われてみたらそうだ。流石に野垂れ死にはしていないと信じたいが。
「一応感謝しとくか」
「一応とは何だ、一応とは!」
非常にうるさい奴だ。やっぱ僕こいつ嫌い。
「服を引っ張るなよ、ファーク。伸びちゃうだろ。と、とにかく新しい仲間を探せばいいんだな。任せとけ、僕の素晴らしきカリスマ性で100人は連れてきてやるぞ」
「100人もいないんだが。まぁそういうことだぜ。さぁ、俺は先に食事しとくからよろしく!」
「やっぱこいつ使えねぇ」
ボソッといった声が聞こえてしまい、また掴み掛ってきた。これ以上こいつの暴力には付き合っていられないので、さっさと僕は向こうへ新しい仲間を探しに行った。
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や、ヤバい。やばいぞ。100人とかカリスマ性とかカッコつけていた割には、ファークが食事をとっくに終わらせた後になっても一人も仲間になってくれないのですが。
というか新人が全くいないのですが。皆誰か仲間がいるんだよな。
どうも誰かさんの話によるとさっきファークも言っていた通り、ナイツ魔道帝国という悪魔率いる国とこのブリーマン民主王国が戦争中らしい。そのため今は傭兵も危なっかしいので、新人が全然集まらないそうなのだ。
そう。これは僕のカリスマ性が無いのではない。社会が悪いのだ・・・そうだよな?僕はそう信じるぞ!
仕方ない、大声を上げればきっと誰か・・・というか異世界に来てから、大声出してばっかりな気がするんですが。
「誰かぁ~!僕のパーティーに加わりたい方はおりませんかぁ~!」
「それなら私が入ってあげようじゃないの」
何者かが即答する。その声の発生元は窓際だった。そちらを見ると、ひとりの少女が手を上げている。
見てくれはちょいつり目系の美人だ。声も綺麗だし。髪は金髪で、ロングヘア―だ。服は割と普通な感じだ。特に富裕層でも貧困層でもないらしい。
年も僕と同じくらい・・・いや、耳が長いのを見ると、どうもエルフなのだろう。という事はBBA決定だな。
僕は入ってくれるらしい少女のもとへと駆け寄った。
「この素晴らしく可愛く、そして賢く、何もかもができるこのカリスマ的存在であるエルフィーネ様が、あなたとともに戦ってあげるわ。感謝することね」
ダメだ、こいつも僕にとって苦手なタイプの一人だ。