~第一章~ 第3話 僕はなぜか異世界転生したようだ
先ほど何かの拍子で大声を出してしまったので、僕は周りの目を避けるように路地裏へと逃げた。
なんか汚くて嫌だなぁ・・・それに臭いし。まぁいいか。
さて、まずは現状を把握しようか。自殺して死んだはずの僕は、なぜか見知らぬ近世風の街で存在できている。
なぜ存在できているのか?
まず考えられることといえば、ここが死後の世界であるという事だろう。
最初に考える事が『死後の世界かも』というのもなんか「二次元作品の見過ぎです」感がある気もするけど。
まぁ一人で考え更けていても仕方ないので、とりあえず街行く人に聞いてみることにした。
という事で僕は路地裏から、メインストリート的な場所へ行った。2~5階建ての近世っぽい建物が立ち並んでいる。そこで誰か声をかけられそうな人がいないかと、辺りを見渡してみた。
おっ、あそこからお婆さんが歩いてきている。
ここが死後の世界なら、ここにいる人は大体死人ってことだろう。あんなよぼよぼの婆さんが、閻魔様とも神様とも思えない。
「すいません。貴女、死んでますか?」
すると、これまた掠れまくった声が返ってくる。
「急にどうしたんだい?死んでたらここにいるわけがないでしょう。頭、大丈夫かい?」
こんな糞ババアに頭を心配されるのは何かイラっと来る。お前こそボケてんじゃねえだろうな!
なぜか婆さんは呆れたような顔をして、どこかへ行ってしまった。
何か質問の仕方が悪かったのだろうか。生憎と僕はコミュ力が皆無なので、先ほどの会話の何がダメだったかも分からない。
仕方ない、ちょっと質問の仕方を変えてみよう。
そう思いながら僕は、そばを歩いていた別の人に声をかける。
「すいません。ちょっといいですか」
「あぁ⁉俺も忙しい身だから、どうでもいい話だったらぶん殴るぞ!」
おっと、適当に声を掛けたのがいけなかったようだ。
人相と言い、口調と言い、表情と言い、いろいろと恐ろしいおっさんだ。おまけにかなり図体がデカく、怖いおっさんを具現化した様な、立派なひげを蓄えている。ただしチビだが。
声をかけてしまった以上仕方ないので聞いてみた。
「ここって死後の世界っすか?」
「だからそういうつまらない話を言うなと言っただろ!そんなことあるわけないだろうが。ここは思いっきり現世じゃ!」
怒鳴り声と共に、僕は殴られる。さすが筋肉ムキムキなだけあって、相当痛かった。
全くいきなり殴り掛かかってくるなんて、理不尽にもほどがある。まぁ僕は諸事情により、日常的に理不尽に殴られていたから、もう慣れっ子だが。全くなれとは末恐ろしい。
今回も聞き方が悪かったのか、不機嫌そうに向こうに行ってしまった。
こんなことでどうする、佐々木健斗!これではここでの生活が思いやられるぞ!
まぁでもここが現世であるという収穫はあったから良しとしよう。
じゃあここは一体どこなのだろうか。もしかして僕は生き返ったのだろうか。だとしたらどうして。
というか、そもそもここどこなんだよ。
昔鉄オタだった時代、日本全国回った。けどこんなとこは一切見たことないし聞いたこともない。
何かよく見たらここ色々とおかしいんですが。
まず道路に走っている乗り物について。なんか竜というか、トカゲというか、蛇というか、馬…なのか?
とにかく見たこともない、しかも多種多様な動物に引っ張られている馬車的ななにかが走っている。
あとは大型の乗り物に関しては、屋根の部分に魔法陣が出現していて、多分それの力で動いている。
更にどう見ても銃刀法違反な、剣やら弓やら銃を担いで行く人たち。しかもそれが当たり前の光景なのか、周りの人は全く動揺していない。
しかも人といえば耳の長いエルフやら猫耳や犬耳の人までいる。そう言えばさっきのおっさんも、身長ちっさいくせに筋肉質だったよな・・・もしかしたらドワーフだったのかもしれない。
おまけに、空に小型の竜的な何かが飛行している。
あっ、これもしかしてただ生き返っただけじゃなくてさ・・・
「我々ニートの夢である異世界転生というやつが起こったんじゃね?」
それにしてもまた声に出してしまった。今回は大声じゃなかったため気付かれなかったから、別に良いけど。
ところで、二回目に考えることが異世界転生というのもなぁ。やっぱり僕は本格的な二次元中毒者なのだろうか・・・