リタイア3
「もしもし?」
「頼む‼︎助けてくれ‼︎」
電話の向こうからは、西校の首席の声が聞こえてくる。伏も音の漏れる旧式の端末に感謝しつつ、アレイにぴったりと顔を近づけると電話に耳を傾ける。
「いま俺らのところは2人しかいない…アリスを…うちの次席をSOUP本部の外に逃がしたいんだ‼︎」
「首席と次席だけ残ってんのか?それで、次席を逃す?お前はどうすんだよ。」
「俺は……2人を連れ戻す。」
「…はぁ、馬鹿か?」
東と西で首席の出来がえらい違いだ。いや、人としては西の方が正しいのかもしれないが、戦術としては間違いだろう。
「とりあえず分かった。その辺に隠れられる場所はあるか?そこで動かず待ってろ。」
アレイが「それでいいか?」と目で合図すると、伏も頷きグーっとやる。
「あと、その女…次席だけ残してどっか行くなよ?もしお前がいなければ、次席も裏切り者かなにかの可能性ありと判断して捨て置くからな。」
「…っわかった。」
電話を終えると、アレイはやれやれと首を振る。
「妙な正義感ばっか強い奴。」
「大事だよ。どれだけ薄くたって、歪んでたって、自分の中に正義を持っていないよりかはずっと…ね。」
伏とアレイは二台の地上用ドローンと共に、西校の首席と次席の回収に向かった。
電話をしていて、自分が情けなくなった。結局誰かに頼って、助けがなければ同級生1人守れない。
"女には頼れない"という至極くだらない、と自分でもよくわかるようなちっぽけなプライドのために、アレイとかいう奴の端末にかけた。
「馬鹿か?」
という発言にも、なにも言い返せない。
「来てくれるって?」
アリスは不安そうだ。
「あぁ、そのまま隠れて動くな、だそうだ。」
「そう…」
不特定多数に操られたドローン達は今なお攻撃を続け、そしてフィリップ達のことを探してもいるのだろう。
逃げかくれしている間に気づいた。
ある場所に隠れると、地図上から自分達"西の客人"が消える。その場所がどこなのか、その法則はわからない。
「どれくらいで来るのかしら?」
「さぁ…」
他人をこんなにも待ち望んだことはない。まして東の人間を、なんて考えたこともない。
不甲斐ない。リドとカルマの2人は戦いに行ったのに、俺には何も出来なかった。
「はぁ………」
ため息がまたひとつ、こぼれた。
「ねぇねぇレイくん……」
「うーん?」
「見つかんないよ……」
「うーん……」
アレイはさらに飛行ドローンを二体ハッキング。その上でドローンの性能がいかほどのものかについての取扱説明文をSOUP本部のサーバーから探していた。
伏はその間、どこかにいる"西の客人"の姿を探す。しかし一向に見つからないのだ。
「神隠しだよー…バラバラにいる1つ1つの点は見つけたけど、2つが一緒にいる点が見つかんなーい。」
アレイが一通り作業を終えて、伏と代わるも結果は同じで、一向に2人は見つからない。
どこにいる?
通話は危険だ。話し声がどうしたって聞こえてしまう。
どうする…
「ねぇねぇ、飛行ドローンで上から探せないかな?」
「それはもうゲーム参加者がやってるんと思う。さらにそれでもバレないような場所にいるん……そうか‼︎逆にそれで絞り込めばいいんだ‼︎」
アレイは薄型のボードを取り出すと、エアスクリーンを開き、別のかませサーバーから"SURVIV"を開く。そのまま隠れ場所を探し、その中からさらに"空から見えない"エリアを探す。
「ありそう?これこのまま"西の客人"がどこかを見ることは出来ないんだよね?」
「あぁ、これは思うにカメラやセンサーを使って位置特定をしている。隠れ場所はそれの目が届かない場所ってことだ。」
「そっかぁ……あ、意外に絞れた?」
「そうだな。この中のどれにいるのか。」
アレイは一か八かで手製のソフトを立ち上げると、そこに西校の首席達の特徴をうちこんでいく。年齢、性別、大まかな性格など。
それから"SURVIV"と繋ぐと、可能性は2箇所に絞られる。
うち1箇所はいまアレイ達がいる場所だ。
「てことはあいつらがいるのはここか?」
「結構頑張ったんだね‼︎外壁に近いところにいるじゃん。」
「外壁を突破できずに足止め食ってんのか?とりあえず行くか。」
「おう‼︎」
伏に感化された訳ではないが、この命賭けの馬鹿げたゲームが、アレイも段々と楽しくなってきていた。
あちらとこちらが繋がった。
こちらとそちらも繋がる。
さてはて姿くらます少年は何処へ…?




