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トラストルノ  作者: なさぎしょう
輪舞曲
92/296

リタイア3

「もしもし?」


「頼む‼︎助けてくれ‼︎」


電話の向こうからは、西校の首席の声が聞こえてくる。伏も音の漏れる旧式の端末に感謝しつつ、アレイにぴったりと顔を近づけると電話に耳を傾ける。


「いま俺らのところは2人しかいない…アリスを…うちの次席をSOUP本部の外に逃がしたいんだ‼︎」


「首席と次席だけ残ってんのか?それで、次席を逃す?お前はどうすんだよ。」


「俺は……2人を連れ戻す。」


「…はぁ、馬鹿か?」


東と西で首席の出来がえらい違いだ。いや、人としては西の方が正しいのかもしれないが、戦術としては間違いだろう。


「とりあえず分かった。その辺に隠れられる場所はあるか?そこで動かず待ってろ。」


アレイが「それでいいか?」と目で合図すると、伏も頷きグーっとやる。


「あと、その女…次席だけ残してどっか行くなよ?もしお前がいなければ、次席も裏切り者かなにかの可能性ありと判断して捨て置くからな。」


「…っわかった。」





電話を終えると、アレイはやれやれと首を振る。


「妙な正義感ばっか強い奴。」


「大事だよ。どれだけ薄くたって、歪んでたって、自分の中に正義を持っていないよりかはずっと…ね。」


伏とアレイは二台の地上用ドローンと共に、西校の首席と次席の回収に向かった。





電話をしていて、自分が情けなくなった。結局誰かに頼って、助けがなければ同級生1人守れない。

"女には頼れない"という至極くだらない、と自分でもよくわかるようなちっぽけなプライドのために、アレイとかいう奴の端末にかけた。

「馬鹿か?」

という発言にも、なにも言い返せない。


「来てくれるって?」


アリスは不安そうだ。


「あぁ、そのまま隠れて動くな、だそうだ。」


「そう…」


不特定多数に操られたドローン達は今なお攻撃を続け、そしてフィリップ達のことを探してもいるのだろう。

逃げかくれしている間に気づいた。

ある場所(ポイント)に隠れると、地図上から自分達"西の客人"が消える。その場所(ポイント)がどこなのか、その法則はわからない。


「どれくらいで来るのかしら?」


「さぁ…」


他人をこんなにも待ち望んだことはない。まして東の人間を、なんて考えたこともない。

不甲斐ない。リドとカルマの2人は戦いに行ったのに、俺には何も出来なかった。


「はぁ………」


ため息がまたひとつ、こぼれた。





「ねぇねぇレイくん……」


「うーん?」


「見つかんないよ……」


「うーん……」


アレイはさらに飛行ドローンを二体ハッキング。その上でドローンの性能がいかほどのものかについての取扱説明文をSOUP本部のサーバーから探していた。

伏はその間、どこかにいる"西の客人"の姿を探す。しかし一向に見つからないのだ。


「神隠しだよー…バラバラにいる1つ1つの点は見つけたけど、2つが一緒にいる点が見つかんなーい。」


アレイが一通り作業を終えて、伏と代わるも結果は同じで、一向に2人は見つからない。

どこにいる?

通話は危険だ。話し声がどうしたって聞こえてしまう。


どうする…


「ねぇねぇ、飛行ドローンで上から探せないかな?」


「それはもうゲーム参加者がやってるんと思う。さらにそれでもバレないような場所にいるん……そうか‼︎逆にそれで絞り込めばいいんだ‼︎」


アレイは薄型のボードを取り出すと、エアスクリーンを開き、別のかませ(・・・)サーバーから"SURVIV"を開く。そのまま隠れ場所(ハイドエリア)を探し、その中からさらに"空から見えない"エリアを探す。


「ありそう?これこのまま"西の客人"がどこかを見ることは出来ないんだよね?」


「あぁ、これは思うにカメラやセンサーを使って位置特定をしている。隠れ場所(ハイドエリア)はそれの目が届かない場所ってことだ。」


「そっかぁ……あ、意外に絞れた?」


「そうだな。この中のどれにいるのか。」


アレイは一か八かで手製のソフトを立ち上げると、そこに西校の首席達の特徴をうちこんでいく。年齢、性別、大まかな性格など。

それから"SURVIV"と繋ぐと、可能性は2箇所に絞られる。

うち1箇所はいまアレイ達がいる場所だ。


「てことはあいつらがいるのはここか?」


「結構頑張ったんだね‼︎外壁に近いところにいるじゃん。」


「外壁を突破できずに足止め食ってんのか?とりあえず行くか。」


「おう‼︎」


伏に感化された訳ではないが、この命賭けの馬鹿げたゲーム(サバイブ)が、アレイも段々と楽しくなってきていた。





あちらとこちらが繋がった。

こちらとそちらも繋がる。


さてはて姿くらます少年は何処(いずこ)へ…?


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